最終更新日:2024/07/05

相続放棄と自己破産

このページでは、相続放棄と自己破産の違いについてご説明いたします。

相続放棄と自己破産とでは、借金の支払い義務がなくなるという点では共通ですが、その性格上の相違点があります。

自己破産とは

自己破産とは、こちらは自己都合で支払うことのできなくなった借金を特別に免除してもらうことです。

自己破産は、自分の財産一切を返済に回す必要があり、手元に財産を残すことは出来ません。また、借金の支払い義務はなくなりますが、自己破産をしても税金の支払い義務は残ります。

さらに信用情報(いわゆるブラックリスト)に一定期間載ってしまいます。

自己破産のメリット

借金の免除

返済義務がなくなり、経済的な再スタートが可能です。

債権者からの取り立てが停止になる

申立て後、債権者からの取り立てが止まります。

自己破産のデメリット

信用情報への影響

自己破産をすると、信用情報機関に登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載ります。これにより、クレジットカードの発行やローンの利用が難しくなります

財産を処分しなければならない

生活に必要な最低限の財産を除き、持っている財産を手放す必要があります。

職業制限

一部の職業では、破産手続中に就業が制限されることがあります。

税金は免除されない

自己破産をしても、税金の滞納分は免除されません。

税金は「非免責債権」として扱われるため、自己破産手続きが完了しても支払い義務が残ります。

官報への掲載

自己破産の事実が官報に掲載されるため、周囲に知られる可能性があります。

自己破産は何度でも出来るのか

自己破産は法律上、回数に制限はありませんので、何度でも行うことが可能です。

ただし、以下の点に注意が必要です。

期間制限

前回の免責決定から7年間は、新たに免責を受けることができません。

裁判所の審査

2回目以降の自己破産では、裁判所の審査が厳しくなります。

特に、借金の原因や反省の態度が重視されます。

手続きの複雑化

2回目以降の自己破産は、管財事件として扱われる可能性が高く、手続きが複雑になり、費用も増える事があります。

相続放棄とは

相続放棄とは、亡くなった人が持っていた一切の権利や義務の関係をなくすことができることです。

相続放棄をすることによって元々相続人ではなかったことにするのですから、当然の事ながら亡くなった方のプラスの財産も借金も、何も背負わないとするものになります。

相続放棄をしても自分の財産と亡くなった方の財産とは関係がありませんので、手元自己の財産を残すことが出来ます。

相続放棄をするためには、家庭裁判所に申述書を提出し、手続きを行う必要があります。

通常、相続開始を知ってから3ヶ月以内に手続きを完了する必要があります。

相続放棄をしてもブラックリストには載らない

また、たとえ亡くなった人が税金を滞納していたとしても、相続放棄をすれば税金の支払いはしなくてすみます。

さらに相続放棄をしたからといって信用情報(いわゆるブラックリスト)に載ることはありません。

「借金のほうが多いから相続放棄をしたいんだけど、相続放棄するとブラックリストに載っちゃうんでしょ?」と勘違いされている方も多く相談に来られます。

相続放棄のメリット

借金を相続しなくて済む

被相続人に借金がある場合、その負債を引き継がずに済みます。

相続争いを避けられる: 相続放棄をすると、相続人ではなくなるため、遺産分割を巡る争いに巻き込まれません。

デメリット

全ての遺産を放棄する

プラスの財産も含めて全ての遺産を手放すことになります。

撤回が難しい

一度相続放棄をすると、原則として撤回や取り消しができません。

他の相続人に影響を与える

他の相続人に借金が周って負担がかかる可能性があります。

相続放棄と自己破産の違い まとめ

どちらの手続きを選ぶかは、状況や目的によって異なります。

  自己破産 相続放棄
目的 借金を返済できない状態にある人が、裁判所に申し立てて借金を免除してもらう手続き。 亡くなった人(被相続人)の財産や借金を一切引き継がないための手続き。
メリット

借金の免除

自己破産をすると、裁判所の免責許可が下りた時点で、税金や社会保険料の滞納分を除くすべての借金が免除される。また、債権者からの取り立てが停止され、精神的な負担が軽減される。

生活が再建できる

借金の返済から解放されることで、生活費や貯金に回すお金が増え、生活を立て直す事ができる。

借金の相続回避

被相続人の借金を相続せずに済むため、経済的な負担を避けることができる。

相続トラブルの回避

相続放棄をすると、相続人ではなかったことになるため、相続に関する揉め事や手続きから解放される。

デメリット

財産の処分

高価な財産(不動産や車など)は処分され、債権者に分配される。

職業制限

一部の職業(弁護士、公認会計士など)には就けなくなる期間がある。

プラスの財産も放棄

相続放棄をすると、借金だけでなく、預貯金や不動産などのプラスの財産も相続できなくなる。

次順位相続人への影響

相続放棄をすると、次順位の相続人(兄弟姉妹など)に相続権が移り、彼らが借金を引き継ぐ可能性がある。

信用情報への影響 ブラックリストに登録され、一定期間クレジットカードやローンの利用が制限される。 なし
官報への掲載 あり なし
何回できるか

回数制限はなし。

ただし前回の免責決定から7年間は、新たに免責を受けることができない期間制限がある。

回数制限も期間制限も無し。
期限 特に期限はなく、借金が返済できない状態になったときに申請できる。 相続開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きを行う必要がある。
手続き 裁判所に破産申請を行い、財産を処分して債権者に分配した後、残った借金が免責される。 家庭裁判所に申述し、相続放棄が認められると、最初から相続人ではなかった事になる。
税金への影響 自己破産をすると、借金は免除されますが、税金や社会保険料の滞納分は免除されない。 相続放棄をすると、被相続人の借金や財産を一切引き継がないため、税金や社会保険料の滞納分も支払う必要がない。

相続放棄や自己破産の違いについてもっと詳しく知りたいという方、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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