最終更新日:2024/07/09

相続放棄と預貯金の引き出し

このページでは、相続放棄と預貯金の引き出しについてご説明いたします。

相続放棄する場合の原則として被相続人の相続財産を勝手に処分してはいけないというルールがあります。

その理由として、相続放棄とは、亡くなったひとのプラスの財産もマイナスの財産(借金や負債等)も、一切相続しないということだからです。

もし仮に相続放棄前に勝手に財産を処分が可能であるということになったら、プラス財産だけを自分の名義にしてから、借金をすべて放棄してしまえることになってしまい、あまりに不誠実なことになってしまいます。

ですから、相続放棄を選択したのであれば、亡くなったひとの預貯金などを勝手に引き出したりすることは出来ません。

相続放棄をしていながら、亡くなったひとの預貯金を引き出した場合、処分行為とみなされ相続放棄を認められない可能性が著しく高くなりますので十分に注意してください。

相続放棄が無効となってしまうリスクがある

相続放棄をした後に亡くなった人の預貯金を引き出せない理由は、法律上「法定単純承認」とみなされる可能性があるからです。

法定単純承認が成立すると、相続放棄が無効となり、相続人としての義務を負うことになります。

具体的には、相続放棄をした後に被相続人の預貯金を引き出すと、相続財産を処分したとみなされるため、相続放棄が無効となるリスクがあります。

これにより、相続人は被相続人の債務も含めて全ての財産を相続することになってしまいます。

もし相続放棄を考えている場合は、被相続人の預貯金に手をつけないように注意することが重要です。

処分していい相続財産とは

被相続人の財産を一切処分してはいけないのかというとそういう訳ではありません。処分してもいい財産も中にはあります。

資産価値がない財産であれば処分してもかまいません。

しかし、資産価値のないものはどういうものなのか、明確な基準がないため判断に困ってしまいます。

一般的に言われているひとつの基準は、「質屋さんが買い取ってくれないもの」と考えればよいです。つまり、嗜好性に左右されず、客観的に見て価値がないものと言えます。

相続放棄をした場合でも例外的に処分が認められる財産や行為

主に以下のようなものが該当します。

保存行為

相続財産の価値を維持するための行為です。例えば、壊れそうな建物の修繕や腐敗している物の処分などが含まれます。

短期賃貸借

相続財産の一部を短期間賃貸する行為です。

短期賃貸借が相続財産の処分と見なされない理由は、法律上「管理行為」として扱われるためです。

具体的には、短期賃貸借は相続財産の価値を維持し、保全するための行為とされており、相続財産の処分とは異なるとされています。

民法第602条では、短期賃貸借の期間が建物の場合は3年、土地の場合は5年と定められており、この範囲内であれば相続財産の管理行為として認められます。

これにより、相続放棄をした場合でも、短期賃貸借は相続財産の処分と見なされず、相続放棄が無効になるリスクを避けることができます。

葬儀費用の支出

社会通念上相当な範囲内での葬儀費用の支出は認められます。

葬儀が社会的に必要な儀式であり、その費用が不可避であるためです。

具体的には、葬儀費用は被相続人の死後に発生するものであり、相続財産の保存や管理のために必要な支出とみなされます。

また、葬儀費用は被相続人の社会的身分や状況に応じたものであり、相続人がその費用を負担することは合理的とされています。

そのため、葬儀費用の支出は相続財産の処分とは異なり、相続放棄が無効になるリスクを避けることができます。

経済的価値がない財産の形見分け

写真や手紙など、経済的価値がないものの形見分けは問題ありません。

以上の行為は、相続財産の処分とはみなされず、相続放棄が無効になるリスクを避けることができます。

ただし、具体的な状況によって判断が難しい場合もあるため、専門家に相談することをお勧めします。

相続放棄と預貯金の引き出しについて詳しく知りたいという方、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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