最終更新日:2024/04/06

お腹の子供(胎児)と遺産相続

このページでは、お腹の子供(胎児)と遺産相続についてご説明いたします。

お腹の子供(胎児)にも遺産は相続されるのでしょうか。まず、相続人となりえるには相続開始時点で、人として存在していなければなりません。

同時存在の原則

これを同時存在の原則といいます。

胎児は、母親のお腹の中にはいますが、まだ生まれてきていないので、法律上の人とは認められません。

したがって、胎児は相続人となることが出来ないが原則です。

しかし、例外的に相続や遺贈に関し、民法は胎児について「すでに生まれたものとみなす」としています。ですから、

胎児であっても遺産を相続することが出来ます。

 

胎児がいる場合の遺産相続の実務

仮に胎児を無視して出生前に遺産分割協議をしても、胎児が無事に生まれてきた場合、その遺産分割協議は無効となります。

また子供を代理して相続放棄をすることも出来ません。

しかし、不動産の名義変更については「亡何某妻何某胎児」として、出生前に法定相続分による相続登記をすることは可能です。

ただ、実際に遺産分割協議をしようにも、胎児が生れてみないと、誰が相続人であって、その相続分も確定しません。

例えば、他に子供がなく、お腹の子供が始めての夫婦がいたとしましょう。

不幸にも夫が交通事故で急死してしまった場合、子供が無事に生まれれば、相続人は妻と子供で、相続分は妻が2分の1で子供が2分の1です。

さらに子供が一人ではなく双子が生まれた場合は、相続分は妻が4分の2で子供が4分の1ずつになります。

一方、子供が死産だった場合、相続人は、妻と夫の親で、相続分は妻が3分の2で夫の親が3分の1です。

そして夫の親もすでに亡くなっていれば、相続人は妻と夫の兄弟姉妹で、相続分は妻が4分の3で夫の兄弟姉妹が4分の1というように変わり面倒なことになります。

お腹に子供がいる場合、早急に遺産分割をしなければならない特別な事情がなければ、胎児が生まれるのを待ってから遺産分割をするのが無難です。

法的な問題点とは

胎児の相続権に関する法的な問題には以下のような状況が考えられます。

遺言が存在する場合、胎児の権利はどのように保護されるのか。

遺言が存在する場合、胎児の相続権は特別な考慮を必要とします。

民法では、相続に関しては胎児を既に生まれたものとみなすため、胎児にも相続権があります。

遺言によって胎児に財産を遺贈することは可能ですが、胎児が生まれた後に生存していることが確認されなければ、その遺言は効力を持ちません。

具体的には、遺言で胎児に財産を相続させる場合、胎児を特定するためには、母親の情報を用いて記載する必要があります。

例えば、「Aは、Aが有する財産を妻Bが懐胎している胎児に相続させる」という形で遺言を記述します。

また、胎児が死産や流産の場合、相続権は発生せず、遺言による遺贈も無効となります。

このため、遺言者が亡くなった後に胎児が生まれ、生存が確認された場合にのみ、胎児は遺言に基づいて財産を相続することができます。

遺言による胎児への財産相続の保護は、胎児が生まれてからの生存が前提となるため、遺言作成時には専門家のアドバイスを受け、適切な文言と手続きを確認することが重要です。

胎児が生まれた後、他の相続人との間で財産分配がどのように行われるのか。

胎児が生まれた後、相続が発生すると、胎児は法定相続人として扱われます。

胎児が無事に生まれたことが確認されれば、相続権が発生し、他の相続人と同じように遺産分割に参加します。ただし、胎児自身が遺産分割協議に参加することはできないため、通常は親権者が法定代理人として胎児の代わりに遺産分割協議に参加します。

もし親権者が胎児と利益相反の立場にある場合、例えば親権者自身も相続人である場合、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

特別代理人は、胎児の利益を代表して遺産分割協議に参加し、胎児にとって最善の結果を追求します。

また、胎児が生まれる前に相続登記が行われることは一般的ではありません。

胎児が生まれた後に相続登記を行うことが可能ですが、もし胎児が死産だった場合は、相続はなかったことになるため、再度名義変更が必要になります。

相続放棄については、胎児が生まれた後に、親権者が法定代理人として相続放棄の申述を行うことができます。ただし、親権者と胎児の利益が相反する場合や、胎児と他の子の利益が相反する場合には、特別代理人の選任が必要です。

胎児の相続財産の管理方法

胎児の相続権が認められた場合、その財産の管理方法についても考慮する必要があります。

通常、胎児に代わって財産を管理する代理人が指名されます。

この代理人は、胎児の利益を最優先に考え、財産を適切に管理する責任を負います。

胎児が生まれた場合、その子どもは他の相続人と同じ立場になります。相続手続きは、胎児が生まれた後に行われ、代理人が話し合いをすることになります。未成年の場合、通常は親権者が法定代理人として行います。

胎児も人と認められる 胎児の推定生存

遺産相続において、お腹の子供(胎児)の権利は、多くの法域で認められています。

胎児が生まれて生きていることが確認されれば、相続人としての権利を有するとされています。

これは「胎児の推定生存」と呼ばれ、法的には生まれてくる子供の利益を守るためのものです。

胎児が相続権をもつ条件

胎児が相続人となるためには、以下の条件が必要です

相続開始時に胎児であること

相続が開始した時点で、すでに母体内にいることが条件です。

生後の生存

胎児が無事に生まれ、生命が確認されることが必要です。

これらの条件を満たすと、胎児は他の相続人と同等の権利を持ちます。

例えば、遺言によって財産の分配が決められていたとしても、胎児はその遺言に基づく相続の対象となります。

まとめ

胎児の相続権は、未来の子供の利益を守るために重要なものです。

しかし、その権利を実現するためには、法的な知識と適切な手続きが必要です。

また、胎児の相続権を考慮に入れた遺言の作成や、財産管理の計画を慎重に行うことが求められます。

相続は家族の未来に大きな影響を与えるため、胎児を含むすべての相続人の権利が適切に考慮されるよう、法的な支援を受けることが重要です。

お腹の子供(胎児)と遺産相続についてお困りという方、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

相続・遺言無料相談 お気軽にお問い合わせください! 03-6915-8210 受付: 平日10:00-18:00 無料相談の詳細はこちら
PAGE TOP