最終更新日:2024/03/08

経営承継円滑化法

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(通称:経営承継円滑化法)は、中小企業の事業承継を支援するために制定された法律です。この法律に基づく認定を受けることで、税制支援、金融支援、遺留分に関する特例などの支援が受けられます。

以下、経営承継円滑化法の主な特徴を詳しく説明します。

相続税の納税猶予

これを受け、平成21年度税制改正で「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を中心とする事業承継税制が創設されました。

後継者が自社株を相続する場合、一定割合の相続税が納税猶予されます。ただし、最終的な免除は後継者の死亡時点までかかることがあります。

親族以外の後継者も制度の対象となります。

制度事業承継税制の主な特長

1 自社株の相続税の一部が納税猶予に

自社株に関する相続税の一部が納税猶予されます。しかし、猶予期間が終了した後、後継者が亡くなるなどの条件を満たさない場合、免除はされません。つまり、猶予期間中に特定の条件が発生しない限り、納税が必要となります。

これにより、子供などの親族が後継者になる場合は、大幅に相続税を減額できます。※平成27年1月より親族以外の後継者の場合にも制度の対象になりました。

2 株の評価は相続時点での価格になる

子供などの後継者が死亡した場合の自社株式の評価は相続時点の時価で行われます。したがって、将来的に株価が下落した場合、相続税の負担を大幅に減らすことができます。ただし、猶予期間中に特定の条件が発生しない限り、納税が必要となることに注意してください。

3 後継者自身が亡くなるまで会社を継続させる必要がある

後継者は自身が亡くなるまで自社株式を保有し、会社の代表を続けなければなりません。納税猶予制度を申請した後、最初の5年間は従業員の人員を平均8割以上維持する必要があります。

これらの要件を満たさない場合、納税猶予は打ち切られ、後日多額の税金負担が発生する可能性があります。

制度の適用を受けるかどうかは、後継者になる方が慎重な検討をした上での申請が必要です。

遺留分に関する民法の特例

特定の条件を満たす後継者を持つ企業については、先代経営者の遺留分割権利者全員が合意し、必要な手続きを経ることで以下の3つの遺留分に関する民法の特例を受けることができます。

1 除外合意

先代経営者から後継者が贈与を受けた株式等について遺留分算定の基礎財産から除外する合意をすることができます。除外合意

この合意により、後継者は自社株式を集中して保有しても遺留分減殺請求を受けること無くなります。それにより株式の分散を防ぎ、安定した経営権を確保できます。

2 固定合意

先代経営者から後継者が贈与を受けた株式等の評価額をあらかじめ固定する合意をすることができます。固定合意

通常の制度では生前贈与した自社株式の評価は相続発生時の時価に基づいて行われます。しかしこの制度では生前贈与を受けた後継者が自身の頑張りにより会社の業績が上がる事によって遺産の総額が増加し、相続税や遺留分が増え、さらには遺産分割協議が困難になる可能性があります。

固定合意を結ぶことで、生前贈与した株式を合意時点の評価額に固定できます。ただし、株価が下落した場合には後継者に不利な合意となるため、慎重な検討が必要です。

3 付随合意

後継者が贈与を受けた株式等以外の財産や後継者ではない者が贈与を受けた財産について遺留分算定の基礎財産から除外する合意をすることができます。

後継者に贈与された株式等以外の財産、後継者以外の者が贈与された財産から遺留分算定の基礎財産から除外する合意が出来ます。この合意は手続きにおいて重要な役割を果たします。付随合意

遺留分算定の基礎財産が含まれない形で、後継者でない相続人への生前贈与等についての合意をオプションとすることで、生前贈与等でも後継者でない相続人からの遺留分減殺請求を防ぐことが可能となり、後継者と非後継者の間で贈与のバランスを保つことが出来ます。それにより推定相続人間での合意を得る助けとなります。

重要なポイント

(1)の除外合意と(2)の固定合意の双方または、いずれか一方の合意を必ずする必要があります。 これらの合意をした場合には、それと併せて(3)の付随合意をすることができます。

民法特例の手続き

後継者は合意が成立した日から1ヶ月以内に申請書を経済産業大臣に提出し、確認を得る事が出来ます。そしてその日から1ヶ月以内に家庭裁判所に許可を申し立てる必要があります。

家庭裁判所からの許可が下りると、合意は法的な効力を得る事が出来ます。

参考サイト

中小企業庁:経営円滑化法による支援

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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