最終更新日:2024/03/23

不動産の名義変更とは

相続登記は、故人から引き継がれた土地や建物の法的な所有権を移転する公的な手続きです。

不動産の相続登記を完了しなければ、相続した不動産に対する所有権を法的に主張する事ができなくなります。

これは、将来的にその不動産を売却したり、担保として使用したりする際に重要な問題となります。

今までは相続登記は任意であり、特定の期限内に行う必要はありませんでした。このため、多くの人々が誤解や不明瞭な理解に基づいて、登記を行わない選択をしてしまうことがありました。

例えば、登記にかかる費用を節約したい、手続きが煩雑である、または単に必要性を感じないために、相続登記を行わないという選択をする方もいます。

しかし、相続登記を行わないことには、いくつかの深刻なデメリットが存在します。

不動産の名義変更(相続登記)が必要な理由

法的所有権の確立

相続登記を行わないと、法律的にその不動産の所有者として認められません。これにより、相続した不動産を売却したり、担保として使用することができなくなります。

所有者不明な土地や家が減らせる

相続登記を怠ると、所有者が不明な土地が増え、土地の有効活用や公共事業に支障をきたす可能性があります。

遺産分割協議の進行

名義変更の前提である遺産分割を終えていない場合、相続財産は共有財産となり、共有者全員の合意がなければ不動産の売却ができません。

相続登記の義務化

2024年4月1日から、相続登記の義務化が施行されます。相続人は、所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

相続登記は、故人の意志を尊重し、遺族間のトラブルを防ぎ、不動産取引の透明性を保つためにも重要です。

適切な手続きを行うことで、相続人の権利を守り、不動産の有効活用を促進する事ができます。

登記をしないデメリット

不動産の名義変更をしないデメリットは、以下のような問題です

法的所有権の確立ができない

相続登記を行わないと、法的にその不動産の所有者として認められず、売却や担保としての利用ができなくなります。

相続人が増加して複雑になる

名義変更をせずに放置すると、相続人が増え、遺産分割が複雑になり、合意に至ることが困難になることがあります。

相続人が認知症になるリスク

相続登記を怠ると、共有者の一人が認知症になった場合、遺産分割協議や登記手続きが困難になります。

相続税や登録免許税の増加

時間が経過すると、相続税や登録免許税が高額になる可能性があります。

相続不動産の差押え

名義変更をしない不動産は、故人の債務による差押えの対象になるリスクがあります。

所有者不明土地の問題: 相続登記を行わないことで、所有者不明土地が増え、土地の有効活用や公共事業に支障をきたすことがあります。

過料の課税

2024年4月1日から相続登記の義務化が施行され、義務を怠った場合は過料が科される可能性があります。

これらのデメリットを避けるためにも、相続が発生した際は、適切な時期に不動産の名義変更を行うことが重要です。

ケース別 登記をしない理由

故人が遠くの不動産を所有していた場合、相続人がその存在を知らずに名義変更ができなかった事例

このような状況を放置すると、時間が経過するにつれて、相続権を持つ人々の数が増加し、遺産分割がまとまらない可能性が高まります。

さらに、最初は遺産分割について合意していたとしても、新たに現れた相続人が自身の相続分を要求することで、遺産分割が停滞する事があります。

これでは、相続人同士の合意をより困難にし、法的な紛争に発展するリスクを高める事になってしまいます。

相続登記を怠ることは、単に法的な手続きを省略すること以上の影響を及ぼします。

故人の財産に対する明確な権利関係を確立するためには、相続発生後速やかに名義変更を行うことが重要です。

これにより、相続人が増えた場合でも、遺産分割に関する合意がスムーズに進むようになります。

相続人が行方不明になってしまい、名義変更が出来なかったケース

相続のプロセスは複雑であり、相続人が見つからない場合にはさらに困難になります。

例えば、相続人が借金を抱えているなどの理由で行方不明になり、その結果、名義変更が行われずに相続が停滞するケースがあります。

相続人が何らかの事情で行方をくらますことは珍しくありません。相続人がいない場合、当然の事ながら遺産分割協議を進める事はできません。

しかし、こういった場合には家庭裁判所に申し立てを行い、「不在者財産管理人」を選任すれば解決への近道となります。

不在者財産管理人には、法律の専門家が任命されることが多く、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加し、遺産の分割を実施する事ができます。

この手続きにより、相続人が不在であっても、遺産の分割と名義変更が適切に行う事ができるのです。

権利証を紛失したため、登記が出来ないと思い込んでいたケース

不動産の登記に関する誤解の1つが、登記済証(権利証)を紛失したことで、登記手続きが出来なくなると考えてしまうケースです。

実際には、権利証がなくても、登記識別情報を用いて相続登記を行うことができます。

権利証は、不動産登記法の改正により現在は発行されていないため、紛失した場合の再発行はされませんが、それによって登記が出来なくなるわけではありません。

また、相続登記を行うと大きな相続税がかかるという誤解もあります。実際には相続税が課税されるのは全相続案件の約4%に過ぎません。

多くの場合、相続税は発生しないため、相続財産の名義変更をしない理由はありません。

相続税の課税が心配な場合でも、専門家に適切な手続きや節税対策を相談する事ができます。

したがって、権利証の紛失や相続税の心配を理由に、相続登記を避けることなく、名義変更を進めることをお勧めします。

登記をしなくても何の罰則も無いので、ずっと放置してしまったケース

昔は、名義変更をしなかったからといって罰則はありませんでした。

しかし2024年4月1日から、相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記を行わない場合、10万円以下の過料が科せられることになります。

現在すでに相続登記をせずに放置されている不動産も、この義務化の対象となりますので、早めの対応が必要です。

また、氏名や住所の変更登記も義務化され、変更があった日から2年以内に登記をしないと5万円以下の過料が科せられることになります。

これは2026年4月までに施行される予定です。

相続登記を放置してしまった場合は、法改正後も救済措置があります。

遺産分割協議がまとまらないなどの理由で3年以内に相続登記ができない場合には、法定相続分で一旦登記をするか、相続人申告登記(仮)を利用する方法があります。

これにより、期限内に相続登記ができない場合でも、適切な手続きを取ることが可能です。

適切な対応を行うことで、将来的な問題を避けることができます。

参考リンク: 法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

まとめ

所有権があいまいだと、不動産の価値を低下させ、売ったり貸したりする取引を困難にします。

また、相続人が増えるごとに、不動産の管理がより複雑になり、遺産分割が困難になる可能性があります。

さらに、相続登記を怠ると、故人の債務に関連する法的な問題に直面するリスクも高まります。

2024年4月1日からは、相続登記の義務化が施行され、相続人は不動産の所有権を取得してから3年以内に登記を完了させなければならなくなりました。

この変更は、所有者不明土地の問題を解決し、不動産取引の透明性を高めることを目的としています。

結論として、相続登記を行わない事は、法的なリスクや不動産の価値低下など、多くの問題を引き起こす可能性があるため、避けるべきです。

相続が発生した際には、適切な時期に相続登記を行い、不動産の法的な所有権を確立することが重要です。

→ 「不動産の名義変更(相続登記)の手続き」ページはこちらから

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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