戸籍収集 押さえておきたいポイント

最終更新日:2024/07/03

戸籍謄本の役割

戸籍謄本は、個人の出生から死亡までの家族関係の変遷を記録した公的な文書です。相続手続きにおいては、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、および相続人全員の現在の戸籍謄本が必要となります。

これにより、法定相続人の範囲を明確にし、相続人としての資格を有するかを確認することができます。

このページでは、相続人を確定させるために必要な戸籍謄本の種類、集め方、そしてその手続きの流れについて詳しく解説します。

相続人を確定させる

相続手続きにおいて、戸籍を集めて相続人を確定させることは非常に重要なプロセスです。

相続人の確定は、不動産の名義変更遺産分割協議相続税申告など、金融機関で「預貯金の解約・名義変更」を行う場合相続に関わる様々な手続きの基礎となります。

相続手続きのためには、まず誰が相続人になるのかを確定させなければなりません。

誰が相続人になるのかを確定させるためには、被相続人の生まれてから死亡するまでの全部の戸籍を集めて調査します。

一般的に、相続人を特定するためには複数の戸籍が必要となり、1通だけで全て出生から死亡まで揃う事はあまりありません。

赤ちゃんが生まれれば親の戸籍に記載され、結婚すると新しい戸籍が作成されるため、それだけでも2つの戸籍が必要になるのです。

さに転籍を何度も繰り返したりすると戸籍の数はどんどん増えてきます。

どんな人が相続人?法定相続人とは

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、主に被相続人の配偶者、子、親、兄弟姉妹がこれに該当します。

相続人の範囲と優先順位は法律で明確に定められており、相続手続きにおいてはこれらの法定相続人を正確に特定することが求められます。

戸籍を集める上での押さえておきたいポイント

戸籍の電子データ化

平成6年以降、戸籍の保存形式が紙からデジタルへ変更となりました。これに伴い、各自治体では戸籍情報のデジタル化作業が段階的に行われ、現在では全て戸籍はデジタルで管理されています。

そのため、平成6年以前に産まれている方であれば、ほぼ確実に、デジタルデータの「現在戸籍」と改正前の紙で作られた古い戸籍「改製原戸籍」が存在しています。

過去に5回も戸籍の様式が変わっている

更に、今までに5回も戸籍様式の変更が行われていますので、被相続人の方がご高齢であればあるほど、存在する戸籍の数は増えていきます。戸籍の様式が変更された場合、それに伴う改製原戸籍も収集する必要があります。

戸籍の歴史

明治5年式(壬申戸籍)日本で最初の戸籍

日本で最初の全国統一様式の戸籍。 戸籍の編成単位は「戸」で、身分登録・住所登録の意味があった。6年ごとに替える予定だったが、実施されなかった。

明治19年式 家制度の時代

屋敷番制度から地番制度への移行。 戸籍は家の単位で、戸主を中心として親族が記載された。

明治31年式

「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」の欄が新設され、戸主となった理由が記載されるようになった。

大正4年式

「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」の欄が廃止され、戸主の事項欄に記載されるように変更。

昭和23年式 家制度の廃止

戦後の民法改正で「家制度」が廃止され、戸籍編成が夫婦単位となった。

平成6年式 デジタル化

戸籍事務の電算化が始まり、コンピュータで戸籍を管理する自治体が増えた。横書きで算用数字を使用し、戸籍謄本が「戸籍全部事項証明書」に、戸籍抄本が「戸籍個人事項証明書」へと名称が変更された。

2024年3月から本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できる広域交付制度が開始

被相続人が、結婚な転勤などにより居住地を変えていた場合や、引越しをした際には、他の市区町村に本籍地が移動している場合もあります。

その場合は、それぞれの役所に戸籍取得の申請を行う必要がありますが、2024年3月から本籍地が遠くにある方でも、最寄りの市区町村の窓口で請求できる広域交付制度が始まりました。

 ほしい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できます。

どんな人が広域交付制度を使えるの?

・本人や配偶者

・父母や祖父母等の直系尊属

・子や孫等の直系卑属

以上の親族に限定されます。

参考リンク: 法務省 戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

ただし注意点が!

デジタル化されていない一部の戸籍・除籍は請求できない為、古い戸籍を請求する場合には、該当の役所から直接取り寄せる必要があります。

一部事項証明書、個人事項証明書は請求できません。

戸籍証明書等を請求できる方が市区町村の戸籍担当窓口に直接行って請求する必要があります。 郵送や代理人による請求はできません。

除籍謄本の保存期間は150年

長い間、相続登記などを放置していると手に入らない戸籍が出てきます。

戸籍取得の更なる問題点

戸籍の収集には役所が営業している平日に行わなければなりませんし、必要な戸籍の取得漏れがあった場合には、その都度やり直しをしないといけません。

出生時から死亡時までの一連の戸籍を取得するということは、上記のように複雑な戸籍を読み解き、必要な戸籍をすべて取得しなくてはいけないということです。

相続手続きにおいて、どの戸籍が必要かを理解することは、専門的な知識がなければ困難です。

多くの人が、相続人を特定するための戸籍の収集を最初の大きな障壁と感じているようです。

戸籍収集の方法

では具体的な戸籍収集の方法について解説いたします。

① 最初に故人の最新の戸籍を取り寄せる

初めに、故人が最後に登録されていた本籍地と筆頭者を特定し、戸籍謄本を入手します。

なお、故人が記載されていた戸籍の全員が死亡したり、結婚等で除籍されている場合、その戸籍は除籍謄本として扱われます。

② 故人の引っ越しや婚姻で本籍地が変わったか確認

続いて、①で取得した戸籍謄本や除籍謄本を基に、故人が他の本籍地へ移ったのか、あるいは結婚により新しい戸籍が作成されたのかを検証し、以前の戸籍がどの市区町村に存在するのかを調べます。

③ 今度は従前の本籍地に戸籍を請求

従前の戸籍がどこにあるのかが分かったら、その戸籍を取得します。他の本籍地から移ってきている場合は、その本籍地の市区町村役場へ請求します。

従前の戸籍の所在が判明したら、その戸籍謄本を入手します。もし他の本籍地から転入している場合は、まだ終わりません。該当する本籍地の市区町村役場に再度請求します。

④ 故人の出生死亡の戸籍を揃える

転籍してる場合は転籍元の市区町村に戸籍を請求する作業を繰り返し、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本の収集を行います。

⑤誰が相続人か最終確認

 全ての戸籍謄本が揃ったら、相続人を確定します。

⑥ 相続人全員の戸籍を集める

相続人が確定したら、相続人全員の戸籍謄本を取得します。

相続人が亡くなっている場合は、その相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類と、そのまた相続人の戸籍謄本が必要になります。

戸籍を取り寄せる時に必要なもの

役所等の窓口へ行く場合

戸籍交付申請書、印鑑(シャチハタでもOK)、本人確認書類、手数料が必要です。

代理人が請求する場合には委任状も必要です。

郵送の場合

①戸籍謄本等郵送請求書

各役所のホームページからダウンロードできます。

②本人確認書類の写し

運転免許証やパスポートなどの本人確認書類を用意します。

③定額小為替

手数料は定額小為替で払わねばなりません。定額小為替は郵便局で購入できます。

④返信用の封筒と切手

返信用の封筒にはあらかじめ返送先の住所・宛名を記載し、必要な切手を貼っておきます。

まとめ

相続手続きでは、故人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍が必要となります。これらの戸籍を集める作業は、故人が生涯にわたって複数の場所に居住していた場合、特に困難です。

今までは、戸籍は本籍地の役所でしか発行されないため、多くの時間と労力をかけて遠方の役所への出向や郵送での請求が必要でした。

これには戸籍の数が多いほど、また放置していた場合はさらに複雑だったのですが、ここで新しく縦割り行政を打破すべく新しい制度が始まったのです。

2024年3月1日からは、戸籍謄本等の広域交付制度が開始され、最寄りの市区町村窓口で戸籍謄本を請求できるようになりました。これにより、戸籍収集の手間が大幅に軽減されることが期待されています。

しかし、この新しい制度にも注意が必要です。

古い戸籍や一部事項証明書、個人事項証明書が請求できなかったり、広域交付で戸籍を請求できる親族の範囲に制限があることも理解しておく必要があります。

このように、相続手続きにおける戸籍収集は、新しい制度によって簡素化されつつありますが、それでもなお、多くの人にとっては大きな負担となる作業です。

もし戸籍収集が困難な場合は専門家に相談する事をお勧めします。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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