財産管理委任契約について解説

最終更新日:2024/03/10

財産管理委任契約とは?成年後見制度や任意後見制度との違い

成年後見制度は、判断能力の減退があった場合に利用できるものであり、任意後見制度は事前に契約があった場合でもやはり判断能力の減退があり、さらには家庭裁判所により任意後見監督人が選任されて初めて効力が生じます。 

財産管理委任契約は、個人が自己の財産を管理するために第三者に委任する契約です。

この契約により、委任者は自己の財産に関する一定の管理業務を委任人に託すことができます。

特に、判断能力が不十分な場合や、将来的に判断能力が低下する可能性がある場合に有効な手段とされています。

財産管理委任契約の特徴

財産管理委任契約の特徴は主に3つあります。

  • 判断能力の有無にかかわらず当事者間の合意のみで有効

  • 判断能力の低下に関係なく、任意で財産管理を委託できる
  •  
  • 家庭裁判所の関与がない

  • 成年後見制度や任意後見制度と異なり、家庭裁判所の監督下に置かれることなく、個人間で直接契約が結ばれる。
  •  
  • 自由に契約内容を定められる

  • 委任する業務の範囲や条件は、当事者間の合意により自由に設定可能。

 

財産管理委任契約のメリット

 

 

・判断能力が不十分とはいえない場合でも利用できる

・開始時期や内容を自由に決められる

・本人の判断能力が減退しても、契約は当然に終了せず、特約で死後の処理を委任することも可能

財産管理委任契約のデメリット

・任意後見契約と異なり、公正証書が作成されるわけではなく、後見登記もされないため、社会的信用が十分とはいえない

・任意後見制度における任意後見監督人のような公的監督者がいないため、委任された人をチェックすることが難しい

・成年後見制度のような取消権はない

以上のことをしっかりとおさえたうえで、財産管理委任契約の判断をしましょう。

利用シーン

海外赴任や長期出張

長期間国内にいない場合に、国内の財産を管理してもらうため。

高齢者の財産管理

判断能力が不安定な高齢者が、信頼できる第三者に財産管理を委託。

事業の継続

事業主が急病等で判断能力を失った場合に、事業の継続を委任人に託す。

法的枠組み

令和6年の法改正により、財産管理委任契約に関する規定が一部変更されました。これにより、契約の透明性が高まり、委任者と委任人双方の権利がより明確に保護されるようになりました。

結論

財産管理委任契約は、個人の自由と意志を尊重し、より柔軟に財産管理を行うことを可能にする重要な法的ツールです。

適切に利用することで、将来にわたって財産を守り、管理することができます。

 

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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