最終更新日:2024/03/12

後見のQ&A よくある質問に相続専門の司法書士が答えます

成年後見制度とはどのようなものですか?

成年後見制度は、判断能力が不十分な人々を支援するために、家庭裁判所が後見人を指名する仕組みです。

これにより、1人では難しい財産の管理や各種契約などが安全に行えるようになります。

くわしくはこちらのページもご覧ください。

成年後見制度にはどんな種類がありますか?

成年後見制度には、法定後見と任意後見の二つの形態があります。

法定後見

本人の判断能力が低下した後に親族などが家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が後見人を選任する制度です。

この制度は、認知症などで判断能力が低下した人を法的に保護するために存在します。法定後見には「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、それぞれに代理権や取消権が与えられます。

任意後見

本人の判断能力が十分なうちに、将来的に判断能力が低下したときに備えて、本人が選んだ後見人と公正証書で任意後見契約を結ぶ制度です。

任意後見では、本人が自らの意思で後見人を選び、契約内容に基づいて財産管理などを行います。任意後見には法的な分類はありませんが、利用形態として「将来型」「移行型」「即効型」に分かれます

法廷後見と任意後見の違い

法定後見は判断能力が低下した後に始まり、任意後見は判断能力が十分なうちに準備をしておく点が異なります。

また、法定後見では裁判所が後見人を選びますが、任意後見では本人が後見人を選ぶ事ができます

成年後見の種類について、くわしくはこちらのページもご覧ください。

どんな人が成年後見の申立てをする事ができますか?

これらの人々は、家庭裁判所に必要な書類を提出し、後見人の申し立てを行うことが認められています。

  • 本人(判断能力が不十分な方自身)
  • 配偶者(本人の配偶者)
  • 4親等内の親族(本人の子、孫、両親、兄弟姉妹、従兄弟、甥、姪など)
  • 成年後見人(すでに任命されている成年後見人)
  • 任意後見人(任意後見契約に基づく後見人)
  • 任意後見受任者(任意後見契約を受けた者)
  • 成年後見監督人(成年後見人の活動を監督する者)
  • 市区町村長(本人が居住する市区町村の長)
  • 検察官(公的な立場から申し立てを行うことができる)

後見人になったら、まず最初に何をするべきですか?

1 まずは家庭裁判所からの審判書を受け取る

後見人に指名されると、まずは家庭裁判所から送られてくる後見事件の審判書を受け取ります。その後、後見人ハンドブックというファイルが届き、そこには被後見人の財産を調べて報告する期限が書かれています。

財産調査には、審判書や登記事項証明書、公的な身分証明書を提示して、自分が成年後見人(保佐人・補助人)であることを証明する必要があります。

2 銀行や市区町村で財産を調べて財産目録を作成

銀行では、被後見人の住所と名前をもとに、その銀行にある財産を調べます。銀行の窓口で、ご本人の住所と名前で名寄せ(バラバラの物を整理しまとめること)をしてもらうと、その銀行に残っている財産を確認できます。

不動産の場合は、市区町村の税務窓口で固定資産台帳を確認する事である程度把握できます。法務局でが不動産の登記情報を調べることができます

現金や有価証券などは、被後見人やその家族と協力して探す必要があります。

全ての財産が明らかになったら、財産目録を作成します。

3 収入と支出を把握する

次に被後見人の収入と支出の詳細を把握します。

被後見人が勤務していたら雇用先からの源泉徴収票、年金を受給されていたら行政の窓口(基礎年金など国民年金の場合)や社会保険事務所や保険組合などの窓口(厚生年金などの被用者年金の場合)で調べることができます。ちなみに年金ですと偶数月の15日に入金が定期的にあるので、預金通帳を見れば把握が早くなります。

支出に関しては、家族からの情報や自宅での領収書の確認、銀行からの自動引き落としの詳細などを調べます。自動引き落しの場合、どこに支払われている分からない時は銀行に教えてもらう事ができます。

4 最後に裁判所へ報告する

最後に、被後見人の介護状況や健康状態を把握し、それに基づいて身上監護の計画を立て、裁判所に報告します。手続きに時間がかかる場合は、家庭裁判所の担当者に相談する事ができます。

成年後見人の役割は何ですか?

成年後見人は、本人の財産管理や法律行為を代行しますが、お店で日常の買い物や介護は職務に含まれません。

また、その活動は家庭裁判所の監督下にあり、成年後見人はその仕事を家庭裁判所に報告し、家庭裁判所の監督を受けます。

任意後見制度とは何ですか?

任意後見制度は、まだ判断能力があるうちに将来、判断能力が低下した時の事を考えて、前もって代理人(任意後見人)を指名し、ご自身の療養看護や財産管理について代理権を与える契約を結ぶ事です。契約は公正証書で作成します。

判断能力が低下した場合、任意後見人は家庭裁判所が選んだ任意後見監督人のチェックのもと、本人に代わって財産を管理したり契約を締結したりするサポートを行います。

浪費者も成年後見制度を利用できますか?

浪費者は成年後見制度の対象外です。この制度は、認知症や知的障がい、精神疾患などにより判断能力が低下した人々を保護するためのものです。

ちなみに、かつては浪費癖のある人も保護の対象でした。これは家族の財産を守るという家制度の理念に沿ったものでしたが、現行の成年後見制度は、そのような家制度の理念を取り除き、個人の権利を重視する方向に変わりました。

成年後見制度を利用する事によって戸籍に記載されちゃいますか?

現在の成年後見制度ではその事が戸籍に載ることは絶対にありません。

代わりに法務局に登記され、関係者からの請求に応じて証明書が発行されます。

成年後見制度の申立てにはどれくらいの期間と費用がかかりますか?

申立てにかかる期間と費用はケースにより異なりますが、一般的には3~6ヶ月です。

費用は切手と印紙代で5,000円~1万円程です。鑑定が必要な場合は5~15万円の追加費用が発生します。

また、申立てを司法書士に依頼する場合は、その報酬がかかります。

成年後見制度のデメリットは何ですか?

1 費用がかかる

後見人選任申立て手続きには費用がかかり、後見人には報酬が支払われます。これらの費用は本人の財産から支払われることが一般的です。

2 後見人の選任の問題

家庭裁判所が後見人を選任するため、希望通りの後見人が選ばれるとは限りません。親族ではなく専門家が選ばれることもあります。

3 財産の自由な処分ができない

成年後見制度を利用すると、本人の財産を自由に処分することが難しくなります。他にも資産活用や相続対策が制限されることがあります。

4 相続税対策の問題

成年後見制度を利用すると、積極的な資産運用や権利放棄ができないため、相続税対策が難しくなることがあります。

5 制度が継続され続ける

一度成年後見制度を利用すると、本人が死亡するまで続くことが多く、判断能力が回復することは稀です。

成年後見の申立ては自分で行うことができますか?

成年後見の申立ての手続き自体は比較的簡単で、ご自身で出来なくはありません。

ただし、どの手続きを選ぶべきかなど判断が難しい一面もあるので、専門家に1度相談した方が良いでしょう。

後見事務の方針と年間の支出予定を立てる際に注意すべきことは何ですか?

財産や身上の調査をきちんと行い、定期的な収入や支出、負債といった経済状況を把握する事。

近いうちに多額の収入や出費が見込まれる場合は、それらを考慮した予定を立てる事も重要です。

被後見人の銀行預金や郵便貯金の管理の方法はどうすればよいですか?

口座の管理に関しては、口座の名義を後見人に変更する必要があります。

後見人個人の財産と混同することを避けるために名義は「A 成年後見人B」(A:被後見人 B:後見人)とします。

銀行で手続きを行うため、登記事項証明書(もしくは審判書)、そして後見人の実印と印鑑証明書、公的な身分証が必要です。この手続きによって、今までののキャッシュカ-ドは使えなくなります。

不動産の管理において注意すべき点は何ですか?

不動産を管理する際には、受任者が社会的な立場や能力に関わらず、高いレベルの注意を払う必要があります。

これは、民法第644条で定められており、受任者は通常自分に適用される注意義務を超えた責任を負います。

契約に基づく義務を果たすことはもちろん、被後見人に不利益を与えないような財産の管理や処分を行うことが求められます。

特に、居住用不動産を売却する場合には、その影響が生活に及ぶため、裁判所の許可なしに居住用不動産を処分することはできません。これは、民法第859条の3により、成年後見人が被後見人の代わりに不動産を処分する際には、法的な手続きを遵守する必要があるためです。

後見人に選任された後、判断に迷った場合はどこに相談すればよいですか?

後見人に任命され何か判断に困った時には、家庭裁判所の担当書記官に相談しましょう。

担当書記官からは適切なアドバイスと必要な指導をもらえます。自己の判断だけで行動するのではなく、常に裁判所の指導を仰ぐことが重要です。

成年後見制度の報酬はどのように決まりますか?

成年後見人への報酬は、家庭裁判所によって定められます。

この制度は本人の生活を支援する目的で設けられているため、報酬が本人の生活に過度な負担をかけることはありません。

報酬の支払いは、本人の財産から行われることが一般的です。

既に任意後見契約がある場合、法定後見も利用できるのでしょうか?

通常、任意後見契約がある場合は法定後見制度の利用はできません。なぜなら、既に結ばれた任意後見契約が優先されるからです。

ただし、任意後見契約だけでは十分な支援が提供できないと家庭裁判所が判断した場合、例えば取消権の行使が必要な状況など、法定後見制度を利用することが許可されることがあります。

このような場合、法定後見制度の適用が始まると、元の任意後見契約はその効力を失います。

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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