司法書士による遺言書作成の流れや遺言事項について解説

最終更新日:2024/12/24

どうして遺言が必要なのか

生前には、家族間で遺産争いが起こるはずがないと考えている人は多くいらっしゃいます。

どんなに仲が良かった家族でも、ちょっとしたきっかけでトラブルとなり相続トラブルは起こりえます。

また、遺言を残しておかなかった為に配偶者でさえも、住む家を失う事もあります。

遺言の目的はたくさんあるとは思いますが、最大の意義は大切な人を無用なトラブルから守る事に尽きると思います。

たとえ遺産は法定相続分で分ければ良いと考えていても、その意思を遺言に書いておきましょう。

どんな事でも遺言は自分の意思を伝える最後のチャンスです。

遺言で出来る事とは?遺言事項って何?

遺言で出来る事は相続分や遺産分割の指定の他に何があるでしょうか?

実は遺言書には、法律で定められた事項(法定遺言事項)と、個人的な希望やメッセージ(付言事項)を書くことができます。

法的効力のある遺言事項にならない物

私が死んだら家族仲良く

年老いたお母さんを大切に

家族への感謝のメッセージなど

このような文言は遺言者の思いを伝えるものとしては良いのですが、そのことを実現させるかどうかは遺族の判断に委ねられてします。

法的効力のある遺言事項は以下の表の通りです。

遺言事項一覧

相続や財産処分について

相続および財産に関する項目 内容
遺産相続の方法の指定およびその委託

相続分の指定とは、遺言者が法定相続分とは異なる割合で相続財産を分配することを指定することです。

例えば、法定相続分では配偶者が2分の1、子供がそれぞれ4分の1ずつとなる場合でも、遺言で「配偶者に3分の1、子供にそれぞれ3分の1ずつ」と指定する事ができます。

相続分の指定の委託は、遺言者が相続分の指定を第三者に委託することです。

この場合、委託を受ける第三者は相続に利害関係を持たない者でなければなりません。

遺産分割の禁止 遺産分割を禁止することができます。禁止期間は最大で相続開始から5年です。
共同相続人の間の担保責任の指定

共同相続人の担保責任とは、相続財産に欠陥があった場合、相続人同士がその損害を補う責任の事です。

例えば、相続した土地の面積が実際には遺産分割時に聞いていたよりも少なかった場合、その不足分の損失を他の相続人と分担する事になります。

遺言による担保責任の指定は、被相続人が遺言でこの担保責任の範囲や方法を指定する事です。

例えば、特定の相続人の担保責任を免除したり、減免したりする事ができます。

相続人の排除及び排除の取り消し 相続人の排除または排除の取り消しの意思を表示でき、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てを行うことで効力を発生します。
特別受益の持戻しの免除

特別受益とは、相続人の一部が被相続人から生前に受けた贈与や遺贈などの利益のことです。

特別受益の持戻しとは、この特別受益を相続財産に加えて再計算し、相続人間の公平を図る制度です。

例えば、ある相続人が生前に多額の贈与を受けていた場合、その金額を相続財産に含めて分割します。

持戻しの免除は、被相続人が遺言で特別受益の持戻しを免除する意思を示すことです。

これにより、特別受益を受けた相続人がその利益を相続財産に加えずに済むため、被相続人の意向を尊重する事ができます。

遺贈

遺贈とは、遺言者が遺言書で特定の財産を相続人以外の第三者に譲る事で、方法は2種類あります。

包括遺贈 : 財産全体の一定割合を譲るものです。例えば、「全財産の30%をAさんに遺贈する」といった形です。

特定遺贈 : 特定の財産を譲るものです。例えば、「自宅をBさんに遺贈する」といった形です。

遺贈侵害額請求方法の指定

遺言によって遺留分(法定相続人が最低限受け取る権利のある財産)が侵害された場合、その侵害額を請求することです。

遺言者は、遺言書でこの請求方法や負担割合を指定することができます。

例えば、複数の受遺者がいる場合、遺言者は「Aさんの遺贈から優先的に遺留分侵害額を請求する」といった具体的な順序を定めることができます。

寄付行為

遺言による寄付(遺贈寄付)とは、遺言者が遺言書で特定の財産を公益法人やNPO法人などに譲ることを指します。

寄付先によっては、相続税や所得税の控除を受けられる場合があります。

遺言による寄付を行う際は、寄付先を明確に指定し、遺言執行者を決めておくことが重要です。

また、遺留分に配慮することも必要です。

信託の設定

遺言信託とは、遺言書を使って信託を設定する方法です。

遺言者(委託者)が、信頼できる人(受託者)に財産の管理や処分を任せることができ、遺産の受取人(受益者)が適切に財産を管理できるようになります。

身分に関して

身分に関する項目 内容
子の認知

遺言による認知は、遺言者が生前に認知できなかった場合などに用いられます。

遺言書に認知する旨と、子供の母親の氏名、子供の住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍筆頭者の事項を明記する必要があります。

未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定

未成年後見人は、親権者が亡くなったり、親権を行使できない場合、未成年者の法定代理人としてその生活や財産を管理する役割を担います。

遺言書で未成年後見人を指定する際には、未成年者の氏名、生年月日、未成年後見人の氏名、住所、生年月日、職業を記載します。

未成年後見監督人は、未成年後見人の業務を監督する役割を持ち、未成年後見人が適切に職務を遂行しているかをチェックします。必要に応じて指導や助言を行います。

遺言書で未成年後見監督人を指定することも可能です。

その他

その他の事に関する項目 内容
遺言執行者の指定おのびその委託

遺言者は、遺言書で遺言執行者を指定することができます。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う責任を持つ人です。

祭祀承継者の指定

祭祀承継者を指定することができます。

祭祀承継者は、葬儀の喪主を務めたり、仏壇やお墓などの祭祀財産を管理し、先祖の供養を行う役割を担います。

生命保険金の受取人変更

生命保険金の受取人を指定または変更することができます。

これは、保険契約に基づいて行われるため、遺産分割の対象とはなりません。

遺言の撤回、取り消し

遺言の全部または一部を撤回することができます。

撤回の方法は新しい遺言書の作成か、遺言書を物理的に破棄する事です。

自筆遺言書作成の流れ

初回の無料相談から、遺言者の方針確認
相続の相談専門家が納得のいくまで、お客様のご要望や疑問にお応えします。

遺言書が法律に適合しているかを確認し、適切な形式で作成するためのアドバイスを提供し、遺言書が無効になるリスクを減らします。

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推定相続人調査
作業風景●戸籍及び住民票の取得 戸籍謄本を収集して、相続人を特定し、遺言書に反映させます

●相続関係説明図の作成 

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相続財産の調査

書類取得●土地の固定資産評価証明書の取得

●預金等の残高調査 

●財産目録の作成 等財産目録の作成:遺言書に記載する財産目録を作成し、正確で明確な内容にすることで、相続手続きがスムーズに進むようにします

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遺言書の原案作成及び内容の確認

●打ち合わせの上、お客様のご意見に沿った原案を確認します。

●原案が出来次第依頼者の方に内容をご確認いただきます。

 

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目的の実現に向けて専門家によるアドバイス
民法、税法、人間関係・その他を考慮して、最善の文案を提案いたします。

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自筆遺言書の完成
●戸籍及び住民票の取得

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遺言書の保管についてのサポート
遺言書保管制度を利用して、法務局に遺言書を保管する手続きをサポートします 

公正証書遺言の作成方法、流れ

  • (1) 証人2人の立会いのもとで、公証役場へ出向きます。証人は司法書士と事務員の2名で対応いたしますのでお客様が証人を探す必要はありません。
  •  
  • (2) 遺言者が遺言の内容を公証人に口述します。
    (聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、または筆談により口述に代えることができます。)
  • (3) 公証人がその口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧してもらいます。
  • (4) 遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したうえで、各自が署名捺印します。
  • (5) 公証人がその証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名捺印します。
    証人2人以上が立ち会う中で、公証役場にご出向きください。
  • 公証役場に到着したら

  • 公証役場遺言者は、公証人に遺言の内容を口述していただきます。
    聴覚や言語機能に障害がある方は、手話通訳を利用した申述や筆談による口述の代替が可能です。
  • 公証人が遺言者様の口述を筆記し、遺言者様及び証人様に読み上げるか、または閲覧していただきます。
  • 遺言者様および証人様が筆記内容の正確性を確認し、署名と捺印を行っていただきます。
  • 公証人が法律に基づく手続きに従い、証書が作成されたことを記載し、署名と捺印を行います。

証人・立会人ができない人とは?

遺言執行者が証人を務めることは許されていますが、未成年者や推定相続人、受遺者およびその配偶者、直系血族は証人としての資格を有しません。

さらに、公証人の配偶者や四親等以内の親族、書記、使用人も証人となることはできません。

この規定は、遺言の公正さを保つために重要です。

遺言書の文言の作成やチェックは司法書士に相談しましょう!

公証役場では、遺産相続のトラブル回避や節税に向けた対策などの具体的なアドバイスは受けられません。必ず実績ある専門家のチェックを受けて下さい。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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