最終更新日:2024/06/03

生命保険を活用する

相続手続きにおいて、生命保険を活用する方法は、賢明な税務対策として広く認識されています。生命保険金は、受取人が指定されているため、相続財産とは別に、迅速に資金を提供することが可能です。

死亡保険金には非課税枠がある

特に、死亡保険金には法定相続人1人当たり500万円の非課税枠があり、これを利用することで相続税の負担を軽減できます。

また、生命保険は遺産分割協議がまとまる前に、受取人に直接支払われるため、遺産分割の際のトラブルを避けることができます。

さらに、相続人が不動産などの流動性の低い資産を多く持っている場合、生命保険は現金化が容易であるため、相続税の納税資金としても有効です。

納税(資金)対策

相続税の納付に関しては、通常、現金での一括支払いが基本とされています。

しかし、不動産やその他の財産を用いた物納は、特定の条件を満たした場合に限り可能であり、すべてのケースで認められるわけではありません。

多くの場合、財産を売却して現金化することは望ましい選択ではないかもしれません。

このような状況において、相続税の負担を軽減する一つの手段として、終身保険がよく利用されています。

節税対策としては定期保険や定期付終身保険がよく選ばれている。

終身保険は、その名の通り、加入者の生涯にわたって保障が続き、死亡時には確実に保険金が支払われるため、遺族に現金が残されるというメリットがあります。

しかしながら、相続税の額は一般的に大きく、それをカバーするだけの保険金額を設定した保険に加入すると、保険料もまた高額になりがちです。

そこで、保険期間を延長することで保険料を抑えることができる「定期保険」や、一定期間の保険期間が設定された後に終身保険に切り替わる「定期付終身保険」が、相続税対策としてよく選ばれる傾向にあります。

この保険商品は、相続税の納税資金を確保するための有効な手段として、多くの人々に利用されています。

生命保険を活用する4つのメリット

メリット1)受け取る死亡保険金には非課税枠があります

生命保険を利用する際の大きなメリットの一つは、受け取る死亡保険金に対して非課税枠が設定されていることです。

この非課税枠は、相続税法により、被相続人の死亡後に相続人の生活を支援するために用意されており、次のように計算されます

非課税枠=500×法定相続人の数

この計算式により、死亡保険金が非課税枠内であれば、その部分については相続税が免除されます。

例えば、法定相続人が3人いる場合、非課税枠は

500万円×3=1,500万円

となり、この額までの死亡保険金は相続税の対象外となります。

この制度は、相続税の負担を軽減するために非常に有効です。

特に、相続税が高額になりがちな資産を持つ家族にとって、生命保険は相続税の納税資金を確保する手段として、また、遺族の生活保障として重要な役割を果たします。

参照: 国税庁 相続税の課税対象になる死亡保険金

法定相続人以外が受け取ると非課税枠は無くなる

ただし、非課税枠の利用には条件があり、受取人が法定相続人である必要があります。

法定相続人以外の人が受け取る場合、非課税枠の適用はありません。また、受け取る保険金の額が非課税枠を超える場合、超えた部分については相続税が課されます。

生命保険の非課税枠は、相続税対策としてのみならず、遺族の経済的な安定を図るための重要な機能を持っています。

適切に活用することで、相続税の負担を軽減し、被相続人の意思に沿った資産の承継を実現することが可能です。

メリット2)加入と同時に納税対策ができます

保険に加入したのと同時に資金が準備できることになります。
銀行預金などの積立とは大きく異なる部分です。

生命保険を活用することで、以下のような納税対策が可能になります。

非課税枠の利用

生命保険金には、相続税の非課税枠が設定されています。

法定相続人1人当たり500万円までの保険金は、相続税の対象外となるため、相続税の負担を軽減することができます。

受取人の指定

生命保険では、受取人を指定することができます。

指定された受取人は、保険金を相続財産に含めずに受け取ることが可能で、遺産分割協議の対象外となります。

これにより、遺産分割のトラブルを防ぐことができます。

納税資金の確保

相続税の納税は原則現金一括が基本ですが、相続する現金が少ない場合、納税資金が不足することがあります。

生命保険に加入しておけば、被保険者の死亡と同時に死亡保険金を受け取る権利が発生し、その資金を納税資金として活用することができます。

生前贈与の活用

生命保険料を生前贈与として活用することで、贈与税の非課税枠を利用しながら、保険料を支払うことができます。例えば、年間110万円までの非課税枠内で子どもに贈与し、その資金で保険料を支払わせることが可能です。これにより、相続税の負担をさらに軽減することができます。

以上の方法を組み合わせることで、相続税の節税と納税資金の確保を実現することが可能です。

ただし、これらの対策を行う際には、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

また、保険商品の選択や契約内容によっては、想定外の税負担が生じる可能性もあるため、注意が必要です。

メリット3)保険金受取時まで課税は発生しません

生命保険の配当金は、受け取った保険金と一緒に相続財産として扱われ、契約途中で課税されることがありません。

一方で、銀行預金は利息に20%強の源泉徴収がされてしまいます。

生命保険の配当金とは?

生命保険の配当金は、保険契約者が保険料を支払う際に設定された予定利率よりも多く保険料が集まった場合に発生する「剰余金」が還元されるものです。

具体的には以下のポイントを理解しておくと役立ちます。

予定利率と予定死亡率

保険料は予定死亡率、予定利率、予定事業費率に基づいて計算されます。

予定利率は保険の運用利回りを指し、予定死亡率は亡くなる可能性の生命表に基づいて算出されます。

3つの差益

配当金は予定利率と実際の運用利回り、予定死亡率と実際の死亡率、予定事業費率と実際の経費の差益から生じます。

死差益(死亡率の差)、利差益(運用利回りの差)、費差益(経費の差)が配当金に影響します。

有配当と無配当の保険

有配当保険では剰余金から配当を行います。3利源配当タイプと利差配当タイプがあります。

無配当保険は配当金がなく、代わりに保険料が安くなっている保険商品です。

配当金の受け取り方法

配当金は積立、買増、相殺、現金支払の4つの受け取り方法があります。

税金の考慮

配当金には税金がかかる場合があります。

契約期間中や保険金支払い開始日以降に受け取る場合に異なる税金ルールが適用されます。

生命保険を選ぶ際に、配当金の仕組みやメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。

銀行預金利息には20%近くの税金がかかる

銀行預金の利息には約20%の税金が課税されます。

具体的には、利子所得に対して所得税として15.315%、復興特別所得税を含めた上で、さらに地方税5%が加算され、合計で20.315%の税率が適用されます。

この税金は源泉分離課税として、金融機関によって利息支払い時に自動的に差し引かれます。

利子所得の税額は、原則として、利子所得の金額に一律20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)が課税されるため、個人が確定申告をする必要はありません。

ただし、特定の条件下では非課税となる場合もありますので、詳細は専門家に相談することをお勧めします。

メリット4)現金で受け取れます

相続税の納付は、相続が発生してから10ヶ月以内に行うことが法律で定められています。

この期間内に、相続人は通常、現金で税金を支払う必要があります。

しかし、相続財産が不動産などの固定資産で構成されている場合、それを売却して納税に必要な資金を準備しなければなりません。

このような状況を避けるためにも、生命保険金を上手く利用する事が有効な手段でしょう。

相続税の納付で生命保険が利用できる

生命保険金は現金として受け取ることができるため、相続税の納付に直接使用することが可能です。

相続税の納付方法には、延納や物納といった選択肢も存在しますが、これらの方法は利子が発生する上、手続きが複雑であるため、多くの場合は避ける傾向にあります。

さらに、相続税の納付を固定資産の売却なしで完了させたい場合は、受け取る死亡保険金にかかる相続税分を考慮に入れ、適切な保障額を設定することが重要です。

代償分割に生命保険を利用する

ビジネスを営む際、遺産を分割することで事業活動が停止するリスクがあります。

このような状況を避けるために、代償分割という手法が採用されることがあります。

 代償分割とは?

代償分割は、相続財産の中から特定の財産を一人の相続人が取得し、他の相続人には相当の金銭(代償金)を支払う方法です。

これにより、不動産などの分割が困難な財産についても、相続人間のバランスを取ることが可能になります。

例えば、ある相続人が財産を引き継ぐ代わりに、他の相続人に対して金銭や他の資産を支払う事ができます。

また、重要な役割を果たす保険金は、財産を引き継ぐ人が他の相続人に支払うための資金として利用する事ができるのです。

相続と代償分割 生命保険の賢い活用法

相続が発生した際、不動産など分割が難しい財産をどのように扱うかは、多くの家族にとって頭を悩ます問題です。

特に、家族が共有する家や土地をどう分けるかは、感情的な問題も絡み合い、複雑なものとなりがちです。

そこで役立つのが、生命保険を利用した代償分割です

生命保険で後継者への安定的な継承ができる

特に、同族会社や株式を多く保有する社長の場合、経営者が亡くなった後、会社の経営に関与していない相続人に株式を分割すると、会社に対して株の買取を要求される可能性があり、これが経営の安定性を損なうことにつながります。

そのため、経営の安定的な継承を図るには、後継者に自社株を相続させることが望ましいとされています。

このような状況において、生命保険を活用することで、遺産分割における資金調達をスムーズに行い、事業の継続性を保つことが可能になります。

生命保険は、遺産分割の際に発生する様々な問題を解決するための有効な手段となるのです。

この方法により、事業主は安心して事業を継続し、将来の計画を立てることができます。

また、相続人間の公平な取引を保証し、家族間の紛争を防ぐ助けともなります。

生命保険を利用した代償分割は、事業の円滑な承継と相続人の利益を守るための賢明な選択と言えるでしょう。

代償分割で生命保険を活用するメリット

生命保険を活用することで、代償分割に必要な資金を準備することができます。

被相続人が生存中に適切な生命保険に加入し、不動産を取得する相続人を受取人に指定しておくことで、被相続人の死後、保険金が支払われ、それを代償金として他の相続人に支払うことができます。

注意点

生命保険を活用した代償分割にはいくつかの注意点があります。代償金額が相続財産の価値を超える場合、超えた分について贈与税が課税される可能性があるため、金額の設定には注意が必要です。

また、保険金は遺産分割の対象に含まれないため、代償金を支払う人が受取人になることが重要です。

まとめ

生命保険を活用した代償分割は、相続における不動産などの分割困難な財産の扱いにおいて、有効な手段の一つです。

しかし、その利用には適切な計画と理解が必要です。相続が発生する前に、専門家と相談し、適切な保険商品を選ぶことが、スムーズな遺産分割につながります。

生命保険を相続対策に活用する際には、保険金の受取人を配偶者にすることが推奨されます。

配偶者には税額軽減の措置があり、相続税の負担が大幅に軽減される可能性が高いからです。

しかし、受取人を子どもに指定することで、将来的に遺産分割をスムーズに行うことも可能です。

生命保険を活用した相続対策は、節税だけでなく、家族間のトラブルを回避し、相続手続きをスムーズに進めるための有効な手段と言えるでしょう。

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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