最終更新日:2024/03/26

おしどり贈与(夫婦間贈与)の特例とは

「おしどり贈与」、正式には「贈与税の配偶者控除の特例」とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産、または居住用不動産の購入資金を贈与する際に適用される税制上の特例です。

この特例を利用すると、基礎控除110万円を超える贈与に対して、最大2,000万円までの控除が受けられます。つまり、最大で2,110万円までの贈与が非課税となる可能性があります。

どんな条件なら特例を受けられるか

特例の適用を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

1)夫婦の婚姻期間が20年以上であること。(内縁関係はNGです。)

2)贈与される財産が居住用不動産、または居住用不動産の取得資金であること。(日本国内の不動産に限ります。)

3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた居住用不動産に実際に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

この特例は、相続税対策として有効であり、配偶者が自宅を確保しやすくなるメリットがあります。

ただし、一生に一度しか適用されないため、慎重に検討する必要があります。

また、特例の適用を受けるためには贈与税の申告が必要です。

手続きの方法

おしどり贈与(夫婦間贈与)の特例を受けるための手続き方法は以下の通りです。

必要な書類の準備

① 贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された戸籍謄本または抄本

② 贈与を受けた日から11日を経過した日以降に作成された戸籍の附票の写し

③ 贈与を受けた居住用不動産の登記事項証明書

④ 居住用不動産の固定資産評価証明書 (居住用不動産の贈与を受けた場合 )

ただし、戸籍の附票の写しに記載されている住所が居住用不動産の所在場所である場合には、住民票の写しの添付は不要です。

配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲

贈与する居住用不動産にも、ある程度の条件が求められます。

■贈与を受けた夫や妻が住むための国内の家屋、またはその家屋の敷地であること(居住用家屋の敷地には借地権も含む)

■居住用家屋とその敷地は一括して贈与を受ける必要はなく、居住用家屋だけや居住用家屋の敷地だけの贈与を受けることも可能。

この居住用家屋の敷地だけの贈与を受けるときには、次のいずれかに当てはまることが必要です。

(ア)夫または妻が居住用家屋を所有していること

(イ)贈与を受けた夫や妻と同居する親族が居住用家屋を所有していること

※敷地の贈与を受ける場合には敷地の一部の贈与を受けることができます。

※居住用家屋の敷地が借地権のときに金銭の贈与を受けて、地主から底地を購入する場合も認められます。

不動産価格の算定

建物の場合

固定資産評価額が基準

配偶者控除の対象となる居住用不動産の価格算定において、建物の価格は固定資産税評価額を基準にします。

この評価額は、市町村の税務課から取得できる固定資産評価証明書に記載されている金額です。

居住用と事業用で併用されている場合

贈与される建物が居住用と事業用で併用されている場合、居住用部分のみが配偶者控除の特例の対象となります。

この居住用部分の評価額は、建物の床面積のうち居住用部分が占める割合を建物の評価額に適用して算出します。

例えば、建物の評価額が2,000万円で、そのうち居住用部分が60%を占める場合、居住用部分の評価額は1,200万円(2,000万円×60%)となります。

配偶者控除の対象は

この評価額が配偶者控除の対象となり、最大2,000万円までの贈与が非課税となる特例の計算に使用されます。

正確な評価額の把握が重要であり、贈与税の申告においては、この評価額を贈与税申告書に記載し、税務署に提出することになります。

もし居住用部分の割合が全体のおおむね90%以上であれば、全体を居住用不動産として扱うことができます。

土地の場合

「路線価方式」と「倍率方式」の2通り

配偶者控除の対象となる居住用不動産の価格算定で土地に関しては、主に「路線価方式」または「倍率方式」に基づく評価額が基準となります。

これらの方法は、土地の所在地や種類によって異なります。

路線価方式

路線価が定められている地域では、路線価を基に土地の価格を算出します。路線価は、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を指し、土地の面積と掛け合わせて評価額を求めます。

倍率方式

路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて土地の価額を計算します。

固定資産税評価額は、市町村から取得できる固定資産評価証明書に記載されています。

贈与税の申告において重要な役割となる土地の価格算定

贈与される土地の価格算定は、贈与税の申告において重要な役割を果たし、配偶者控除の特例を適切に適用するために必要な手続きです。

正確な評価額の把握が重要であり、贈与税の申告においては、この評価額を贈与税申告書に記載し、税務署に提出することになります。

もし居住用部分の割合が全体のおおむね90%以上であれば、全体を居住用不動産として扱うことができます。

参考リンク

国税庁 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

国税庁 配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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