最終更新日:2024/04/13

内縁の夫婦と遺産相続

ここでは、内縁のパートナーと遺産相続についてご説明いたします。昨今では、多様なライフスタイルが受け入れられるようになり、実質的に夫婦としての共同生活を送ってはいるものの、籍は入れていないという男女も数多く存在します。

いわゆる内縁や事実婚などと呼ばれているものです。内縁とは「婚姻の意思をもって共同生活を営み、社会的にも夫婦と認められているものの、婚姻届を提出していない事実上の夫婦」をいいます。

婚姻届を提出していないので法律上の婚姻関係とは認められません。

ですが、内縁においても、事実上の婚姻生活を営んでおり、婚姻届を提出した夫婦となんら変わりありません。そのため、内縁の夫婦であっても、共同生活に関する部分は、なるべく婚姻届を提出した夫婦と同様の権利義務を適用しましょうというのが裁判所の考えです。

例えば、内縁関係であっても、相互に婚姻費用の分担義務、同居・協力・扶助の義務、日常家事債務の連帯責任などが認めらます。また内縁関係を解消した場合、財産分与請求、慰謝料請求や損害賠償請求をすることが認められます。

内縁関係が相手方の死亡によって解消した場合おいて、内縁の妻には相続権は認められておりません。

法定相続人は、婚姻届の提出という形式的な要件、つまり戸籍のみで決定するのです。

長年連れ添ったとしても、婚姻届の提出を欠いているので、内縁の妻は法定相続人ではありません。

さらに内縁の夫が事業を営んでいて、内縁の妻がその事業を手伝い、特別の寄与をしたような場合であっても、寄与分は法定相続人についてのみ問題となるものですから、法定相続人でない内縁の妻は寄与分を主張することができません。

内縁関係での相続における問題点とは

私たちの社会では、結婚という形式を経ずに共に生活を送るカップルが増えています。

これらの関係は内縁と呼ばれ、法的な結婚とは異なる扱いを受けることが多いです。

特に遺産相続の場面では、内縁のパートナーが直面する法的な課題は複雑で、しばしば予期せぬ困難を引き起こします。

法的認知の壁

日本の法律では、内縁の関係は正式な結婚とは認められていません。そのため、配偶者としての法的な権利や保護を受けることは難しいのが現状です。

遺産相続においても、内縁のパートナーは法定相続人とは認められず、故人が遺言を残していない限り、遺産を受け取ることはできません。

遺言が鍵を握る

内縁のパートナーに遺産を相続させたい場合、遺言書の作成が不可欠です。

遺言によって、故人の意思が明確に示され、内縁のパートナーへの遺産分配が可能になります。しかし、遺言がない場合、内縁のパートナーは遺産を主張する法的な基盤を持たないため、相続権を失うことになります。

※当窓口の遺言書作成についてはこちらをご覧ください。

共同生活の証明

内縁の関係にあるカップルが遺産相続を行う際には、共同生活をしていた証拠が重要になります。

これには、共同の住所での登録、共有財産の証明、共同での生活費の支払いなどが含まれます。

この証拠は、遺言がない場合でも、遺産分配において一定の影響力を持つことがあります。

法改正の動き 

近年、内縁の夫婦に対する法的保護を強化するための法改正が議論されています。これにより、内縁の夫婦も法的な保護を受けやすくなる可能性があります。

最近の民法改正では、内縁の夫婦に関する相続権に直接的な変更はありませんでした。

内縁の夫婦は法律上の婚姻とは認められておらず、相続権も法定相続人としては認められていないのが現状です。

内縁の妻が夫の遺産を承継する方法とは

内縁の妻が遺産を承継する方法について、解説いたします。

1. 夫に相続人がいる場合

内縁の妻には相続権がないので、夫の遺産はすべて法定相続人に引き継がれます。この場合、遺言によって、内縁の妻に遺産を承継させることが出来ます。

それでも法定相続人には遺産の一定割合を遺留分として請求する権利がありますので、法定相続人から遺留分減殺請求がなされれば、遺言の内容どおりに遺産を受け取ることができない場合もあります。

法定相続人が兄弟姉妹である場合には、兄弟姉妹に遺留分はありませんので全ての遺産を受け取ることが出来ます。 

内縁のパートナーが遺産を受け継ぐためには、遺言による贈与(遺贈)を受ける、生前贈与を受ける、特別縁故者として遺産を相続する、生命保険の受取人になる、遺族年金を受け取る可能性などの方法があります。

また、2023年4月に施行された改正民法では、相続に関するルール変更が含まれていますが、こちらは主に遺産分割の期限の新設、遺産共有と通常共有が併存している場合の特則の新設、相続財産の管理に関する制度変更など、相続手続きの効率化や明確化に関する内容です。

内縁の夫婦が寄与分の請求をすることはできません。

寄与分とは、事業の手伝いや介護などにより、相続財産の維持または増加に貢献した相続人に認められるものですが、内縁の配偶者にはこの寄与分の請求は認められていないとされています。

したがって、内縁の夫婦が相続において保護を受けるためには、遺言書の作成やその他の生前対策を行うことが重要です。

法的な婚姻関係にない内縁の夫婦には、日本の法律では相続権は認められていないため、遺産を受け取るためには遺言による指定や生前対策が必要となります

現時点では、内縁の夫婦が遺産相続をスムーズに行うためには、遺言書の作成が最も確実な方法です。

2. 夫に相続人がいない場合

特番縁故者として審判を求める

遺言がなかった場合であっても、内縁の夫に法定相続人がいない場合は、内縁の妻は、特別縁故者として、家庭裁判所に対し相続財産の付与の審判を求めることにより遺産を承継できる可能性があります。

相続人がいない場合、内縁の妻は特別縁故者として家庭裁判所に財産分与の申立てをすることができる可能性があります。これは、被相続人と生計を同じくしていた者が相続財産を受け取ることができる制度です1。

内縁の妻が特別縁故者として認められる条件とは

被相続人と生計を同じくしていたこと

内縁の妻が被相続人と同居し、共同生活を営んでいたことが必要です。

被相縁故人の療養看護に努めたこと

内縁の妻が被相縁故人の療養や看護に献身的に努めていた場合、特別縁故者として認められる可能性があります。

ただし、これは職業としての看護ではなく、個人的な献身に基づくものである必要があります。

その他、被相縁故人と特別密接な関係にあったこと

被相縁故人と特に親しい交流があったり、被相縁故人が生前に「財産を譲りたい」と言っていた相手など、特別な関係にあった場合も特別縁故者となる可能性があります。

特別縁故者になる為の手順

特別縁故者として認められるためには、家庭裁判所に申立てを行い、裁判所から特別縁故者として認められる必要があります。

家庭裁判所への申立て

特別縁故者として認められるためには、家庭裁判所に申立てを行い、裁判所からの認定を受ける必要があります。

相続財産管理人の選任

相続財産管理人が選任され、遺産の管理や債権者への配当、特別縁故者への分与などの処分を行います。

相続人調査と官報公告

相続財産管理人が選任された後、相続人調査が行われ、官報公告によって遺産相続が発生している事実を公表します。

相続人の不存在が確定

公告をしても相続人が現れなかった場合には相続人の不存在が確定します。

特別縁故者への相続財産分与の申立て

相続人の不存在が確定した後、特別縁故者は相続財産分与の申立てを行うことができます。

特別縁故者の手続きはハードルが高い

この手続きは複雑であり、法律の専門家に相談することをお勧めします。

また、特別縁故者として認められた場合でも、相続税の申告が必要になることがありますので、税務に関する専門家のアドバイスも必要になるかもしれません。

まとめ

近年、内縁の夫婦に対する法的保護を強化するための法改正が議論されています。

これにより、内縁の夫婦も法的な保護を受けやすくなる可能性があります。

しかし、現時点では、内縁の夫婦が遺産相続をスムーズに行うためには、遺言書の作成が最も確実な方法です。

遺言書について、詳しくはこちらをご覧ください。

この記事を書いた司法書士

鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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