相続に関わる手続き
最終更新日:2026/10/17
相続手続きの流れと期限|必要書類・相続登記・預貯金の手続きを司法書士が解説
家族が亡くなったとき、遺族は葬儀や各種届出に加え、預貯金の解約、不動産の名義変更、遺産分割協議など、さまざまな相続手続きを進める必要があります。
しかし、相続手続きは日常的に行うものではないため、「何から始めればよいのかわからない」「必要な書類がそろわない」「兄弟間で話し合いがまとまらない」と悩む方も少なくありません。
相続手続きには、相続放棄の原則3か月、相続税の申告・納税の10か月、相続登記の原則3年など、それぞれ異なる期限があります。
手続きの順番を誤ったり、期限を見落としたりすると、思わぬ不利益につながる可能性があります。
この記事では、練馬区の司法書士事務所センスが、相続手続きの全体的な流れ、必要書類、各手続きの期限をわかりやすく解説します。
さらに、実務上つまずきやすいポイントや、相続手続きの相談で問題になりやすいケースも紹介します。
相続手続きの全体的な流れ
相続手続きは、一般的に次のような順序で進めます。
- ①死亡届などの必要な届出を行う
- ②遺言書の有無を確認する
- ③相続人を調査・確定する
- ④相続財産と借金などの債務を調査する
- ⑤相続放棄や限定承認を検討する
- ⑥相続人全員で遺産分割協議を行う
- ⑦不動産、預貯金、株式、生命保険などの手続きを行う
- ⑧必要に応じて相続税の申告・納税を行う
ただし、すべての手続きをこの順番どおりに完了させなければならないわけではありません。
相続放棄の検討や期限のある手続きは、財産調査や遺産分割協議と並行して進める必要があります。
特に、借金がある可能性がある場合や、相続税の申告が必要になりそうな場合は、早めに状況を確認しましょう。
1. 家族が亡くなった直後に行う手続き
死亡届などの提出
家族が亡くなった場合、まず死亡届などの必要な届出を行います。死亡届は、原則として死亡の事実を知った日から7日以内に提出します。
葬儀や火葬の手続きと並行して、健康保険、年金、公共料金など、必要な届出や契約変更も確認しましょう。
この段階では、すぐにすべての相続手続きを完了させる必要はありません。まずは必要な届出を行い、亡くなった方の財産や契約関係を把握するための準備を進めます。
遺言書の有無を確認する
次に、亡くなった方が遺言書を残していないかを確認します。
遺言書がある場合、財産の分け方や手続きの進め方が変わる可能性があります。
自宅の金庫や重要書類の保管場所を確認するほか、公正証書遺言や法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していないかも調べましょう。
自宅などで自筆証書遺言を発見した場合は、原則として、家庭裁判所での検認が必要です。
ただし、法務局の遺言書保管制度を利用していた自筆証書遺言など、検認が不要な場合もあります。
遺言書を見つけても、自己判断で開封したり、内容を書き換えたりせず、適切な手続きを確認することが重要です。
2. 相続人を調査・確定する
遺産を誰が相続するのかを確定するために、亡くなった方の戸籍謄本や除籍謄本などを収集します。
一般的には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどり、配偶者や子ども、場合によっては直系尊属や兄弟姉妹など、法定相続人を確認します。
戸籍を確認することで、家族が把握していなかった子どもや、過去の婚姻関係などが明らかになる場合もあります。
⚠️実務上つまずきやすいポイント
相続人が配偶者と子どもだけだと思っていても、戸籍を調べると、前婚の子どもがいることが判明するケースがあります。
このような場合、遺産分割協議には原則として、その方も参加する必要があります。家族同士で話し合いを始めてから相続人の漏れが判明すると、協議をやり直さなければならない可能性があります。
また、相続人が遠方に住んでいたり、長年連絡を取っていなかったりする場合には、連絡先の確認や書類のやり取りに時間がかかることもあります。
相続人の調査は、相続手続き全体の土台になる重要な作業です。
3. 相続財産と借金を調査する
相続人を確認したら、亡くなった方が所有していた財産と債務を調査します。
主な調査対象は次のとおりです。
- ✅預貯金、定期預金
- ✅土地、建物、マンションなどの不動産
- ✅株式、投資信託などの有価証券
- ✅生命保険やその他の保険契約
- ✅自動車、貴金属などの動産
- ✅借入金、未払金、保証債務など
不動産については、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書などを確認します。預貯金については、通帳や金融機関からの通知などを手掛かりに調査します。
財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナスの財産も確認することが大切です。
⚠️財産調査で注意したいこと
亡くなった方が複数の金融機関を利用していた場合、手元の通帳だけではすべての預貯金を把握できないことがあります。また、古い不動産が先代の名義のまま残っている場合もあります。
財産の全体像がわからないまま遺産分割を進めると、後から財産が見つかり、協議をやり直すことになる可能性があります。
不動産については、亡くなった方の名義になっているかだけでなく、共有持分や担保権などの登記内容も確認しましょう。
4. 相続放棄を検討する場合は3か月以内に判断する
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などの債務も問題になります。
借金が多い場合などには、相続放棄を検討することがあります。
相続放棄は、原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。この期間は「熟慮期間」と呼ばれます。
財産や債務の調査が終わらず、3か月以内に判断できない場合には、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てられることがあります。
実務上の注意点
「借金がありそうだから、何も手をつけずに様子を見よう」と考えていても、期限は自動的に延長されません。
また、相続財産を処分するなど、一定の行為をした場合には、単純承認とみなされる可能性があります。
相続放棄を検討しているときは、預貯金の引き出しや財産の処分を自己判断で行わず、早めに専門家へ相談しましょう。
相続放棄の期限や手続きについて詳しく知りたい方は、当事務所の相続放棄に関する解説もご覧ください。
5. 遺産分割協議を行う
遺言書がなく、複数の相続人がいる場合、相続財産をどのように分けるかについて話し合う必要があります。
この話し合いを「遺産分割協議」といいます。協議が成立したら、その内容を遺産分割協議書にまとめるのが一般的です。
遺産分割協議書には、誰がどの財産を取得するのかを具体的に記載します。
不動産であれば、所在地や地番、家屋番号などを登記事項証明書と照合して記載することが重要です。
話し合いがまとまらない場合
相続人同士の意見が一致しない場合や、連絡が取れない相続人がいる場合には、遺産分割協議が長引くことがあります。
相続人全員の合意が必要なため、一人でも協力が得られない場合には、手続きが進まなくなることがあります。
話し合いが難しい場合には、家庭裁判所での遺産分割調停などを検討することもあります。
相続人間に深刻な対立がある場合は、弁護士への相談が必要になるケースもあります。
なお、相続税の申告期限は、遺産分割協議がまとまらないことだけを理由に延長されるわけではありません。
申告が必要な場合は、期限内の対応を税理士などに確認しましょう。
6. 不動産の名義変更(相続登記)を行う
亡くなった方が土地や建物を所有していた場合、相続による所有権移転登記、いわゆる相続登記を行います。
相続登記を行うことで、不動産を取得した相続人が登記簿に記録されます。相続した不動産を売却したり、担保に入れたりする場合にも、登記内容を整えておくことが重要です。
相続登記の主な流れ
- ①登記事項証明書などで不動産の内容を確認する
- ②戸籍謄本などを集めて相続人を確定する
- ③遺言書の内容や遺産分割協議の結果を確認する
- ④登記申請に必要な書類を作成・収集する
- ⑤法務局へ相続登記を申請する
- ⑥登記完了後、新しい登記内容を確認する
相続登記に必要な書類は、遺言書があるかどうか、遺産分割協議を行うかどうか、相続人の住所や氏名に変更があるかなどによって異なります。
相続登記は義務化されている
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
不動産を相続で取得したことを知った相続人は、原則として、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。遺産分割によって不動産を取得した場合には、遺産分割成立後の登記についても別途期限があります。
正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
また、2024年4月1日より前に発生した相続であっても、未登記の不動産は義務化の対象になる場合があります。
詳しくは、法務省の「相続登記の申請義務化について」をご確認ください。
当事務所の関連ページ:相続登記の義務化について
7. 預貯金の解約・名義変更を行う
亡くなった方名義の預貯金については、金融機関ごとに相続手続きを行います。
一般的には、金融機関所定の相続届、戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などを提出します。必要書類は金融機関や相続の状況によって異なります。
⚠️実務上つまずきやすいポイント
金融機関ごとに必要書類や書式が異なるため、複数の銀行に口座がある場合は、それぞれの手続きを整理する必要があります。
また、遺産分割協議書の記載内容が不明確だったり、戸籍などの必要書類が不足していたりすると、書類の追加提出を求められることがあります。
預貯金の手続きは、相続登記と並行して進められることもあります。早めに金融機関へ連絡し、必要書類を確認しましょう。
関連ページ:預貯金の名義変更について
8. 生命保険金の請求を行う
亡くなった方が生命保険に加入していた場合、契約内容を確認し、保険会社へ死亡保険金を請求します。
死亡保険金は、契約上の受取人が指定されている場合、その受取人が請求するのが原則です。
必ずしも相続人全員で分ける財産になるとは限りません。
ただし、保険契約の内容や保険料を負担していた人、被保険者、受取人の関係によって、税金の取扱いが変わる場合があります。
保険証券や保険会社からの通知を確認し、請求に必要な書類や期限を早めに確認しましょう。
関連ページ:生命保険金の請求方法と必要書類
9. 株式やその他の財産の名義変更を行う
亡くなった方が株式や投資信託などを保有していた場合には、証券会社や株式の発行会社などで相続手続きを行います。
上場株式などは、証券会社の案内に従って必要書類を提出し、相続人名義の口座への移管などを進めます。
非上場株式の場合は、株主名簿の確認や会社への連絡など、個別の対応が必要になることがあります。
会社経営に関係する株式では、議決権や事業承継への影響も考慮しなければなりません。
株式以外にも、自動車や会員権など、名義変更や解約が必要な財産がないか確認しましょう。
関連ページ:株式の名義変更について
10. 相続税の申告・納税を行う
相続財産の額などによっては、相続税の申告・納税が必要になります。
相続税の申告期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。通常は、亡くなった日の翌日から数えて10か月以内となります。
相続税の基礎控除額は、原則として次の計算式で求めます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人であれば、基礎控除額は4,800万円です。
ただし、相続税の対象となる財産の評価や、債務・葬式費用、各種特例の適用などによって、実際の課税関係は変わります。基礎控除額以下であっても、特例の適用状況などによって確認が必要な場合があります。
相続税の申告が必要かどうか、税額がいくらになるかについては、税理士に相談することをおすすめします。
参考:国税庁「相続税がかかる場合」
相続手続きでよくあるご相談事例
事例1:祖父名義の不動産が残っており、売却できない
当事務所のウェブサイトで紹介している事例では、祖父名義の土地と建物が長年そのままになっており、祖父母や父母も既に亡くなっていたため、相続人が複数世代にわたっていました。
不動産を売却しようとしたものの、祖父名義のままで、どのように手続きを進めればよいかわからないという状況でした。さらに、相続人の一人とは長年連絡を取っておらず、連絡先もわからない状態でした。
そこで、戸籍を収集して相続人を確認し、疎遠だった相続人の住所を調査しました。
その後、遺産分割協議への協力をお願いし、相続人全員で話し合いができるように進めました。
最終的には遺産分割協議がまとまり、相続登記を行ったうえで、不動産の売却手続きへ進むことができました。
この事例からわかるのは、相続登記を長期間放置すると、相続人が増え、連絡や合意形成に時間がかかる可能性があるということです。
事例2:相続人同士で連絡が取れず、手続きが進まない
相続手続きでは、相続人が遠方に住んでいたり、長年交流がなかったりすることがあります。
このような場合、最初から無理に話し合いを進めようとするよりも、まず戸籍などで相続人を確定し、連絡先を調査することが重要です。
また、相続人の中に認知症などで判断能力が不十分な方がいる場合には、遺産分割協議の進め方について別途検討が必要になることがあります。
相続人の状況に応じて、司法書士や弁護士などの専門家へ相談することで、適切な手続きの方向性を整理しやすくなります。
※上記は、相続手続きで問題になりやすい状況を一般化した説明です。
相続手続きをスムーズに進めるためのチェックリスト
相続手続きに着手するときは、次の項目を確認しておきましょう。
- ✅遺言書があるか確認した
- ✅亡くなった方の戸籍を集め、相続人を確定した
- ✅預貯金、不動産、株式などの財産を調査した
- ✅借金や保証債務などの有無を確認した
- ✅相続放棄を検討する必要がないか確認した
- ✅相続人全員で遺産分割協議を行った
- ✅不動産の相続登記を進めている
- ✅預貯金や株式、生命保険などの手続きを確認した
- ✅相続税の申告が必要か確認した
- ✅各手続きの期限を把握した
すべてを一度に終わらせる必要はありませんが、期限のある手続きを優先し、全体の進捗を整理しておくことが大切です。
相続手続きでお困りの方は司法書士事務所センスへ
相続手続きは、戸籍の収集、相続人の確定、遺産分割協議、不動産の名義変更など、多くの作業を伴います。
特に、相続人が多い場合や、先代名義の不動産が残っている場合、相続人と連絡が取れない場合などは、手続きが複雑になりやすくなります。
司法書士事務所センスでは、相続登記をはじめとする相続手続きについてご相談をお受けしています。
- ✅何から始めればよいかわからない
- ✅相続登記に必要な書類を集められない
- ✅疎遠な相続人がいて手続きが進まない
- ✅古い名義の不動産を相続した
- ✅預貯金や不動産など、複数の相続手続きを整理したい
このようなお悩みがある方は、早めに専門家へご相談ください。
相続手続きは、状況を整理して優先順位を決めることが第一歩です。期限を確認しながら、一つずつ確実に進めていきましょう。
※相続税の申告や税額計算は、財産の内容や個別の事情によって異なります。税務上の具体的な判断については税理士または税務署にご確認ください。
この記事を書いた専門家
- 司法書士事務所センス 代表
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。
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