遺言の失敗事例 実際に起きたケース
最終更新日:2024/11/18
子供が親を他の人に接触させないようにしていた事例
真山さん(仮名)は、子供の一人であるAと一緒に暮らしていました。
Aは、他の兄弟たちが真山さんに会ったり、旅行や買い物に連れて行くことを強く拒否し、「会うときは必ず自分を通すように」と強く主張していました。
他の兄弟たちは、Aの態度を不自然に感じてはいましたが、母親も元気そうだし黙認していました。
しかし真山さんが亡くなった後にその理由が明らかになったのです。
真山さんは、Aに全財産を相続させるという内容の自筆証書遺言を作成しており、Aはそれを知っていたため、真山さんが新たな遺言を作成するのを阻止しようとしていたのです。
真山さんが亡くなった後、他の兄弟たちは遺産調査や遺留分減殺請求に多大な労力を費やすことになってしまいました。
このように、なんらかの予兆や独り占めなどを考えているような相続人がいる場合には、専門家に相談して進めないとたいていの場合に平穏に相続は終了しません。
結局は、この兄弟も不仲になってしまい、この先長い人生で、ずっとお互いを恨まなくてはいけなくなってしまいます。
こんな残念なことはほかにありません。
早い段階で、専門的知識を持つ司法書士などに相談するのが最善の方法と言えるでしょう。
遺言を残していなかったばかりに思い通りの相続が出来なかった事例
私(高野)の兄、洋介は妻子と長年別居しており、近所に住む姉の雅子と私が洋介の生活を面倒見ていましたので、妻子には相続させず、雅子と私に遺産を相続させたいと生前話しておりました。
しかし、洋介は遺言を残すことなく、他界してしまいました。
そして、遺言がないばっかりに、私と雅子は洋介の遺産を相続することなく、洋介が財産を渡したくないと考えていた妻や子供に全ての遺産が渡ってしまいました。
遺産分割協議後、専門家に話を聞くと、「妻子の遺留分が存在するので、遺産全部を渡さないことは不可能だが、遺言に一言『雅子と私にも相続をさせる旨』を記しておけば、遺贈という形式で遺産は相続できました。」と話してくれました。
この話を聞き、相続して欲しい人に相続させられず、相続させたくない人に財産が渡ってしまい、洋介がかわいそうでなりません。
私は洋介に遺言を書かせなかったことを心から後悔しています。
隠されてしまった遺言
田中さんは生涯を通じて成功した実業家で、家族を大切にし特に孫の未来を心配していました。
田中さんは、自分の死後に家族が争わないようにと、詳細な遺言書を作成しました。しかし、彼はこの遺言書を自宅の金庫に隠し、家族にはその存在を知らせませんでした。
田中さんが亡くなった後、家族は遺言書の存在を知らず、遺産の分配を巡って激しい争いが始まってしまいました。
兄弟姉妹は互いに不信感を抱き、家族の絆は次第に崩れていきました。
数ヶ月後、田中さんの家を整理していた孫が偶然金庫を見つけ、中に遺言書があることを発見しました。
遺言書には、田中さんの明確な意志が記されており、家族全員に公平に遺産を分配する内容が書かれていました。
しかし、既に家族の間には深い溝ができており、遺言書が見つかった後も関係修復は容易ではありませんでした。
田中さんの意図とは裏腹に、遺言書の存在を知らせなかったことが家族の不和を招いてしまったのです。
遺言書の存在を家族に知らせることの重要性を教えてくれますね。遺言書を作成するだけでなく、その存在を信頼できる人に伝えることも大切です。
二重の遺言
佐藤さん(仮名)は家族のために遺言書を作成し、弁護士に保管を依頼しました。
しかし、数年後に佐藤さんは新しい遺言書を作成し、古い遺言書を更新することを忘れてしまいました。
佐藤さんが亡くなった後、家族は弁護士から古い遺言書を受け取りました。その内容に従って遺産の分配を進めていたところ、佐藤さんの自宅から新しい遺言書が見つかりました。新しい遺言書には、古い遺言書とは異なる分配方法が記されていました。 家族はどちらの遺言書が有効なのかを巡って法廷で争うことになりました。裁判は長引き、遺産の分配は遅れ、家族の間には不信感が広がりました。最終的に裁判所は新しい遺言書を有効と判断しましたが、家族の関係は修復不可能なほどに壊れてしまいました。 このストーリーは、遺言書を更新する際には古い遺言書を無効にする手続きを忘れないことの重要性を教えてくれますね。遺言書の管理は慎重に行う必要があります。
誤解された遺言
山田さん(仮名)は生前、家族に対する感謝の気持ちを込めて遺言書を作成しました。
山田さんは特に長男に感謝しており、長男に家族の家を相続させることを決めました。
しかし、山田さんは遺言書に具体的な理由を書かず、ただ「長男に家を相続させる」とだけ記しました。
山田さんが亡くなった後、家族は遺言書を読みました。
長男以外の兄弟たちは、なぜ長男だけが家を相続するのか理解できず、不満を抱きました。
彼らは山田さんが長男を特別扱いしていると感じ、家族の間に緊張が生まれました。実際には、長男は山田さんの晩年に最も多くの時間を共に過ごし、介護をしていたため、山田さんは感謝の気持ちを込めて家を相続させたかったのです。しかし、その理由が遺言書に明記されていなかったため、家族は誤解し、争いが生じました。
最終的に、家族は弁護士を通じて話し合いを行い、長男が家を相続することに同意しましたが、家族の関係は以前のようには戻りませんでした。
この事例によって遺言書に具体的な理由や背景を記載することの重要性を再認識させられました。
遺言書を作成する際には、家族が誤解しないように配慮することが大切です。
自己流の遺言書
田中さんは、自分の死後に家族が争わないようにと、遺言書を作成することに決めました。
しかし、田中さんは法律の専門家に相談せず、自分で遺言書を書いてしまったのです。
田中さんの遺言書には、彼の財産をどのように分配するかが詳細に記されていましたが、いくつかの重要な点が抜けていました。
例えば、彼の銀行口座や株式の詳細が記載されていなかったのです。
また、遺言書には証人の署名がなく、法的に有効な形式を満たしていませんでした。
田中さんが亡くなった後、家族は遺言書を見つけましたが、その内容にかなり混乱しました。
遺言書が法的に無効であることが判明し、家族は財産の分配を巡って争い始めてしまったのです。
兄弟姉妹の間での対立は激化し、最終的には裁判沙汰にまで発展してしまいました。
遺言書を作成する際には専門家の助けを借りることの重要性が痛感させられる事例です。
相続人たちは田中さんの意志を尊重しつつ、家族全員が納得できる形で財産を分配する方法を見つける他ありません。
こんなにも揉めるなら、最初から遺言書の作成において法的な助言を受ける事が重要でしょう。
自発遺言の正しい書き方はこちらのページを参考にして下さい。
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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