遺言のQ&A よくある質問
最終更新日:2024/11/28
目次
- 1 Q 遺言書の内容を変更できますか?
- 2 Q 自筆証書遺言の作り方は?
- 3 Q 公正証書遺言の際、準備するものはなんでしょうか?
- 4 Q 遺言書を書き損じた時は?
- 5 Q 遺言は誰でも作成できるのでしょうか?
- 6 Q 遺言書が見つかったらどのような手続きが必要でしょうか?
- 7 Q 数通の遺言書がでてきたらどの遺言書に沿って遺言を執行すればいいのでしょうか?
- 8 Q パソコンで自筆証書遺言をつくれますか?
- 9 Q 遺言の保管はどうしたらいいでしょうか?
- 10 Q 法定相続分と異なった内容の遺言がある場合どちらが優先されるでしょうか?
- 11 Q 亡くなった父が公正証書遺言を残したらしいのですが見つかりません。何か探す方法はないでしょうか?
- 12 Q 自筆遺言書が偽造された疑惑がある場合はどのような対処をするべきですか?
- 13 Q 遺言書に遺言執行者の指定がない場合はどういったことが考えられるでしょうか?
- 14 Q 夫婦が一緒に1通の遺言書で遺言するのは有効な遺言書になるでしょうか?
- 15 Q 相続人に対する「遺贈する」と「相続させる」との違いはなんですか?
- 16 参考リンク
Q 遺言書の内容を変更できますか?
A はい、遺言書の内容は変更できます。
遺言者の最終意思を尊重する趣旨から、遺言者が生存している限り内容の変更(撤回・修正)が可能です。
遺言書の種類によって変更方法が異なりますが、一般的には以下の手順が必要です。
自筆証書遺言の場合
自分で変更することができますが変更箇所に署名と押印が必要です。
家庭裁判所での「検認」が必要です。
公正証書遺言の場合
公証役場で公証人の立会いのもとで変更します。 検認手続きは不要です。
公正証書遺言を自筆証書遺言で変更・取消しすることも出来ます。
秘密証書遺言の場合
公証役場で証明を受けた後、変更箇所を明記して新たに作成します。
Q 自筆証書遺言の作り方は?
A 遺言者が、遺言書の全文・日付及び氏名を自書しこれに押印します。
全文を自筆で書く
遺言書の本文はすべて自筆で書く必要があります。
パソコンや代筆は認められていません。
ただし、財産目録はパソコンで作成しても構いません。
日付を明記する
遺言書の作成日を正確に記入します。
「○月吉日」などの曖昧な表記は無効です。
署名と押印
遺言者の署名と印鑑を押します。
印鑑は認印でも構いませんが、実印の方が望ましいです。
財産目録の作成
財産目録はパソコンも作成できます。通帳のコピーや不動産の登記簿などを添付することもできますが、すべてのページに署名と押印が必要です。
秘密保持のため遺言書は封筒に入れて封印しましょう。
自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所に申し出て「検認」の手続きをうけなければなりません。
※詳しい自筆遺言書の作り方はこちらをご覧ください。
Q 公正証書遺言の際、準備するものはなんでしょうか?
A 以下のものを準備します。
- ① 本人の実印と印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- ② 戸籍謄本(遺言者と相続人の続柄がわかるもの)
- ③ 財産をもらう人の住民票(相続人以外の人に遺贈する場合)
- ④ 土地・建物の登記簿謄本・固定資産評価証明書
- ⑤ 証人の住民票等
Q 遺言書を書き損じた時は?
A 訂正することができますが、加除訂正の仕方は非常に厳格で複雑です。
訂正の仕方を誤ると訂正の効力が生じません。
最悪の場合遺言全部が無効となりかねませんので、新たに遺言書を作り直すことをお勧めします。
※訂正のやり方はこちらをご覧ください。
Q 遺言は誰でも作成できるのでしょうか?
A 民法は満15歳以上の者が遺言をすることができると規定しています。よって15歳以上であれば未成年者でも遺言をすることができ、成年被後見人でも遺言をすることが出来ます。
意思能力
遺言書を作成する時点で、遺言者が自分の意思を明確に表現できる能力が必要です。認知症などで意思能力が欠けている場合は無効となる可能性があります。
成年被後見人が遺言をするのも、その時点で一時的に事理弁識能力を回復している必要があり、医師2名以上の立会いが必要です。
なお、正常な精神状態で遺言した者がその後心神喪失状態になって死亡しても遺言は有効です。
Q 遺言書が見つかったらどのような手続きが必要でしょうか?
A 自発遺言書の場合は、遅滞なく家庭裁判所にその遺言書を持って行き、検認の申立をしなければなりません。公正証書遺言の場合は検認手続きが不要です。
なお、検認の申立をしなかったり故意に遺言書を開封したりすると5万円以下の過料に処せられます。
絶対に開封しないで家庭裁判所へ提出する
遺言書が封印されている場合、勝手に開封してはいけません。
すぐに家庭裁判所に提出し、検認を請求します。
開封は家庭裁判所で行われる「検認手続き」で正式に行われます。
検認手続き
検認手続きは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせると同時に、遺言書の偽造・変造を防ぎ保存を確実にするために行います。
そのため、この検認手続きを経ても遺言が有効であると判断されるものではありません。
検認の際には、遺言書の形状や内容が確認され、相続人全員に通知されます。なお、検認の申立をしなかったり故意に遺言書を開封したりすると5万円以下の過料に処せられます。
遺言執行
検認が完了したら、遺言書の内容に従って遺産分割や相続手続きを進めます。
遺言執行者が指定されている場合、その人が手続きを行います。
Q 数通の遺言書がでてきたらどの遺言書に沿って遺言を執行すればいいのでしょうか?
A 基本的に、最新の日付の遺言書が優先されます。
遺言は「最終の意思」を示すものとされているため、日付が新しい遺言書が古い遺言書を撤回したとみなされます。
内容を確認する
複数の遺言書の内容が矛盾していない場合、すべての遺言書が有効となることがあります。
例えば、古い遺言書で「土地はAに相続させる」とあり、新しい遺言書で「現金はBに相続させる」と書かれている場合、内容が抵触しないため、両方の遺言書が有効です。
形式を確認する
すべての遺言書が法律上の要件を満たしているか確認します。
形式的に無効な遺言書は、たとえ日付が新しくても無効となります。
Q パソコンで自筆証書遺言をつくれますか?
A 自筆証書遺言の本文は、法律によりすべて自筆で書く必要があります。
パソコンで作成することはできません。
ただし、財産目録については、2019年の法改正により、パソコンで作成することが認められています。
財産目録をパソコンで作成する場合でも、各ページに署名と押印が必要です。
Q 遺言の保管はどうしたらいいでしょうか?
A 相続人が保管するのケースが一番多いです。
費用がかからず、内容を他人に知られないメリットがありますが、デメリットとしては、紛失、破損、変造、破棄、隠匿のリスクがあります。
また、相続人が発見できない可能性もあります。その為最近は貸し金庫に保管する遺言者も多いようです。
1番おすすめなのは自筆証書遺言書保管制度という新しい制度で、料金を払えば法務局が自筆遺言書を預かってくれます。
遺言書の紛失や破損のリスクを大幅に減らし、検認手続きも不要になるため、安心して利用できる方法です。
どの方法が最適かは、個々の状況やニーズによりますので、慎重に検討してください。
Q 法定相続分と異なった内容の遺言がある場合どちらが優先されるでしょうか?
A 被相続人の最終の意思を尊重するため、遺言書の内容が法定相続分よりも優先されます。
ただし、遺言書の内容が特定の相続人にとって不利益となる場合、その相続人は遺留分を請求する事ができます。
遺留分とは、法律で保障された最低限の相続分のことです。
遺留分を侵害する遺言書であっても、それ自体が無効になるわけではありませんが、遺留分を請求することで最低限の取り分を確保する事ができます。
Q 亡くなった父が公正証書遺言を残したらしいのですが見つかりません。何か探す方法はないでしょうか?
A 全国の公証役場で、公正証書遺言の有無を検索することができます。
この検索は日本公証人連合会が管理する「遺言情報管理システム」を利用するもので、平成元年(1989年)以降に作成された公正証書遺言が対象です。
必要書類の準備する
遺言者が死亡した事実を証明する書類(除籍謄本など)
遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本
申出人の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証などの顔写真付き公的身分証明書)
公証役場への申出をする
上記の必要書類を持参して、お近くの公証役場に遺言検索を依頼します。
検索は無料で行われます。
遺言書が見つかった場合、その内容を確認するために閲覧や謄本の交付を請求する事ができます。
閲覧には手数料がかかります。
Q 自筆遺言書が偽造された疑惑がある場合はどのような対処をするべきですか?
A たとえ偽造の疑いがあってもまずは検認
遺言書が自筆証書遺言の場合、まず家庭裁判所で検認手続きを行います。
検認手続きは、遺言書の存在と内容を確認するためのもので、遺言書の有効性を判断するものではありません。
筆跡鑑定や証拠を集める
遺言書が偽造された可能性がある場合、筆跡鑑定を依頼することが有効です。
専門の鑑定人が遺言書の筆跡を分析し、偽造の有無を判断します。
また、偽造を証明するために、遺言者の生前の様子や遺言書の作成状況に関する証拠を集めることも重要です。
例えば、遺言者が使わない道具や言葉遣いが含まれている場合などです。
調停申立をする
次に、家庭裁判所に遺言無効確認の調停申立をします。
(調停が成立しない場合)遺言無効確認訴訟
もし、当事者間で、この調停の合意が成立しない時又は家庭裁判所が審判をしない時は、「遺言無効確認訴訟」を地方裁判所に提起します。
この訴訟では、遺言書が偽造されたことを証明し、遺言書の無効を主張します。
刑事告発も可能
遺言書の偽造は刑法上の犯罪行為です。偽造が明らかになった場合、警察に対して「有印私文書偽造罪」や「同行使罪」で刑事告発を行う事ができます。
もしも疑いがある場合は、速やかに専門家に相談しましょう。
Q 遺言書に遺言執行者の指定がない場合はどういったことが考えられるでしょうか?
A 遺言書に遺言執行者の指定がない場合、いくつかの問題が考えられます。
相続手続きを進める際に相続人全員の同意や署名が必要になる場合があり、相続人間で意見が対立し、遺産分割がスムーズに進まない可能性があります。
遺言の内容に不満を持つ相続人がいる場合は、手続きがさらに複雑化する恐れもあります。
また、金融機関によっては、遺言執行者がいない遺言書では手続きを受け付けない場合があります。
この場合、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらう必要があります。
遺言執行者を家裁へ申立てる
遺言執行者が必要な場合には相続人・利害関係人等は家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任を申立てることができます。
遺言執行者が決まれば遺言の内容を実現するための手続きを進めることができます。
もし遺言執行者が指定されていない場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
Q 夫婦が一緒に1通の遺言書で遺言するのは有効な遺言書になるでしょうか?
A 日本の民法では、夫婦が共同で一通の遺言書を作成することは無効とされています。
具体的には、民法第975条において「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない」と規定されています。
遺言は個人の自由な意思で作成・撤回できるものでなければならないためです。
夫婦が共同で遺言書を作成すると、一方が撤回したい場合に自由に撤回できなくなる可能性があるため、法律で禁止されています。
したがって、夫婦で遺言書を作成する場合は、それぞれ別々の遺言書を作成する必要があります。
Q 相続人に対する「遺贈する」と「相続させる」との違いはなんですか?
A「遺贈する」と「相続させる」には、いくつかの重要な違いがあります。
対象者の違い
相続させるという文言は、法定相続人に対して使われます。
例えば、「長男に不動産を相続させる」といった具合です。
遺贈するという文言は相続人以外の第三者にも使うことができます。
例えば、「友人に預金を遺贈する」といった具合です。
手続きの違い
相続させる文言の場合、相続人が単独で相続登記(不動産の名義変更)を行うことができます。
遺贈する文言の場合受遺者(遺贈を受ける人)が相続登記を行う場合、他の相続人全員の同意が必要になる事があります。
法的効果の違い
「相続させる」ですと、相続人が単独で登記の申請をすることができます。
遺言者の死亡と同時に、相続人に財産が直接移転します。
「遺贈する」ですと、遺言者の死亡後、遺贈の手続きを経て財産が移転します。
そのためには相続人全員(或いは遺言執行者)が、受遺者と協力して登記の申請をしなければなりません。
以上の違いを理解して、遺言書を作成する際には適切な文言を選ぶことが重要です。
参考リンク
政府広報オンライン : 知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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