自社株の承継対策
最終更新日:2026/03/11
自社株の承継対策とは?中小企業経営者が知るべき株価対策と種類株式の活用法を司法書士が徹底解説
中小企業の経営者様にとって、会社を次世代へ引き継ぐ「事業承継」は、経営の総決算とも言える一大プロジェクトです。
その中で、最も頭を悩ませ、かつ最もトラブル(争族や倒産危機)に発展しやすいのが「自社株(経営権)の承継対策」です。
「うちは上場していない小さな会社だから、株なんて紙切れ同然だろう」
「自分が死んだら、自然と長男が会社を継ぐから大丈夫だ」
もしそうお考えであれば、非常に危険です。非上場企業の株式(自社株)は、長年の経営努力によって利益が蓄積されているため、経営者が想像している以上に株価(評価額)が高騰しているケースが多々あります。
何の対策もせずに相続が発生すると、後継者に多額の相続税がのしかかり、最悪の場合は「相続税を払うために会社を売却・清算せざるを得ない」という事態に陥ります。
この記事では、練馬区で累計2,000件以上の相続・事業承継相談を解決してきた「練馬 相続遺言の相談窓口(司法書士事務所センス)」が、自社株の承継において絶対に知っておくべきリスクと、具体的な株価引き下げ対策、そして経営権を死守するための法務対策(種類株式の活用など)を徹底解説します。
目次
そもそも「自社株の承継」にはどんなリスクがあるのか?
自社株には、「会社の支配権(議決権)」という法的な側面と、「財産的価値」という税務的な側面の2つの顔があります。
この二面性が、承継を難しくしている原因です。
具体的には、以下の3つの重大なリスクが存在します。
① 多額の「相続税・贈与税」による資金ショート(黒字倒産リスク)
非上場会社の株式は、市場で簡単に売買して現金化することができません(換金性が低い)。
しかし、税務署は会社の純資産や利益をもとに厳格に株価を評価します。
結果として、「現金はないのに、自社株の評価額だけが数億円になり、数千万円の相続税が課せられる」という事態が起こります。
後継者が個人の貯金から税金を払えなければ、会社から資金を吸い上げるしかなくなり、会社の資金繰りが一気に悪化します。
② 株式の「分散」による経営権の喪失(お家騒動リスク)
経営者が遺言書を残さずに亡くなった場合、自社株は「相続人全員の共有財産」となります。
例えば、後継者である長男だけでなく、会社経営に全く関与していない次男や長女にも株式が法定相続分で分割されてしまったらどうなるでしょうか。
株式の過半数を後継者が握れなければ、株主総会で取締役の選任や重要な決定ができなくなり、最悪の場合は親族から社長の解任を要求される「会社の乗っ取り(お家騒動)」に発展します。
③ 遺留分(いりゅうぶん)を巡る親族間トラブル
「会社を守るために、長男に自社株のすべてを相続させる」という遺言書を書いたとしても安心はできません。
他の相続人(次男や長女)には、法律で最低限保障された遺産取得分である「遺留分」があります。
自社株の評価額が高すぎると、長男が他の兄弟から「遺留分を侵害しているから現金を払え」と請求され、多額の現金を支払わなければならなくなります。
自社株対策の基本ステップ:現状把握から実行まで
これらのリスクを回避し、安全にバトンタッチをするためには、以下の3つのステップで計画的に対策を進める必要があります。
最低でも5年〜10年単位の長期的な計画が必要です。
ステップ1:現在の「自社株の評価額(株価)」を正確に把握する
まずは、「今、自分の会社の株はいくらの価値があるのか?」を知ることがすべての出発点です。
非上場株式の評価方法は、会社の規模(大・中・小)によって異なり、主に以下の方式が組み合わされて計算されます。
類似業種比準方式
事業内容が似ている上場企業の株価をベースに計算する方法。(比較的株価が低く出やすい)
純資産価額方式
会社が今解散したらいくら残るか(総資産から負債を引いた額)で計算する方法。(長年黒字の会社は株価が高騰しやすい)
※株価の算定は非常に複雑なため、税理士による正確なシミュレーションが不可欠です。
当事務所では、提携する相続専門の税理士とともに株価算定からサポートいたします。
ステップ2:自社株の「評価額を下げる」対策を実行する(税務対策)
株価が高いまま後継者に渡すと多額の税金がかかるため、業績が好調な会社ほど、意図的に株価を下げる対策を行います。
役員退職金の支給
現経営者が退任する際、会社から適正な範囲で高額な役員退職金を支給します。
これにより会社の純資産と利益が大きく減少し、同時に株価が劇的に下がります。
経営者個人の老後資金も確保できる一石二鳥の代表的な対策です。
生命保険の活用
会社を契約者として経営者に生命保険をかけ、その保険金を退職金の原資にあてたり、万が一の際の死亡退職金・弔慰金として活用することで、株価の上昇を抑えつつ納税資金を確保します。
(関連ページ:▶︎ [生命保険を活用する~相続対策の切り札~])
不動産の購入(含み損の活用)
現金を賃貸用不動産などの現物資産に換えることで、相続税評価額を圧縮し、間接的に自社株の評価を下げる手法です。
ステップ3:評価が下がったタイミングで「株式を移転」する
株価が最も下がった絶好のタイミングを見計らい、以下のいずれかの方法で後継者へ自社株を移転(バトンタッチ)します。
1. 生前贈与
暦年贈与(年間110万円の非課税枠)や、相続時精算課税制度を活用し、生前に少しずつ、あるいは一気に株式を後継者へ渡します。
2. 譲渡(売買)
後継者が会社から、あるいは現経営者から株式を直接買い取ります。
後継者に資金力がある場合に有効です。
3. 遺言による相続
現経営者が亡くなった際に確実に後継者へ渡るよう、公正証書遺言を作成します。(※この場合、後継者の納税資金を確保しておく必要があります)
【司法書士の切り札】「種類株式」を活用した経営権の防衛
自社株の承継において、「税理士は税金を安くする専門家」ですが、「司法書士は会社のルール(定款)を変え、経営権を法的に守る専門家」です。
その司法書士が提案する最強の法務対策が「種類株式(しゅるいかぶしき)」の活用です。
普通株式とは異なる特別な権利を持たせた株を発行することで、経営者の細かなニーズに応えることができます。
① 拒否権付株式(黄金株)〜引退後も会社を見守る〜
「株式はすべて後継者(息子)に贈与して税金対策を済ませたいが、息子はまだ若く、経営を完全に任せるのは不安だ」という場合に使われます。
現経営者がこの「黄金株」を1株でも持っていれば、株主総会の重要な決議(会社の合併や取締役の解任など)に対して「拒否権」を発動できます。実質的な支配権を維持しながら、財産の移行を進めることができる強力な手法です。
② 無議決権株式(議決権制限株式)〜兄弟間の争いを防ぐ〜
「長男に会社を継がせるが、次男にも財産として自社株を少し分けてあげたい。でも、次男に経営に口出しされると困る」という場合に最適です。
次男には「配当金はもらえるが、株主総会での議決権(発言権)はない」という株式を渡します。
これにより、経済的な平等を保ちつつ、長男の経営権(意思決定のスピード)を守ることができます。
③ 取得条項付株式〜株式の外部流出を防ぐ〜
もし、株を持たせたまま次男が急死してしまった場合、その株は次男の配偶者(会社とは無関係の人物)に相続されてしまいます。
これを防ぐため、「特定の事由(死亡など)が発生した場合は、会社が強制的にその株式を買い取ることができる」というルールを付けた株式です。
種類株式の発行には、株主総会の特別決議や定款の変更、そして法務局への登記手続きが必要不可欠です。
これらは司法書士の独占業務であり、当事務所の最も得意とする分野です。
(関連ページ:▶︎ [事業承継の切り札!種類株式を活用して経営権を円滑にバトンタッチ])
国の強力な支援制度「事業承継税制」とは?
「自社株の評価が高すぎて、どう対策しても多額の税金が払えない!」という中小企業を救うため、国が用意した特例制度が「事業承継税制(法人版)」です。
事業承継税制の圧倒的なメリット
都道府県知事の認定を受けるなどの一定の要件を満たすと、後継者が取得した自社株にかかる贈与税・相続税の納税が「100%猶予(実質ゼロ)」になります。
資金繰りの悪化を気にすることなく、一気に株式を後継者へ移転できるため、現在多くの中小企業で活用されています。
事業承継税制の「恐ろしい落とし穴」
一見すると夢のような制度ですが、安易な飛びつきは禁物です。
✅ あくまで「猶予」であり「免除」ではない
後継者が将来、勝手に会社を辞めたり、株式を売却したりすると、猶予されていた多額の税金に利息(利子税)を上乗せして一括納付しなければならないというペナルティがあります。
✅ 毎年の厳しい報告義務
制度を利用した後も、税務署や都道府県に対して長期間にわたり報告書を提出し続ける手間がかかります。
この制度を利用すべきかどうかの見極めは、専門家による慎重な判断が必要です。
【公的機関の参考リンク(外部リンク)】
遺留分対策には「経営承継円滑化法」の民法特例を
前述した「長男に株を集中させると、次男から遺留分を請求されるリスク」を法的に解決する手段もあります。
それが、経営承継円滑化法に基づく「遺留分に関する民法の特例」です。
後継者と、それ以外の推定相続人(兄弟など)が全員で合意し、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可を得ることで、以下のルールを適用できます。
• 除外合意
生前贈与された自社株を、遺留分を計算する際の財産から「完全に除外」する。
• 固定合意
生前贈与された自社株の評価額を、「贈与時の低い株価のまま固定」する。(将来株価が上がっても、遺留分の請求額が増えない)
これにより、後継者は「将来、他の兄弟からいくら請求されるか分からない」という恐怖から解放され、安心して経営に専念することができます。
自社株対策で絶対にやってはいけない「失敗事例」
最後に、当事務所に相談に駆け込んでこられた方の「よくある失敗事例」を2つご紹介します。反面教師としてご確認ください。
【失敗事例1】名義株(めいぎかぶ)の放置
昔の会社法では、株式会社を設立するために「発起人が7人以上」必要でした。そのため、名前だけを借りて親戚や友人を株主として登記している会社が多くあります(名義株)。
これを放置したまま代替わりすると、「いや、あの株は本当に私のものだ」と権利を主張されたり、名義人が亡くなって行方不明の相続人に株が渡ってしまったりと、収拾がつかなくなります。
承継前に、司法書士を入れて名義株を整理することが急務です。
【失敗事例2】とりあえず兄弟で「平等」に分ける
「兄弟仲が良いから、長男・次男・三男で33%ずつ株を分けよう」というのは最悪の選択です。
将来、兄弟の誰かが亡くなると、その配偶者や子供(甥や姪)に株が細かく分散していきます。世代が下るごとに権利関係が複雑になり、誰も会社の意思決定ができなくなる「デッドロック状態」に陥り、会社は事実上倒産に向かいます。
自社株は、原則として「後継者1人に集中させる」のが鉄則です。
練馬区での自社株対策・事業承継は「当事務所」へお任せください
自社株の承継対策は、税金(株価対策)と法律(経営権の確保・定款変更)の両輪を同時に回さなければ成功しません。
税理士だけ、あるいは弁護士だけに相談しても、片手落ちになってしまうことが多いのが実情です。
練馬 相続遺言の相談窓口(司法書士事務所センス)では、事業承継に強い税理士・弁護士と強固なチーム(提携)を組んでおり、当事務所が窓口となることで「税金対策」から「種類株式の発行(登記)」「遺言書の作成」まで、完全ワンストップでサポートが可能です。
(関連ページ:▶︎ [税理士・弁護士・社労士と連携!!相続のトータルサポート])
「自分の会社の株価がいくらか分からない」「子供へ会社を譲る準備を始めたいが、何から手をつけていいか分からない」という経営者様は、手遅れになる前に、ぜひ当事務所の「初回無料相談(90分)」をご利用ください。
会社の未来とご家族の幸せを守るため、相続・事業承継のスペシャリストが全力で伴走いたします。
この記事を書いた専門家
- 司法書士事務所センス 代表
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。
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