遺産分割協議の失敗事例 実際におきたケースをご紹介

最終更新日:2024/10/21

遺産分割協議後、共有持分を売買する時に余計な税金がかかってしまったケース

両親が残した自宅を、兄のたかしさん(仮名)と妹のゆみこさん(仮名)が相続しました。

現在、その自宅にはたかしさん一家が住んでいます。

相続時の持分割合は、たかしさんが4分の3、ゆみこさんが4分の1でした。

しかし、数年後、自宅の老朽化が進み、建て替えを検討する事になりました。

ところが、土地がゆみこさんとの共有のままでは、抵当権の設定にゆみこさんの承諾が必要であることが判明しました。

最終的に、たかしさんはゆみこさんの土地持分を1000万円で買い取ることにしました。

その結果、以下のような経費が発生してしまいました。

  • たかしさんの負担:土地購入代金1000万円、不動産取得税、登録免許税
  • ゆみこさんの負担:土地売却に伴う譲渡所得税

ゆみこさんは兄妹の間柄なので「もっと安くてもいい」と思っていましたが、兄妹間の売買の場合、時価で売買しないと贈与税がかかる恐れがあるため、時価での売買となりました。

この事例の失敗ポイントとは

共有名義の問題

健太さんが自宅を建て替えようとした際、土地が佐代子さんとの共有名義であったため、抵当権の設定にゆみこさんの承諾が必要となりました。

これは、計画を進める上での大きな障害となりました。

追加の経費発生

たかしさんがゆみこさんの持分を買い取るために1000万円を支払い、さらに不動産取得税や登録免許税などの追加経費が発生しました。

一方、ゆみこさんも土地売却に伴う譲渡所得税を負担することになりました。

この経費は、事前に予想されていなかったので予想外の大出費となってしまいました。

兄妹間の価格設定

ゆみこさんは兄妹間の取引であるため、もっと安く売っても良いと考えていましたが、時価で売買しないと贈与税がかかる恐れがあるため、時価での売買となりました。

これにより、ゆみこさんの意向が反映されず、結果的に高額な取引となってしまいました。

対処法

今回のケースでは土地をたかしさんが、金融資産をゆみこさんが相続しておけば、土地購入に伴う不動産取得税、登録免許税、譲渡所得税はかかりませんでした。

その際、土地評価額と金融資産の差額を「代償分割」することで、後日の手続きも必要なかったと考えられます。

納税などの関係で、遺産分割協議を急いでしまったケース

宏さん(仮名)の亡くなったお父さんは、住居と土地、駐車場、賃貸住宅とその土地の計3つの不動産を残しました。

これらを相続したのは、妻(宏さんのお母さん)と子供3人(宏さんの子供)です。

それぞれの土地には面積や立地条件に若干の違いがあり、相続税の納税の関係で遺産分割を急いだ結果、すべての土地建物を各相続人が4分の1ずつ共有する形で遺産分割を行いました。

後日、賃貸住宅の建替えを機に遺産分割協議をやり直すことになり、法律的には問題がなかったものの、税務上の問題が発生する可能性があったため、結果的には「固定資産の交換の特例」による持分の交換で対処することになりました。

また、子供3人に対して土地持分の取得に伴う不動産取得税と登録免許税、さらには交換した土地に評価の差があるため、差額分に対して贈与税がかかってしまいました。

この事例の失敗ポイントとは

「とりあえず共有にしておこう」という選択は、後で悔いを残すことになります。 このケースや前回のケースでは兄弟姉妹・親子間ということもあり、ごく自然な成り行きでとりあえず共有として遺産分割を行った例です。

しかし、建替え問題などが後になって発生し、本来払わなくてもいい税金が余計にかかってしまいました。

対処法

今回のケースでは、居宅の土地には宏さんの家族と両親の住む二世帯住宅が建っていたこともあり、宏さんのお母さんと宏さんが住宅と土地を相続し、残りの子二人は別々に駐車場と賃貸住宅の土地・建物を相続しておけば良かったと考えられます。

このように、急な相続発生で気持ちが動転して「とりあえず共有にしておこう」と遺産分割をしてしまうのは、将来のことを考えるとやや早計かもしれません。

兄弟姉妹は仲が良くても、時間の経過とともに状況が変化することもあります。

やはり、当初から相続に精通している司法書士に相談して、後に悔いを残さない対策をとっておくことが重要です。

遺産分割による不動産の共有には、より慎重に対応するのが賢明と言えるでしょう。

共有名義のトラブル

田中家(仮名)の父親が亡くなり、遺産として自宅とその土地、駐車場、賃貸アパートを残しました。

母親と3人の子供(太郎、次郎、花子 ※それぞれ仮名)が相続人となり、すべての不動産を4分の1ずつ共有することにしました。
数年後、次郎さんが急に自分の持分を売却したいと言い出しました。

しかし、他の家族は売却に反対し、意見が対立。次郎さんは自分の持分を第三者に売却しようとしましたが、他の共有者の同意が得られず、結局裁判に発展しました。

裁判の結果、次郎は持分を売却する権利を認められましたが、家族間の関係は完全に崩壊してしまいました。

教訓

共有名義は後々のトラブルの元になることが多いです。

できるだけ個別に分割するか、共有する場合は事前に売却や利用方法についての合意を取り決めておくことが重要です。

また、共有名義にする際には、将来的な売却や利用方法についての具体的な取り決めを文書化しておくことが望ましいです。

評価額の不一致

鈴木家(仮名)では、父親が亡くなり、遺産として複数の不動産と金融資産を残しました。

兄弟3人(健一、次郎、花子 ※それぞれ仮名)は、それぞれの不動産の評価額について意見が分かれました。

健一さんは不動産の評価額を高く見積もり、次郎さんと花子さんは低く見積もりました。

結果として、遺産分割が長引き、相続税の支払いが遅れ、延滞税が発生してしまいました。

さらに、評価額の違いから兄弟間での信頼関係が損なわれ、家族内でのコミュニケーションが困難になりました。

教訓

不動産の評価額については、専門家の意見を取り入れることが重要です。

公平な評価を行い、全員が納得できる形で遺産分割を進めることが大切です。

また、評価額の違いが生じた場合には、第三者の専門家を交えて調整を行うことが望ましいです。

遺言書の不備

山田家(仮名)の父親が遺言書を残していましたが、内容が曖昧で具体的な指示がありませんでした。

兄弟姉妹はそれぞれ異なる解釈をし、遺産分割がスムーズに進みませんでした。

遺言書の内容が不明確だったため、兄弟姉妹間で解釈が異なり、最終的には弁護士を介して解決しましたが、多くの時間と費用がかかりました。

さらに、遺言書の不備が原因で兄弟姉妹間の関係が悪化し、家族内での信頼関係が損なわれてしまいました。

教訓

遺言書は具体的かつ明確に記載することが重要です。

専門家の助言を受けながら作成し、法的に有効な形で残しておくことが望ましいです。

また、遺言書の内容については、事前に家族と話し合い、全員が納得できる形で作成することが大切です。

感情的な対立

佐藤家(仮名)では、母親が亡くなり、遺産として自宅とその土地、預金を残しました。

兄弟姉妹(一郎さん、次郎さん、雪子さん ※いずれも仮名)は、母親の介護をしていた雪子さんが他の兄弟よりも多くの遺産を要求しました。

雪子さんの要求に対して、太郎と次郎は反発し、感情的な対立が発生。家族関係が悪化し、最終的には家庭裁判所での調停に持ち込まれました。

調停の結果、雪子さんは一部の要求を認められましたが、兄弟間の関係は修復不可能なほどに悪化しました。

教訓

遺産分割は感情的な問題を引き起こすことが多いです。

冷静に話し合い、第三者の仲介を利用することも検討すると良いでしょう。

また、介護などの貢献度に応じた遺産分割については、事前に家族全員で話し合い、合意を得ておくことが重要です。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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