(負担付)死因贈与契約
最終更新日:2026/07/27
死因贈与(しいんぞうよ)契約とは?
「死因贈与契約」とは、財産を渡す人(贈与者)と、財産を受け取る人(受贈者)の間で、「私が死亡したら、この財産(不動産や預貯金など)をあなたに譲ります」と生前に約束しておく契約のことです。
贈与者の「死亡」を条件として財産が移転するという点では、遺言書で財産を残すこと(遺贈)とよく似ていますが、法的な性質や手続きの進め方において明確な違いがあります。
特に、血縁関係のない第三者(内縁の配偶者や、お世話になった方など)に確実に財産を残したい場合に、非常に有効な生前対策の一つとして活用されています。
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遺言書(遺贈)と死因贈与契約の大きな違いは3つある
「自分が死んだら特定の財産を特定の人に渡す」という最終的な目的は同じですが、法律上は以下の3つの点が大きく異なります。
1. 「単独行為」か「双方の合意(契約)」か
遺言書(遺贈)
遺言者の単独行為です。財産を受け取る側に内緒で、一人で作成することができます。
相手の同意は一切不要です。
(※ただし、死後に相手が「いらない」と受け取りを放棄することは可能です)
死因贈与契約
双方の合意による契約です。
あらかじめ「私からあなたにあげます」「はい、もらいます」というお互いの合意と承諾がなければ成立しません。
2. 取り消し(撤回)のしやすさ
遺言書(遺贈)
遺言者は、生前であればいつでも、何度でも、自分の意思だけで内容を書き換えたり、撤回したりすることができます。
死因贈与契約
死因贈与も原則として遺言の規定が準用されるため、いつでも撤回できるのが基本です。
しかし、後述する「負担付死因贈与契約」において、相手がすでに負担(介護など)を果たしている場合、一方的な契約の解除・撤回は原則として認められません。
3. 不動産の「仮登記」ができるかどうか
遺言書(遺贈)
生前の段階で「私は遺言書でこの土地をもらう予定です」という登記を法務局に入れておくことはできません。
死因贈与契約
契約を結んだ時点で、対象となる不動産に始期付所有権移転仮登記(しきつき しょゆうけん いてん かとき)という仮登記を入れることができます。
これにより、将来確実に不動産を受け取る権利を公に主張でき、第三者への勝手な売却を防ぐことができます。
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介護などを条件にする「負担付死因贈与契約」とは?
死因贈与の中で、実務上もっとも多く活用されるのが負担付死因贈与契約(ふたんつき しいんぞうよ けいやく)です。
これは、ただ単に財産を譲るのではなく、相手に一定の義務(負担)を負ってもらうことを条件とする契約です。
【負担付死因贈与契約の具体例】
「私が亡くなるまで同居して身の回りの世話(介護)をしてくれたら、自宅の土地と建物をあなたに贈与する」
「私が残したペットを、私の死後最後まで飼育してくれたら、預貯金のうち1,000万円をあなたに贈与する」
「私の借金を代わりに毎月返済してくれたら、実家の不動産を贈与する」
遺言書でも「介護をしてほしい」と付言事項に書くことはできますが、法的拘束力はありません。
負担付死因贈与契約であれば、「お世話をする代わりに、確実に財産をもらえる」という明確な約束ができるため、面倒を見てくれる方のモチベーションや安心感に直結します。
死因贈与契約のメリットとデメリット・注意点
契約を検討する際は、メリットだけでなく、税金面や手続き上のデメリットもしっかりと把握しておく必要があります。
死因贈与のメリット
1. 確実性が高い(揉めにくい)
お互いの合意の上で契約書を残すため、死後に「そんな話は聞いていない」「本人の意思だったのか怪しい」と他の相続人から疑われるリスクを減らせます。
2. 年齢制限がない
遺言書は15歳以上でなければ作成できませんが、死因贈与契約には原則として年齢制限がありません(未成年の場合は親権者などの法定代理人の同意が必要です)。
3. 権利の保全ができる
前述の通り、不動産に対して生前に「仮登記」を入れておくことができるため、受贈者の権利が強力に守られます。
死因贈与のデメリット(税金が高くなる落とし穴!)
不動産を死因贈与で受け取る場合、遺言(法定相続人への相続)で受け取る場合と比べて、税金や登記費用の負担が重くなるという非常に大きなデメリットがあります。
⚠️注意!
死因贈与は「贈与」という名前がついていますが、死亡を原因として財産が移転するため、贈与税ではなく相続税の対象となります。
| 税金・費用の種類 | 遺言(法定相続人が相続する場合) | 死因贈与契約で受け取る場合 |
|---|---|---|
| 相続税 | かかる(基礎控除あり) | かかる(遺贈と同じ扱いで相続税の対象) |
| 不動産取得税 | かからない(非課税) | かかる(固定資産税評価額の原則4% ※特例あり) |
| 登録免許税(名義変更) | 固定資産税評価額の 0.4% | 固定資産税評価額の 2.0%(相続の5倍!) |
このように、不動産の名義変更にかかる「登録免許税」が通常の相続の5倍になり、さらに通常の相続では非課税となる「不動産取得税」が課税されてしまいます。
そのため、法定相続人(配偶者や子供など)に対して財産を残すのであれば、税金面を考慮すると「遺言書」を作成する方が圧倒的に有利になるケースが大半です。
▶︎参考リンク:国税庁| 相続税がかかる財産
▶︎参考リンク:国税庁|登録免許税の税額表
まとめ
死因贈与契約を結ぶ場合、後々のトラブルを防ぎ、スムーズに名義変更などの手続きを行うために、以下の3点を必ず押さえておきましょう。
1. 「公正証書」で契約書を作成する
口約束や当事者同士のサインだけでも契約自体は成立しますが、契約書の紛失や偽造を疑われるトラブルを防ぐため、公証役場にて公正証書の形で死因贈与契約書を作成することを強くお勧めします。
2. 「死因贈与執行者」を必ず指定しておく
死因贈与契約に基づいて不動産の名義変更などを行う場合、本来は「受贈者」と「亡くなった方の相続人全員」が共同で手続き(実印の押印や印鑑証明書の用意)をする必要があります。
しかし、財産を取られる相続人全員が快く協力してくれるとは限りません。
契約書の中で手続きを単独で進められる死因贈与執行者(司法書士などの専門家を指定するのが一般的)を定めておくことで、他の相続人の協力を得ることなくスムーズに財産を受け取ることができます。
3. 不動産の場合は「仮登記」をしておく
確実に不動産を受け取るために、契約締結と同時に法務局で「始期付所有権移転仮登記」を行いましょう。
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この記事を書いた専門家
- 司法書士事務所センス 代表
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。
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