住宅取得資金贈与の特例
最終更新日:2026/10/11
はじめに:マイホーム購入時の強い味方「住宅取得資金贈与の非課税特例」とは?
住宅の購入や新築、リフォームを行う際、資金面で親や祖父母(直系尊属)から金銭的な支援を受けるケースは非常に多く見られます。
通常、1年間(1月1日~12月31日)に110万円を超える財産の贈与を受けると高額な「贈与税」が課税されますが、マイホーム資金であれば一定額まで税金がかからなくなるお得な制度が存在します。それが「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」です。
令和6年度税制改正で適用期限が【令和8年(2026年)12月31日まで】延長!
この特例措置は時限措置ですが、令和6年度(2024年度)の税制改正により、適用期限が3年間延長され「令和8年(2026年)12月31日までの贈与」が対象となりました。
今後の税制改正によってさらに見直される可能性もありますが、現在住宅の取得をご検討中の方にとっては、非常に利用価値の高い制度です。
参考リンク:国土交通省|住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
あわせて読みたい:生前贈与 贈与の種類まとめ一覧
非課税限度額はいくら?(最大1,000万円)
非課税限度額は、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までとされています。
相続時精算課税の特例を適用することで、贈与税の非課税限度額は以下の通りとなります:
- 省エネ住宅等: 最大1,000万円まで非課税。
- その他の住宅: 最大500万円まで非課税。
※既に過去に本特例の適用を受けて非課税となった金額がある場合は、その額を控除した残額が限度額となります。
「省エネ等住宅」に該当するための基準
最大1,000万円の枠を使うためには、新築・取得した家屋が以下のいずれかの基準を満たしていることを証明書で立証する必要があります。
1. 断熱等性能等級5以上 かつ 一次エネルギー消費量等級6以上(※省エネ性能)
2. 耐震等級2以上 または 免震建築物(※耐震性能)
3. 高齢者等配慮対策等級3以上(※バリアフリー性能)
あわせて読みたい(内部リンク):相続税・贈与税改正のポイントと申告の仕組み
3. 特例を適用するための詳細条件(チェックリスト)
この特例を利用するためには、「誰から・誰へ・どんな住宅を・いつまでに取得するか」について厳格な要件が定められています。
「もらう人(受贈者)」の要件
贈与を受ける人は、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
1. 直系卑属であること
贈与者(親や祖父母)の「子」や「孫」であること。
2. 年齢要件
贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること。
3. 所得制限
贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。
※なお、取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、合計所得金額1,000万円以下に限られます。
4. 過去の適用歴
平成21年分から令和3年分までの贈与税申告で本特例(住宅取得資金の非課税)を受けたことがないこと。
5. 親族間売買でないこと
配偶者や親族など「一定の特別の関係がある人」から住宅を取得したものでないこと、またそれらの者との請負契約により新築・増改築したものでないこと。
6. 住所要件
贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
「あげる人(贈与者)」の要件
贈与者は、受贈者から見て「直系尊属(実父母や実祖父母など)」でなければなりません。
実の親・祖父母:〇(対象)
配偶者(義理)の親・祖父母:×(対象外)
【実務のポイント】配偶者の親から支援を受けたい場合
義理の父親から直接資金をもらうと特例が使えません。
この場合は「夫が自分の実親から資金贈与を受ける」「妻が自分の実親から資金贈与を受ける」形にして、新築物件を夫婦の共同名義(持分割合に応じて所有権登記)にすることで、夫婦それぞれが自分の実親からの贈与について非課税特例を適用することが可能です。
「取得する住宅(家屋)」の要件
対象となる住宅にも、登記簿上の床面積や用途についての基準があります。
1. 床面積:登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること。
2. 居住用割合:床面積の2分の1以上が受贈者本人の居住用であること(店舗併用住宅などの場合)。
3. 国内不動産:日本国内に所在する住宅であること。
※中古住宅の場合でも、一定の耐震基準を満たしていることが建築確認書類や耐震基準適合証明書等によって証明されれば対象となります。
参考リンク(外部リンク):国税庁|直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
現場の司法書士が明かす!「実務上つまずきやすい3つの落とし穴」
住宅取得資金贈与は税理士の税務申告だけでなく、名義変更(所有権の保存登記・移転登記)を行う司法書士の実務とも密接に関わっています。現場で実際に起きた失敗例や、注意すべきポイントを解説します。
落とし穴①:入居時期と登記のタイミング(3月15日ルール)
本特例の最も厳しいルールが「スケジュールの壁」です。
原則として、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その資金の全額を充てて住宅を取得し、実際に居住を始めること(遅くとも同日までに「上棟」等が行われ、新築と同等と認められる状態であり、かつ翌年12月31日までに居住開始すること)が求められます。
【よくある失敗例】
「12月に親から資金の振込を受けたが、ハウスメーカーの工事が遅れて引き渡しが翌年4月になってしまった」というケースです。この場合、3月15日時点で完成しておらず入居もできていないため、特例が否認されて高額な贈与税が課されてしまう危険性が生じます。
資金を贈与してもらうタイミングは、建築スケジュールや引き渡し日と照らし合わせて慎重に決定する必要があります。
落とし穴②:持分割合のミスによる「二次的な贈与税」の発生
マイホームを購入する際、司法書士は法務局へ「誰がどれだけの割合で所有するか(持分割合)」の登記を行います。この持分割合を誤ると、意図せぬ贈与税が発生します。
【誤ったケース】
物件価格:5,000万円
夫の住宅ローン:4,000万円
妻の実親からの資金贈与:1,000万円(※妻が非課税特例を利用)
この資金調達の場合、不動産の出資比率は「夫:80%(4,000万円)」「妻:20%(1,000万円)」となります。
しかし、登記の段階で適当に「夫婦で半分ずつだから持分2分の1(50%)ずつ」と登記してしまうと、夫から妻へ差額1,500万円分の資産が贈与されたとみなされ、別途贈与税が課せられてしまいます。
「出資した金額の割合」と「登記簿上の持分割合」は必ず一致させなければなりません。
あわせて読みたい:不動産の名義変更(相続登記)が必要な理由
落とし穴③:非課税枠に収まっても「贈与税申告」をしないと無効になる
「もらった金額が1,000万円以内だから税金は0円。だから申告もしなくていいや」と思い込んでしまう方が非常に多くいらっしゃいます。
この特例は、「贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までの間に、税務署へ申告書と添付書類を提出すること」が適用の絶対条件です。期限までに申告を行わないと、非課税枠が適用されず、通常の贈与税が課せられることになります。
当事務所でよくあるご相談事例
当事務所に寄せられる、住宅取得資金贈与に関する実際のご相談事例をご紹介します。
事例A:暦年課税の基礎控除(110万円)や「相続時精算課税」との併用
【ご相談内容】
「親から1,500万円の住宅資金を出してもらう予定です。省エネ住宅なので1,000万円までは非課税特例を使えますが、オーバーした500万円分には高い贈与税がかかってしまいますか?」
【司法書士からのアドバイス】
住宅取得資金の非課税特例(1,000万円)は、通常の「暦年課税の基礎控除(110万円)」や「相続時精算課税制度(最大2,500万円)」と併用することが可能です。
方法①:非課税特例(1,000万円)+ 暦年基礎控除(110万円)
合計1,110万円まで非課税で受け取れます。残りの390万円部分には通常の贈与税がかかります。
方法②:非課税特例(1,000万円)+ 相続時精算課税(2,500万円枠)
1,500万円の全額について、今手元で払う贈与税をゼロ(0円)にすることが可能です。ただし、相続時精算課税を選んだ部分は、将来親が亡くなった際の「相続税の計算対象」として持ち戻されることになります。
将来の親の遺産総額(相続税がかかる規模かどうか)に応じて、どちらの制度と組み合わせるのが得策かを慎重にシミュレーションしてご提案いたしました。
あわせて読みたい:相続時精算課税 贈与税をお得に節税
参考リンク:国税庁|相続時精算課税選択の特例
手続きの流れと必要書類一覧
特例の適用を受けるための手続きは、以下のステップで進めます。
必要書類一覧(税務署へ提出するもの)
①贈与税の申告書(第一表、第一表の二)
非課税の特例の適用を受ける旨を明記して作成します。
②戸籍謄本・マイナンバーカード
受贈者の戸籍謄本(贈与者との直系尊属関係を証明)およびマイナンバー本人確認書類を準備します。
③所得税の源泉徴収票または確定申告書の控え
受贈者の合計所得金額が2,000万円(床面積条件により1,000万円)以下であることを証明します。
④売買契約書・請負契約書の写し
家屋の新築、購入、増改築等の対価および契約年月日を証明します。
⑤登記事項証明書(不動産登記簿謄本)
家屋の床面積や所有権の保存・移転登記完了を確認するために提出します。
⑥住宅性能証明書等(省エネ枠を使う場合のみ)
1,000万円枠を適用する場合、建設住宅性能評価書の写しや住宅省エネルギー性能証明書などを添えます。
申告の時期
贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに、受贈者の住所地を管轄する税務署へ提出します。
参考リンク:国税庁|国税庁パンフレット「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税非課税」等のあらまし
まとめ:マイホーム購入と資金贈与のご相談は当窓口へ
住宅取得資金贈与の非課税特例は、正しく使えば大きな節税効果を発揮しますが、スケジュール管理や持分割合の登記、将来の相続税への影響など、多角的な視点での検証が欠かせません。
不動産登記の専門家である司法書士と、税務の専門家である税理士が連携してサポートすることで、「登記の持分ミス」や「税務申告漏れ」を防ぎ、安心してマイホームの取得を進めることができます。
練馬区の「練馬 相続遺言の相談窓口(司法書士事務所センス)」では、住宅購入に伴う不動産登記はもちろん、親御様からの資金贈与や将来の相続対策まで、トータルでご相談を承っております。
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この記事を書いた専門家
- 司法書士事務所センス 代表
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。
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