相続放棄と限定承認について

最終更新日:2024/09/04

相続放棄と限定承認の違いとは

相続に関する手続きには、相続放棄と限定承認という二つの選択肢があります。これらは、被相続人の財産や債務をどのように扱うかを決定するための重要な手続きです。

それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人が財産よりも多くの借金を残して亡くなった場合に、相続人が「財産も借金もどちらも引き継がない」と宣言することを指します。

つまり相続人が被相続人の財産や負債を一切引き継がないことを意味します。

相続放棄を行うためには、相続人は相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、管轄の家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行わなければなりません。

この期間を過ぎると、相続放棄をすることができなくなりますので、注意が必要です。

よく「相続人同士で相続の放棄を約束した」との話を耳にしますが、それだけでは法的に相続放棄が成立したことにはなりません。

相続放棄を正式に行うためには、家庭裁判所に対して適切な手続きを踏む必要があります。

限定承認

限定承認とは、相続人が被相続人の財産を受け継ぐ際に、その財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐことを選択する手続きです。

つまり、被相続人の債務が相続財産を超える場合でも、相続人は相続財産の範囲内でしか債務を負担しません。

限定承認を行うためには、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

また、相続人全員が共同で行う必要があります。

違いのまとめ

相続放棄

被相続人の財産や債務を一切受け継がない。

限定承認

被相続人の財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ。

相続放棄は、被相続人の債務が多い場合に有効な手続きですが、相続財産も一切受け取れなくなる点に注意が必要です。

一方、限定承認は、相続財産の範囲内で債務を引き継ぐため、相続財産が債務を上回る場合に有効です。

どちらの手続きを選択するかは、被相続人の財産状況や相続人の意向に応じて慎重に判断する必要があります。

専門家の助言を受けながら、適切な手続きを進めることが重要です。

相続放棄についてより詳しく解説

相続放棄は前述の通り、被相続人が財産よりも多くの借金を残して亡くなったような場合に、“財産も借金もどちらも引き継がないと宣言すること”です。

相続放棄とは、被相続人の財産について相続の権利を放棄することで、プラスの財産(資産)もマイナスの財産(借金)も一切相続しません。

とくに、被相続人の財産に多額の借金が含まれている場合などに有効な手段です。

相続放棄の手続きは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、期間内に財産の調査を行い、相続放棄をするかどうかを判断します。

手続きには、相続放棄申述書や被相続人の戸籍謄本などの必要書類を提出します。

相続放棄の注意点

相続放棄を行う際の注意点として、相続財産を勝手に処分してはいけないことが挙げられます。

相続財産を処分すると、相続放棄が認められなくなる可能性があります。

また、相続放棄をすると、プラスの財産も相続できなくなるため、事前に財産の調査を十分に行うことが重要です。

相続放棄を検討している場合は、専門家に相談する事をおすすめします。

司法書士は、相続放棄の手続きや必要書類の準備をサポートし、適切な手続きを行います。

相続放棄を行うことで、借金などの負債を引き継がずに済む一方で、プラスの財産も相続できなくなるため、慎重に判断しなければなりません。

詳しくは、相続放棄をご覧ください。

相続放棄と順番

詳しくは【相続放棄の相続順位 最後は誰が放棄すれば終わる?】をご覧ください。

単純承認と限定承認

相続財産を引き継ぐ方法として、“単純承認”と“限定承認”の2種類があります。

単純承認と限定承認は、相続における二つの異なる方法で、それぞれの特徴と違いを説明します。

単純承認とは

被相続人(亡くなった人)のプラスの財産もマイナスの財産もすべて無条件に相続する方法です。

単純承認を選ぶと、相続人は被相続人のすべての権利と義務を引き継ぎます。

特別な手続きは不要で、相続開始を知ってから3ヶ月以内に何も手続きをしなければ、自動的に単純承認となります。

単純承認のメリットは、手続きが簡単であることですが、デメリットとしては、被相続人の借金などの負債もすべて引き継ぐため、相続人自身の財産で返済しなければならない場合があることです。

限定承認とは

相続人が相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ被相続人の債務を弁済する方法です。

限定承認を選ぶと、相続人はプラスの財産を超える負債を引き継ぐことはありません。

限定承認の手続きは、相続人全員が共同で家庭裁判所に申述する必要があり、手続きが複雑で時間がかかることがデメリットです。

しかし、限定承認を選ぶことで、相続人は自分の財産を守りつつ、被相続人の財産を相続することができます。

単純承認と限定承認の違い

違いとしては、単純承認はすべての財産を無条件に相続するのに対し、限定承認はプラスの財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ点です。

また、単純承認は特別な手続きが不要であるのに対し、限定承認は家庭裁判所への申述が必要です。

相続方法を選ぶ際は、被相続人の財産状況をよく調査し、慎重に判断することが重要です。

詳しくは、単純承認と限定承認をご覧ください。

3ヶ月経過後の相続放棄

相続放棄は、被相続人の財産を相続しないことを決定する手続きで、通常は相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

しかし、3ヶ月を過ぎた場合でも、特別な事情がある場合には相続放棄が認められることがあります。

相続放棄の申述期限が延長される理由

まず、相続放棄の熟慮期間は、被相続人の死亡日ではなく、相続の開始を知った日から起算されます。

例えば、被相続人の死亡を知らなかった場合や、先順位の相続人が相続放棄をしたために自分が相続人となったことを後から知った場合などが該当します。

このような場合には、相続放棄の申述期限が延長されることがあります。

また、3ヶ月を過ぎた場合でも、特別な事情がある場合には相続放棄が認められることがあります。

例えば、被相続人の財産が全く存在しないと信じていたが、後から財産が発見された場合や、被相続人の生活状況や相続人との関係から財産の調査が困難であった場合などが該当します。

このような場合には、家庭裁判所に上申書を提出し、事情を説明することで相続放棄が認められる事があります。

上申書には、相続放棄を認めてもらうための根拠や事情を詳細に記載する必要があります。

例えば、被相続人の死亡を知った日や、相続財産の存在を知った経緯などを具体的に説明します。

上申書の提出方法や必要書類については、家庭裁判所の指示に従って準備します。

注意点

そして、注意しなくてはならないのは、「相続放棄に関する法律を知らなかった」という言い分は認められないということを十分に肝に銘じなければなりません。

「相続放棄の手続き期限は3ヶ月以内」という期限を本当に知らなかったとしても、知っていたものとして扱われますので十分注意が必要です。

詳しくは、3ヶ月経過後の相続放棄をご覧下さい。

保証債務があったらどうする?

相相続を承認した後や、相続放棄の期間が過ぎた後に、被相続人が他人の借金の保証人になっていたことが判明するケースがあります。

このような場合、債務の存在を知った時点から3ヶ月以内であれば、例外的に相続放棄が認められることがあります。

ただし、この場合には、債権者が異議を唱えてくる可能性がある事も予想されます。

詳しくは、保証債務の相続をご覧ください。

相続放棄のQ&A

相続放棄の手続きは複雑であり、法律や期限に関する知識が必要です。

以下のリンク先で専門家が適切な手続きを踏むためのアドバイスをしているので、参考になれば幸いです。

特に、相続放棄の期限や必要な書類、手続きの流れについての質問は、失敗を防ぐために欠かせません。

専門家のアドバイスを参考にしながら安心して相続放棄の手続きを進めましょう。

詳しくは、相続放棄のQ&Aをご覧ください。

相続放棄の失敗事例

相続放棄の失敗は、相続人にとって大きな問題となることがあります。

相続放棄を行う際には、法律で定められた期間内に手続きを完了する必要がありますが、この期間を過ぎてしまうと、相続放棄が認められなくなります。

その結果、相続人は被相続人の債務を引き継ぐことになり、予期せぬ負担を背負う事になります。

また、相続放棄の手続きが不完全であった場合や、必要な書類が揃っていなかった場合も、相続放棄が無効となる可能性があります。

さらに、相続放棄を行った後に新たな債務が発覚した場合、その債務についても責任を負うことになるため、注意が必要です。

相続放棄を成功させるためには、専門家の助言を受けながら慎重に手続きを進めることが重要です。

詳しくは、相続放棄の失敗事例をご覧ください。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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