遺言の種類 さまざまな方式を解説

最終更新日:2024/11/21

遺言の方式にはさまざまな種類がある

遺言書

遺言の方法は民法で定められています。

民法に沿った正しい方式でないと効力がありません。

このページではどんな種類の遺言書があって、それぞれ何が違うのか、なぜ遺言書が必要なのかを相続専門の司法書士が解説いたします。

遺言の方式は大きく分けて普通方式と特別方式

遺言には「普通方式」と「特別方式」の2種類があります。

遺言の方式

普通方式遺言とは

普通方式遺言は、一般的な状況で作成される遺言で、以下の3種類があります

普通方式遺言は3種類

自筆証書遺

文字通り遺言者が自分で全文を手書きし、署名・押印するものです。

公正証書遺言

遺言者が公証人の前で遺言内容を口述し、公証人がそれを文書にして作成するものです。証人2名以上の立会いが必要です。

秘密証書遺言

遺言内容を秘密にしておきたい場合に使われる方式で、遺言書を封印し、公証人と証人の前でその存在を確認してもらいます。

特別方式遺言とは

特別方式遺言は、緊急時や特殊な状況で作成される遺言です。普通方式遺言と異なり、有効期限がある場合があります。

例えば、危急時遺言は作成後6ヶ月以内に遺言者が生存している場合、無効となることがあります。

特別方式遺言は2種類

緊急事遺言

病気や事故などで死期が迫っている場合に作成される遺言です。証人3人以上の立会いが必要で、証人の一人が遺言内容を筆記し、他の証人が署名します。

隔絶地遺言

伝染病で隔離されている場合や、船舶に乗船している場合など、普通方式の遺言を作成できない状況で作成される遺言です。証人や警察官の立会いが必要です。

自筆証書遺言とは?詳しく解説

本人が、本文の全文、日付、氏名を自分の手で書いた書面に捺印したものが自筆遺言書です。

縦書きや横書きなど様式は特に決まってないですが、パソコン文字や代筆は認められず、絶対に自分で書くことが必須です。

こんな人に向いています

費用を抑えたい人

自筆証書遺言は自分で作成できるため、公証人の手数料がかかりません。

手軽に作成したい人

自宅で簡単に作成できるので、手間が少ないです。

内容を秘密にしたい人

公証人や証人が不要なので、遺言の内容を他人に知られずに済みます。

ほぼ費用がかからず、1人でも作成できるのが1番のメリットですが、その反面リスクも多数あります。

捺印もれなど、ちょっとしたミスで無効になってしまう可能性があります。また保管を自分で行うので偽造や変造、紛失の恐れがあります。

家庭裁判所の検認を受けなくてはならず、相続発生後に手間がかかる事もデメリットのひとつです。

自宅での保管が不安な場合は法務局でも保管ができる

2020年度より自筆遺言書を法務局が保管してくれる自筆遺言書保管制度が創設されました。

遺言者自身が自分で作成した遺言書を法務局へ提出し、法務局で保管します。この制度を利用すると遺言書の裁判所での検認手続きは必要ありません。

※自筆遺言書について、さらに詳しくはこちらのページをご覧ください。

公正証書遺言とは?詳しく解説

公正証書遺言は、遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言の内容を話し、公証人が文章にする遺言です。

そして公証人は、記録した文章を本人と証人に読み聞かせたり、閲覧させたりして筆記の正確さを確認し、それぞれの署名・捺印をして完成します。

こんな人に向いています

法的に確実な遺言を残したい人

公証人が関与するため、形式不備による無効リスクが低く、法的に確実なものが残せます。

遺言内容を明確にしたい人

公証人が内容を確認し、証人も立ち会うため、遺言の内容が明確で争いが起きにくいです。

高齢者や病気にかかっている人

公証人が意思能力を確認するため、遺言の有効性が保証されます。

公証人が作成し原本が公証役場に保管される為形式不備による無効や偽造、変造の恐れがありません。

なお、言葉の不自由な人や耳の不自由な人の場合は公証役場に出向く必要はなく、本人の意思を伝えることのできる通訳を介して遺言を作成することができます。

公正証書遺言のデメリットとしては、費用がかかる事と2人以上の証人が必要で、ある程度の手間と費用がかかる事です。

また証人から遺言内容が漏れてしまう可能性も少なからずありますので、証人は絶対に信用できる人を選びましょう。

みなみに相続人になる可能性のある人(推定相続人)、直系血族、未成年者、受遺者などは証人になる事はできません。

身近に適任者がいなければ司法書士などの専門家や公証役場に依頼する事もできます。

※公正証書遺言についてさらに詳しくはこちらをご覧ください。

秘密証書遺言とは?詳しく解説

密証書遺言とは、自筆証書遺言書と公正証書遺言の中間的な存在です。

こんな人に向いています

 専門家も関わりつつ遺言内容を自分以外に知られたく人

公証人や証人が内容を確認しないため、遺言内容を他人に知られずに済みます。

自筆が難しい人

公証人が内容を確認し、証人も立ち会うため、遺言の内容が明確で争いが起きにくいです。

 専門家を交えつつ費用を抑えたい人

公正証書遺言よりも費用が安く済みます

自分で書いて(代筆でも可)封印した遺言を公証役場へ持って行きます。

次に証書に内容を記載して署名・捺印した上で証書を封じ、同じ印鑑で封印をします。

この証書を公証人1人と証人2人以上の前に提出し、自分の遺言である旨を告げ、住所氏名を述べ、公証人と証人にその存在を証明してもらいます。

それを公証人が封紙に日付と共に記録し、本人と証人と共に署名捺印して作成します。

公正証書遺言と同じように公証役場で作成するのですが、遺言書の内容を密封して、公証人も内容を確認できないところが相違点です。

秘密証書遺言は、作成時点でその内容を本人以外に知られることがなく、プライバシーを守ることができますが、本人の死後に家庭裁判所で検認の手続きが必要となります。

死亡危急者の遺言とは 詳しく解説

病気等の理由で死が間近に迫っている場合に、3人以上の証人に対して遺言の内容を伝え、証人の1人が筆記等をすることにより作成する方式の遺言です。

この場合、親族などが筆記したものは、歪曲の恐れがあるため認められません。

この場合の証人も、公証役場での証人資格と同様です。

これは緊急的な措置で、本人が健康でしっかりした意識状態で遺言作成することが望ましいです。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

作成方法

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
遺言書の全文、日付、氏名を自筆で書く。パソコン等の文字は財産目録を除いて不可 本人が作成したものを法務局に持参し保管してもらう 本人が公証役場へ行き口授したものを公証人が筆記

証人の有無

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
不要 不要 2名以上必要

相続発生後の裁判所の検認

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
必要 不要 不要

保管

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
自宅等で本人が保管 管轄法務局に保管 公証役場に保管(原本のみ)

費用

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
無料 有料 有料

メリット

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言

費用がかからない

思い立ったらいつでもどこでも自由に作成できる

遺言書の内容を他の人に知られない

遺言書の内容を他の人に知られない

紛失や偽造の恐れがない

遺言者の死後に検認手続きがいらない

形式や内容の間違いにより無効になる恐れがない。

偽造、変造、紛失、隠匿の恐れがない。

検認が不要で相続人などがすぐに遺言を執行できる。

デメリット

自筆遺言
(自宅保管)
自筆遺言
(法務局保管)
公正証書遺言

形式の不備やあいまいな書き方があれば無効になったり争いになる恐れがある

紛失や偽造の恐れがある。

相続発生後に検認手続きが必要

遺言が発見されない可能性がある

法務局に出向く必要がある

費用がかかる

2名以上の証人を用意したり、公証役場に出向くなどの手間がかかる

費用がかかる

証人から遺言内容が漏れる可能性がある

まとめ

このように遺言には様々な種類がありますが、実質的には自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらかを選択する事が多いです。

私達司法書士事務所の多くは確実で安全な公正証書遺言を勧められますが、一概に自筆証書遺言が劣っているわけではありません。

つまり、安全、確実性、作成の簡便性、費用面、検認の要否などのうち何を重視するかによります。

遺言内容の複雑さなども考慮して、それぞれにメリットとデメリットがありご自身にとってどちらが都合が良いかよく考慮して慎重に決めましょう。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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