相続税・贈与税改正のポイント
最終更新日:2024/07/30
目次
2024年の相続税・贈与税改正のポイント
2024年1月1日から、相続税と贈与税に関する税制が大きく改正されました。
これにより、相続や贈与に関する税金の計算方法や控除額が変更され、より複雑な仕組みとなっています。
このページでは、主な改正ポイントを解説します。
1. 相続時精算課税制度の基礎控除新設
相続時精算課税制度において、年間110万円の基礎控除が新設されました。
これにより、年間110万円以内の贈与については贈与税がかからなくなり、贈与税の申告も不要になりました。
相続時精算課税制度とは
相続時精算課税制度は、生前贈与を行う際に2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。
ただし、贈与者が亡くなった際には、贈与した財産も相続財産に加算され、相続税が課税されます。
2024年の改正内容
2024年1月1日から、相続時精算課税制度に年間110万円までの基礎控除が新設されました。
これにより、年間110万円以下の贈与は非課税となり、特別控除の2,500万円には含まれません。
また、110万円以下の贈与は相続財産に加算されることもありません。
改正の影響
この改正により、相続時精算課税制度はより使いやすくなりました。
特に、少額の生前贈与を行いたい場合には、贈与税の申告が不要となるため、手続きが簡素化されます。
注意点
相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税制度には戻れないため、慎重に検討する必要があります。
また、110万円を超える贈与は贈与税の申告が必要となり、相続財産に加算されます。
また、相続時に贈与された財産を相続財産に加算する際にも、基礎控除分は課税対象外となります。
2. 暦年課税制度の相続税加算期間の延長
2024年1月1日から、暦年課税制度における相続税の加算期間が3年から7年に延長されました。
この改正により、相続開始前の7年間に行われた生前贈与も相続財産に加算されます。
暦年課税制度とは
暦年課税制度とは、個人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額をもとに贈与税を計算する方法です。
年間110万円の基礎控除があり、これを超えない限り贈与税はかかりません。
加算期間の延長はいつから適応される?
2023年12月31日までは、相続開始前の3年間に行われた生前贈与のみが相続税の課税対象に加算されていました。
しかし、2024年1月1日以降に行われた贈与については、相続開始前の7年間に行われた贈与が相続財産に加算されることになります。
具体例
例えば、2024年1月1日に贈与を行った場合、その後7年間にわたってその贈与が相続財産に加算される可能性があります。
つまり、2024年1月1日から2031年1月1日までの間に相続が開始された場合、その贈与は相続財産に加算されます。
例外と控除
ただし、相続開始前の3年間を超える4年間に行われた贈与については、合計100万円までが控除されます。
また、相続人や受遺者以外の人に対する贈与は加算対象外となります。
事実上の増税
この改正により、相続税の課税対象が広がり、事実上の増税となります。
そのため、暦年課税による生前贈与の節税対策を行う場合は、早めに行うことが重要です。
このように、2024年からの暦年課税制度の改正は、相続税対策に大きな影響を与えることになります。詳細な対策については、専門家に相談することをお勧めします。
3. マンションの相続税評価の適正化
2024年1月1日から、マンションの相続税評価方法が大きく改正されました。この改正は、マンションの相続税評価額と市場価格(実勢価格)の乖離を是正するためのものです。
これにより、マンションの相続税評価方法が見直され、より適正な評価が行われるようになりました。
改正の背景
従来の財産評価基本通達に基づくマンションの相続税評価額は、実勢価格の平均4割程度にとどまっていました。
このため、相続税評価額と市場価格の間に大きな乖離が生じていました。
この乖離を是正するため、2024年1月1日以降の相続や贈与から新しい評価方法が適用されることになりました。
新しい評価方法
新しい評価方法では、マンションの評価額を以下のように計算します。
従来の評価額の算出
土地
路線価 × 各種補正率 × マンション全体の敷地面積 × 区分所有持分
建物
所有物件に対する固定資産評価額
乖離率の算出
築年数、総階数、所在階、敷地持分狭小度などの指数を基に計算します。
評価水準の適用
乖離率に基づき、評価額を補正します。
具体例
例えば、築15年のマンションで、総階数11階、所在階2階の物件の場合、従来の評価額に乖離率を掛け合わせて新しい評価額を算出します。
影響と対策
この改正により、マンションの相続税評価額が従来の1.2倍から2倍程度に引き上げられることが予想されます。
これにより、相続税の負担が増加する可能性があります。
相続税対策としては、早めの生前贈与や、専門の税理士に相談することが重要です。
このように、2024年からのマンションの相続税評価の適正化は、相続税対策に大きな影響を与えることになります。
この改正により、相続や贈与の計画を立てる際には、より慎重な検討が必要となります。
4. 生前贈与加算期間の延長
2024年1月1日から、生前贈与加算の対象期間が従来の3年から7年に延長されました。
これにより、相続開始前の7年間に行われた贈与も相続財産に加算されるため、早めの対策が重要です。
生前贈与加算期間の変更点
これまで、生前贈与の加算期間は相続開始前の3年間でしたが、2024年1月1日以降に行われた贈与については、加算期間が段階的に7年間に延長されます。
具体的には、以下のように変更されます
2023年12月31日まで
相続開始前の3年間の贈与が加算対象。
2024年1月1日以降
相続開始前の7年間の贈与が加算対象。
変更の背景と目的
この変更は、相続税の課税対象を広げることで、相続税の公平性を高めることを目的としています。
これにより、亡くなる直前に行われる駆け込み的な生前贈与を防ぎ、相続税の適正な徴収を図ることが期待されています。
具体的な影響と対策
相続税の増加
生前贈与の加算期間が延長されることで、相続税の課税対象となる財産が増加します。
特に、相続開始前の7年間に行われた贈与がすべて加算されるため、相続税の負担が増える可能性があります。
早期の贈与計画の重要性
節税対策としての生前贈与を行う場合、早期に計画を立てることが重要です。
特に、孫や子供の配偶者への贈与は、通常相続人ではないため、生前贈与の加算対象にはなりません。
100万円の控除
2024年1月1日以降の贈与については、相続開始前の3年間の贈与は全額が相続税の課税価格に加算されますが、それ以前の4年間の贈与については、100万円を控除した残額が課税価格に加算されます。
まとめ
2024年の相続税・贈与税の改正は、相続税と贈与税の一体化を目指し、資産移転の時期に中立的な税制を構築することを目的としています。
今回の改正で相続や贈与を計画する際に重要な影響があります。
特に、相続時精算課税制度の基礎控除の創設は、贈与の手続きが簡素化される点で大きなメリットです。
また、生前贈与加算期間の延長は、相続税の計算に大きな影響を与える重要な変更です。
早期の贈与計画と適切な対策を講じることで、相続税の負担を軽減することが可能です。
専門家のアドバイスを受けながら、計画的に進めましょう。
参考リンク
国税庁 : 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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