課税対象財産 どんな財産に相続税がかかるのか徹底解説

最終更新日:2024/08/10

課税対象財産

相続税の対象となる財産は大きく以下の3つに分類されます。

  • 1.本来の相続財産
  • 2.生前の贈与財産
  • 3.みなし相続財産

参照サイト 国税庁 相続税がかかる財産

1.本来の相続財産

本来の相続財産とは?

本来の相続財産とは、被相続人(亡くなった方)が死亡時に所有していた財産で、相続や遺贈によって相続人が取得する財産のことです。

具体的には以下のようなものです。

現金・預貯金

銀行口座にあるお金や現金。

不動産

土地や建物などの不動産。

有価証券

株式や債券など。

動産

家具、車、宝石、骨董品など。

その他の財産

特許権、著作権、貸付金など、金銭的価値のあるもの。

相続税の対象となる理由

相続税は、被相続人が死亡時に持っていた財産が相続人に移転する際に課される税金です。

これは、財産の移転が経済的な利益をもたらすと考えられるためです。

2.生前贈与加算(生前の贈与財産)

生前贈与加算とは?

生前贈与加算とは、被相続人(亡くなった方)が死亡する前の一定期間内に行った贈与財産を、相続財産に加算して相続税を計算する制度です。

目的としては、相続税の負担を軽減するために生前に贈与を行うことを防ぐためです。

加算対象期間

生前贈与加算の対象となる期間は、相続開始前の3年間でしたが、2024年1月1日以降の贈与については7年間に延長されました。

具体的には、以下のように段階的に適用されます

2024年1月1日~2028年12月31日

相続開始前3年以内の贈与が対象

2029年1月1日以降

相続開始前7年以内の贈与が対象

加算対象となる贈与財産

以下のような贈与財産が相続税の課税対象に加算されます

暦年課税による贈与

年間110万円の基礎控除を超える贈与

相続時精算課税制度による贈与

特定の条件を満たす場合に適用される制度

この2種類の財産はすでに亡くなられた方の所有から外れていますが、相続税の計算では本来の相続財産に上乗せします。

3.みなし相続財産

みなし相続財産とは

被相続人の死亡により相続人が受け取る財産で、民法上の相続財産ではないものの、相続税法上では相続財産として扱われるものを指します。

具体的には、以下のような財産が含まれます。

1. 生命保険金(死亡保険金)

被相続人が加入していた生命保険によって、死亡時に支払われる保険金はみなし相続財産とされます。

ただし、保険料を負担していたのが被相続人である場合に限ります。

2. 死亡退職金

被相続人の死亡により勤務先から支払われる退職金も、死亡から3年以内に受け取った場合はみなし相続財産となります。

3. 生前贈与財産

被相続人が死亡する前3年以内に贈与された財産も、相続税の課税対象となります。

2024年からは、この期間が7年に延長されました。

4. その他の財産

弔慰金

一定の条件を超える部分は課税対象となります。

定期金

個人年金など、被相続人が掛け金を支払っていた場合。 債務の免除: 遺言による債務免除も課税対象です。

みなし相続財産の生命保険金や死亡退職金には非課税枠がある

みなし相続財産には相続税の負担を軽減するための非課税枠が設けられており、生命保険金や死亡退職金には一定額まで非課税となる枠があります。

生命保険金の非課税枠について

被相続人が契約者であった生命保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の対象となりますが、一定の非課税枠が適用されます。

この非課税枠は、「500万円 × 法定相続人の数」 で計算します。

例えば、法定相続人が3人いる場合、非課税枠は 500万円 × 3人 = 1500万円 となり、この金額までは相続税がかかりません。

これを超える部分のみが課税対象となります。

死亡退職金の非課税枠について

被相続人が勤務先から受け取る死亡退職金も、みなし相続財産として扱われます。

この場合も、生命保険金と同様に 「500万円 × 法定相続人の数」 の非課税枠が適用されます。

非課税枠の適用条件

非課税枠が適用されるためには、以下の条件を満たす必要があります

法定相続人が受け取ること

非課税枠は法定相続人が受け取る場合にのみ適用されます。

法定相続人以外の人が受け取る場合は、非課税枠は適用されません。

相続放棄をしていないこと

相続放棄をした場合でも、みなし相続財産を受け取ることは可能ですが、その場合は非課税枠を利用することができません。

注意点

遺産分割の対象外

みなし相続財産は遺産分割の対象にはならないため、他の相続人との間でトラブルが発生する可能性があります。

相続放棄

前述でも述べましたが、相続放棄をしたら、みなし相続財産は受け取る事ができますが、非課税枠は使用できません。

課税対象外の財産 相続税のかからないもの一覧

本来の相続財産は、被相続人が死亡時に所有していたすべての金銭的価値のある財産を指し、相続税の課税対象となります。

ただし、以下の特定の財産は課税対象外となります。

1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神神棚など

墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝に使われている物。ただし、骨董的価値があるものや投資の対象となるものは課税対象です

2 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産

公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

3 心身障害者共済制度に基づく給付金

地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

4 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの

幼稚園の事業に使われていた財産とは?

土地

幼稚園の敷地として使用されている土地。

建物

幼稚園の校舎や教室、事務所などの建物。 設備:遊具、教具、机や椅子、コンピュータなどの教育用設備。

車両

園児の送迎に使用されるバスや車。

その他の資産

図書、教材、備品など、幼稚園の運営に必要な物品。

以上の財産は、幼稚園の運営に直接使用されているものであり、一定の要件を満たす場合に相続税が非課税となることがあります。

非課税の要件とは

確実に幼稚園を継続する

幼稚園の経営が相続後も継続されることが確実である必要があります。

つまり、相続人が幼稚園の運営を引き継ぐ意思と能力があることが求められます。

非課税の範囲

非課税となるのは、幼稚園の敷地や建物など、事業に直接使用されている財産に限られます。

事業適正要件

幼稚園が適正に運営されていることが必要です。

具体的には、教育活動が適切に行われていることや、法令に基づいた運営がなされていることが求められます。

具体的な手続き

継続運営の証明

相続人が幼稚園の運営を継続する意思を示す書類や計画書を提出する必要があります。

適正運営の証明

幼稚園が適正に運営されていることを証明するための書類(例えば、教育活動の報告書や運営状況の記録)を提出します。

5 国や公共団体への寄付

相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの。

あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの。

6 健康保険組合から支給される葬祭費や埋葬料。

健康保険組合から支給される葬祭費や埋葬料には、相続税はかかりません。これらの給付金は、健康保険法や国民健康保険法に基づいて支給されるもので、相続財産には含まれないため、相続税の課税対象外です

7 配偶者控除の適用を受けた財産

配偶者に対する贈与で一定の条件を満たすもの

8 住宅取得等資金の贈与の一部

直系尊属からの住宅取得資金の贈与で非課税の適用を受けたもの

9 教育資金の一括贈与の一部

直系尊属からの教育資金の贈与で非課税の適用を受けたもの

10 結婚・子育て資金の一括贈与の一部

直系尊属からの結婚・子育て資金の贈与で非課税の適用を受けたもの

参照 国税庁 相続税がかからない財産

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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