事業承継のQ&A よくある質問
最終更新日:2024/05/22
目次
- 1 事業承継のQ&A
- 2 Q. 事業承継とは何でしょうか?
- 3 Q. 事業承継に十分に対処できない場合の危険は?
- 4 Q. 事業承継対策って、なぜ大切なのですか?
- 5 Q. 事業承継の方法は、どんな風に決定すればよいですか?
- 6 Q. 私は現在50歳ですが、自分の会社の承継はいつから考えればよいでしょうか?
- 7 Q. 中小企業でも事業承継でM&Aを利用することはできないのでしょうか?
- 8 Q. 事業承継をすると相続税はかかるものなのでしょうか?
- 9 Q. 贈与とは、どういう事ですか?
- 10 Q. 相続が起こる前に、後継者である息子に贈与しようと考えているのですが、贈与税はどれくらいかかるのでしょうか?
- 11 Q. 相続時精算課税という、贈与に非課税枠が適応される制度があると聞いたのですが、事業承継に使えるのでしょうか?
事業承継のQ&A
Q. 事業承継とは何でしょうか?
A. 事業承継とは、経営者が自身のビジネスや会社を他の人物、後継者に引き継ぐ事です。
経営権、株式、事業用資産、知的財産、従業員の技術やノウハウなど、事業に関連する全ての要素が含まれます。
事業承継は、企業の持続可能性を確保し、創業者の理念や価値を次世代に伝えるために重要です。
日本では特に、中小企業の経営者の高齢化と後継者不足が課題となっており、事業承継は経済の活力を維持するためにも不可欠な取り組みとされています
以下のような後継者への引継ぎのトータルコーディネートが事業承継です。
- 1 後継者の経営をスムーズにすること
- 2 後継者への引継ぎと共に事業を発展させること
- 3 後継者への引継ぎ後も従業員の雇用を確保すること
具体的には、親族内への経営権の委譲(株式譲渡)、M&A、相続税対策などです。
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Q. 事業承継に十分に対処できない場合の危険は?
A. 事業承継に十分に対処できない場合、多くの危険が生じる可能性があります。主なリスクには以下のようなものがあります
お家騒動になる可能性
後継者が決まらないことで親族間の争いが起こる可能性があります。
事業の不安定
経営者の急な交代や後継者の不在は、事業の継続性を脅かします。
従業員の生活も脅かされる
事業が不安定になると、従業員の雇用も不安定になります。
社内の理解不足
後継者や変更された経営方針に対する社内の理解が得られない場合があります。
税金面でのデメリット
適切な事業承継計画がないと、相続税などの税負担が重くなることがあります。
その他のデメリット
- ・後継者が負(マイナス)の遺産を背負う
- ・議決権が行使できず、経営がロックしてしまう。
- ・最悪の場合廃業となる
- などなど
これらのリスクを避けるためには、事業承継計画を早期に立て、関係者とのコミュニケーションを密にし、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが重要です。
Q. 事業承継対策って、なぜ大切なのですか?
A. 日本経済を支える中小企業では、近年、経営者の高齢化が進行する一方で、後継者の確保がますます困難になっています。また、事業承継に失敗して紛争が生じたり、会社の業績が悪化するケースも多く存在しています。
事業承継対策は、企業の将来の安定と成長を確保するために非常にとても重要です。主な理由は以下の通りです。
事業承継対策が重要な理由
これらの下記対策は、特に中小企業において、経営者の高齢化や後継者不足といった問題に直面している現代において、企業の存続と発展のために不可欠です。
1 経営者の高齢化問題
2023年の日本の中小企業経営者の平均年齢は、63.76歳となっています。
これは前年の63.02歳から上昇しており、2009年に調査が開始されて以来、最高記録を更新しています。
また、70代以上の社長の割合が35.49%となっており、事業承継の遅れが指摘されています。
このデータは、経営者の高齢化が進んでいることを示しており、事業承継の計画がより一層重要になっていることを示しています。
参考サイト:中小企業庁 2023年中小企業白書
2 後継者の確保が困難
後継者が既に決定している企業の割合は、日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、10.5%となっています。
この調査結果は、中小企業の事業承継の現状を示しており、後継者の決定にまだ至っていない企業が多いことを示唆しています。
また、廃業を予定している企業は57.4%に上るとのことです。
これらのデータは、事業承継の課題として、後継者不足が依然として大きな問題であることを浮き彫りにしています。
3 相続トラブルを防止できる
適切な事業承継計画により、相続に関する家族間の争いや法的な問題を未然に防ぐことができます。
4 事業の継続
経営者が急に退任した場合でも、事業承継計画があれば、事業の継続性を保ち、従業員や取引先との信頼関係を維持することが可能です。
5 税負担の軽減
事業承継税制などの税制優遇を活用することで、相続税や贈与税の負担を軽減し、後継者の経済的な負担を減らすことができます。
Q. 事業承継の方法は、どんな風に決定すればよいですか?
A. 事業承継の方法を決定する際には、以下のステップを検討することが重要です。
1 自社に合った事業承継の方法を検討する
事業承継の方法には親族内承継、社内承継、M&A、信託、株式上場など複数の方法があります。
それぞれのメリットとデメリットを考慮し、自社に最適な方法を選びます。
2 関係者と相談やすり合わせする
事業承継は経営者だけでなく、家族、従業員、取引先など多くの関係者に影響を及ぼします。
そのため、関係者との十分なコミュニケーションを取り、合意形成を図ることが必要です。
3 計画を実行する
合意に至った方法に基づき、具体的な事業承継計画を作成し、実行に移します。
事業承継は複雑なプロセスであり、税法や法律に関する知識が必要です。そのため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが望ましいです。
また、事業承継には時間がかかることが多いため、早めに計画を立て始めることが重要です。
詳細な情報や具体的な手順については、身近な専門家や、最寄りの事業承継・引継ぎ支援センターに相談しながら進めていきましょう。
Q. 私は現在50歳ですが、自分の会社の承継はいつから考えればよいでしょうか?
A. 事業承継の準備は、早ければ早いほど良いとされています。
一般的には、後継者の育成期間も含めて、5~10年程度の準備期間が必要とされています。
経営者の平均引退年齢が70歳前後であることを考慮すると、60歳頃から準備を始めることが推奨されていますが、50歳の現在から計画を始めることで、より充実した準備が可能になります。
事業承継の準備には、後継者選定、教育、経営権の移譲方法の決定、節税対策、事業承継に適した社内環境の整備など、多岐にわたる作業が含まれます。
これらの準備には時間がかかるため、早めに始めることで、慌てることなく、計画的に進めることができます。
また、事業承継は単に経営権を移譲するだけでなく、企業文化や価値観を次の世代に伝え、企業の持続可能性を確保する重要なプロセスです。そのため、事業承継計画は、経営者自身のビジョンや事業の将来像を反映させることが大切です。
専門家と相談しながら、自社に合った事業承継の方法を検討し、計画を立てていくことをお勧めします。
Q. 中小企業でも事業承継でM&Aを利用することはできないのでしょうか?
A. 中小企業における事業承継でM&Aを利用することは十分可能です。
実際、M&Aは事業承継の有効な手段として注目されており、親族内承継や社内承継が困難な場合に第三者への売却という形で事業を継続させる方法として利用されています。
M&Aを通じた事業承継を成功させるポイントは、専門家の活用、補助金、税制の特例措置などを上手く利用する事です。
事業承継の計画にM&Aを組み入れることで、事業の更なる発展、成長に恵まれるかもしれません。
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Q. 事業承継をすると相続税はかかるものなのでしょうか?
A. 事業承継については、様々な税金が関係してきますが、その中でも相続税対策は、事業承継を進める上でも 最も重要な税金の一つです。
事業承継では、自社株が相続財産としてカウントされる点がポイント
自社株の評価額がその他の財産と併せても基礎控除額以下であれば、課税されません。
ただし、自社株の評価額が思っていた金額より高いケースもよく見受けられますので、相続税はかからないだろうと 漠然に考えているのは少々危険です。
予め、専門家にご相談の上、自社株の評価を試算しておくことをお薦めいたします。
事業承継税制という特例措置
事業承継を行う際には、相続税がかかる可能性がありますが、日本には事業承継税制という特例措置があります。
この制度は、事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予、または免除するものです。
具体的には、法人版事業承継税制と個人版事業承継税制があり、それぞれ条件を満たすことで税負担を軽減できます。 事業承継税制を利用するためには、一定の要件を満たす必要があり、これには経営者や会社、後継者が満たすべき条件が含まれます。
また、後継者が事業を継続し、将来的に次の後継者に事業を承継させることができた場合には、本来支払うはずだった相続税を全額免除してもらえる可能性があります。
事業承継税制 関連リンク
Q. 贈与とは、どういう事ですか?
A. 贈与(ぞうよ)とは、一方の当事者が自己の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がそれを受諾することによって成立する契約のことです。
贈与できる財産の種類は多岐にわたります。一般的には、以下のような財産が贈与の対象となります:
贈与できる財産一覧
- 現金、預貯金
- 不動産(家屋や土地など)
- 有価証券(株式や債券など)
- 生命保険の給付金
- 車や家具、家電など家にある生活用品
- 貴金属や宝石
- 書画や骨とう品(美術品や古美術品など)
Q. 相続が起こる前に、後継者である息子に贈与しようと考えているのですが、贈与税はどれくらいかかるのでしょうか?
A. 相続が起こる前に息子さんに贈与を考えている場合、贈与税の額は贈与される財産の価値によって異なります。
贈与税は暦年課税制度に基づいて計算され、1年間にもらった財産の合計額が110万円を超えると贈与税が発生します。
具体的な贈与税(暦年課税制度)の計算方法は以下の通りです。
- ① 1年間に受け取った贈与の合計額を計算します。
- ② その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。
- ③ 残りの金額に対して、適用される税率を乗じて税額を計算します。
例えば、息子さんに2000万円を贈与した場合、贈与税の計算は次のようになります。
- ① 贈与の合計額:2000万円
- ② 基礎控除後の金額:2000万円 – 110万円 = 1890万円
- ③ 贈与税額の計算:1890万円に対する税率を適用して税額を計算します。
贈与税の計算は複雑であり、個々の状況によって異なるため、正確な税額を知るには専門家に相談することをお勧めします。
また、贈与税の申告は贈与を受けた側が行う必要がありますので、手続きについても専門家に確認すると良いでしょう。
生前贈与について詳しくはこちらをご覧ください。
Q. 相続時精算課税という、贈与に非課税枠が適応される制度があると聞いたのですが、事業承継に使えるのでしょうか?
A. 相続時精算課税制度は事業承継にも利用できます。この制度は、特定の条件を満たす場合に贈与税の非課税枠を適用することができるもので、事業承継税制と併用する事ができます。
相続時精算課税制度の適用を受けるための主な条件
- 贈与者が60歳以上であること。
- 受贈者が直系卑属の推定相続人または孫で、18歳以上であること。
事業承継税制と相続時精算課税制度を併用するメリット
- 税率が低くなるため税額が少なくなる
- 利子税の金額が少なくなる
- 相続時の負担を考えても税額が少なく済む
ただし相続時精算課税制度を選択すると、暦年贈与に変更することはできません。また、贈与が発生するたびに申告しなければならない点に注意が必要です。 事業承継税制の特例措置では、子や孫以外の後継者に対しても、年齢要件を満たしていれば、相続時精算課税を使うことができます。
これにより、事業承継税制に係る贈与以後に贈与された財産には相続時精算課税が適用され、その後の取り消しもできないという点が重要です。 事業承継において相続時精算課税制度を利用することは、早期に財産を移行し、将来の相続税対策につながるメリットがあります。
ただし、この制度の適用には複雑なルールがあるため、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
相続時清算課税について詳しくはこちらをご覧ください。
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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