経営承継円滑化法とは?
最終更新日:2026/03/05
目次
経営承継円滑化法
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(通称:経営承継円滑化法)は、日本を支える中小企業の事業承継を国が全面的にバックアップするために制定された法律です。
この法律に基づく認定を受けることで、「税制支援(事業承継税制)」「金融支援」「遺留分に関する民法の特例」など、会社を引き継ぐ後継者にとって非常に強力な支援を受けることができます。
本記事では、2026年(令和8年)3月末に申請期限が迫る「事業承継税制の特例措置」をはじめ、経営承継円滑化法の主な特長と活用メリットを、相続・事業承継の専門家である司法書士が分かりやすく解説します。
1. 事業承継税制(相続税・贈与税の納税猶予・免除制度)
事業承継における最大の壁は「自社株の引き継ぎに伴う多額の税負担(相続税・贈与税)」です。これを解決するのが事業承継税制です。
現在、従来の「一般措置」に加えて、圧倒的に条件が有利な「特例措置(10年間限定)」が設けられており、多くの企業がこの特例を活用して世代交代を進めています。
【重要】10年間限定の「特例措置」の3つのメガメリット
特例措置を活用すると、従来の一般措置と比べて以下の点で劇的に有利になります。
① 自社株にかかる贈与税・相続税が「100%(全額)」猶予される
従来の制度では相続税の80%しか猶予されませんでしたが、特例措置では対象株式数の上限が撤廃され、税額が100%全額猶予されます。
後継者がその後も事業を継続すれば、最終的に免除となります。(実質的に税負担ゼロで自社株の引き継ぎが可能です)
② 親族外承継や複数人の後継者にも対応
子供などの親族だけでなく、従業員や役員など親族以外の後継者も対象です。
さらに特例措置では、最大3人の後継者への承継が認められています。
③ 雇用維持要件が大幅に緩和
以前は「承継後5年間、従業員の平均8割以上を維持」できなければ納税猶予が打ち切られるという厳しい要件がありました。
しかし特例措置では、万が一業績悪化等で雇用を維持できなくても、認定支援機関の指導・助言を受けた理由書を提出すれば猶予が継続可能になりました。
将来の業績悪化リスクを気にせず制度を利用できます。
⚠️ 特例措置には「期限」があります!急いでご準備を
この非常に有利な特例措置を利用するには、以下の厳格な期限を守る必要があります。
• 特例承継計画の提出期限:2026年(令和8年)3月31日まで
• 贈与・相続の実施期限:2027年(令和9年)12月31日まで
※まずは「特例承継計画」を期限内に都道府県庁へ提出しなければ、この特例は一切使えなくなってしまいます。
検討中の経営者様は、早急な対応が必要です。
2. 遺留分に関する民法の特例(後継者を争族から守る)
後継者に自社株を集中させたくても、他の相続人(法定相続人)には最低限の遺産を受け取る権利である「遺留分(いりゅうぶん)」があります。
これが原因で、先代経営者の死後に後継者が他の親族から多額の金銭を請求され、会社の存続が危ぶまれるケースが後を絶ちません。
経営承継円滑化法では、一定の条件を満たし「推定相続人全員の合意」と「所要の手続き(経済産業大臣の確認+家庭裁判所の許可)」を経ることで、以下の民法特例を受けることができます。
1.除外合意(株式の分散を防ぐ)
先代経営者から後継者に生前贈与された自社株式を、遺留分算定の基礎財産から**「完全に除外」**する合意です。
⇒ これにより、後継者は他の親族からの遺留分減殺請求を気にすることなく、安定して会社の経営権(株式)を確保できます。
2.固定合意(後継者の経営努力を無駄にしない)
生前贈与された自社株式の評価額を、**「合意時点の評価額に固定」**する合意です。
⇒ 通常、遺留分は「相続発生時の時価」で計算されます。
つまり後継者の努力で業績が上がり株価が高くなると、他の親族に支払う遺留分も増えてしまうという矛盾がありました。
固定合意をしておけば、承継後にどれだけ株価が上がっても遺留分額は増えないため、後継者は安心して経営発展に取り組めます。
(※ただし、将来株価が下落した場合には不利になるため慎重な検討が必要です)
3.付随合意(相続人全員の公平性を保つ)
後継者以外の親族(兄弟姉妹など)に生前贈与した財産(現金や不動産など)についても、遺留分の対象から除外する合意です。
⇒ 後継者には自社株を、他の兄弟には現金や不動産を生前贈与し、それを互いに遺留分の対象外とすることで、親族間での不公平感をなくし、円満な合意(除外合意や固定合意)を得やすくする役割を果たします。
※実務上は、(1)の除外合意と(2)の固定合意の双方または一方を必ず行い、必要に応じて(3)の付随合意を組み合わせます。
3. 手続きの流れ(民法特例の場合)
遺留分に関する民法の特例を利用するためには、単に当事者間で合意書を作るだけでは法的な効力は発生しません。
以下の厳格な手続きが必要です。
1. 推定相続人全員での書面による合意
2. 合意成立の日から1ヶ月以内に経済産業大臣(都道府県窓口)へ申請し、確認を受ける。
3. 経済産業大臣の確認を受けた日から1ヶ月以内に、家庭裁判所へ申立てを行い、許可を受ける。
家庭裁判所からの許可が下りて初めて、合意は法的な効力を持ちます。
期限が非常に短いため、事前のスケジュール調整と専門家のサポートが不可欠です。
司法書士 鈴木 喜勝からのアドバイス(まとめ)
「事業承継は、税金対策(税理士の領域)と、法務・権利対策(司法書士の領域)の両輪が必要です」
事業承継税制(特例措置)を活用すれば、税金面での負担は驚くほど軽減されます。しかし、「税金はゼロになったけれど、親族間で株の奪い合い(争族トラブル)が起きてしまって会社が回らない」という事態になっては元も子もありません。
特例承継計画の提出(2026年3月末期限)を急ぐとともに、株式の権利を後継者に安全に集中させるための「遺言書の作成」「遺留分に関する民法の特例の活用」「種類株式の活用」など、法務面での生前対策を同時に進めることが、会社と従業員の未来を守る唯一の方法です。
当事務所では、提携する税理士と連携し、税務・法務の両面から練馬区の中小企業様の事業承継をトータルサポートしております。
「何から始めればいいか分からない」という経営者様は、ぜひお早めの無料相談をご活用ください。
参考サイト
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この記事を書いた専門家
- 司法書士事務所センス 代表
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。
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