(負担付)死因贈与契約
最終更新日:2024/03/26
目次
(負担付)死因贈与契約とは
負担付死因贈与契約とは、贈与者が贈与を受ける者に対して何らかの義務や負担を課すことができる契約です。
例えば、自分が死ぬまで面倒見てくれたら私の土地と建物をあげますといった生前に結ぶ契約です。
この契約は、贈与者の死亡によって効力が発生するもので、贈与者の意向を受け入れたと見なされるため、贈与者が亡くなった後、その意向を放棄することはできません。
例えば、贈与者が贈与を受ける者に対して、自分の面倒を見ることやペットの世話をすることなどの負担を課すことがあります。
これらの義務や負担は契約によって異なりますが、贈与を受ける者は、贈与者が亡くなるまでこれらの負担を果たす必要があります。
遺言書による遺贈とは異なり、負担付死因贈与契約は双方の合意に基づく契約であり、贈与を受ける者の意思も反映されています。
そのため、遺言書よりも実行性が高いとされています。ただし、遺留分侵害額請求権の行使を受ける可能性があるため、遺留分に配慮した内容にする必要があります。
負担付死因贈与契約の「負担付」って、どういう事?
「負担付」というのは、贈与をする方が、贈与を受ける方に、何らかの義務・負担を強いることです。
具体的には、”今後の身の回りの世話を続けて欲しい””同居して面倒を見て欲しい”といったケースが多く、遺言書よりも実行度合が強く、成年後見よりも自由度が高いという意味で、使い勝手の良い制度になっています。
どんな人が利用するべきか
負担付死因贈与契約は、特定の条件下で特に有効な選択肢となることがあります。
この契約を利用することが適している人は以下のような特徴を持つ方です。
介護や支援を受けている
介護や日常の支援を受けており、その見返りとして不動産などの財産を贈与したい場合。
ペットの世話を頼みたい
ペットの世話をしてもらう代わりに、財産を贈与したいと考えているペットの飼い主。
借金の返済を依頼したい
自宅の住宅ローンなどの借金を返済してもらう代わりに、贈与を検討している方。
同居を希望している
一緒に住んで支援を受けたいと考えている方。
これらのケースでは、負担付死因贈与契約が遺言書による遺贈よりも実効性が高く、受贈者の権利も守られる可能性が高まるため、相互の合意に基づく確実な契約として有効です。
ただし、遺留分侵害額請求権の行使を受ける可能性があるため、遺留分に配慮した内容にする必要があります。
遺言書との違い
死因贈与契約(負担付き)と遺言書の違いは、死因贈与契約は贈与者が亡くなることを前提とした贈与であり、受贈者に一定の負担を課すことができる点です。
一方、遺言書は、遺言者が自己の死後に財産をどのように分配するかを定めた法的文書で、通常、公証人によって正式に記録されます。
死因贈与契約は、贈与者の死亡を想定しており、贈与者が生存中は効力を持ちませんが、死亡時に効力が発生します。
この契約は、贈与者が死亡した際にのみ効力を持つ条件付きの贈与となります。
また、死因贈与契約は、贈与者が生前に受贈者に対して特定の負担を課すことができる点で、遺言とは異なります。
遺言書は、遺言者が亡くなった後の財産の分配に関する意思を示すもので、遺言者の死後にのみ効力を持ちます。
また、遺言者が生存している間なら変更することができ、遺言者の最終的な意思を反映し、相続人や受遺者に財産を分配する法的手段です。
要するに、死因贈与契約は生前に条件付きで行われる贈与であり、遺言書は死後の財産分配を定める法的文書です。
どちらも遺言者の死後に効力を発揮する点では共通していますが、形式や条件において違いがあります。
※遺言書について詳しくこちらをご覧ください。
成年後見制度との違い
負担付き死因贈与契約と成年後見制度の違いは、目的と機能にあります。
死因贈与契約は、贈与者が亡くなった後に特定の財産を受贈者に移転することを約束する契約です。
この契約は、贈与者の死亡を条件としており、生前は効力を持ちませんが、死亡時に効力が発生します。
また、負担付きの場合、受贈者は一定の義務や負担を負うことがあります。
一方で、成年後見制度は、判断能力が不十分な成人を保護し、その権利を支援するための法的制度です。
この制度では、成年後見人が選任され、後見人は被後見人の財産管理や日常生活の援助を行います。
成年後見制度は、主に認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない人々を対象としており、彼らが自己の利益を理解し、適切な意思決定を行うことを支援します。
要するに、死因贈与契約はある人が亡くなった後に財産を移転するための契約であり、成年後見制度は生きている間に判断能力が不十分な人を保護し支援するための制度です。
どちらも重要な法的役目がありますが、使用される状況と目的が異なります。
成年後見制度について詳しくはこちらをご覧ください。
死後事務委任契約との違い
死後事務委任契約と負担付死因贈与契約は、どちらも個人が亡くなった後の事務を扱う契約ですが、目的とする内容に違いがあります。
死後事務委任契約は、個人が亡くなった後に必要となる事務手続きを第三者に委任する契約です。これには葬儀の手配、未払い料金の清算、サービスの解約などが含まれます。
一方で、負担付死因贈与契約は、贈与者が亡くなった後に発効する贈与契約で、贈与を受ける者に対して何らかの義務や負担を課すものです。例えば、贈与者が亡くなった後に、贈与を受ける者が特定の条件を満たす必要がある場合などです。
要するに、死後事務委任契約は死後の事務手続き全般をカバーするものであり、負担付死因贈与契約は、贈与者の死後に発生する特定の贈与に関連する義務や負担を定めるものと言えます。
どちらも遺言書とは異なり、生前に契約を結ぶことで、個人の意思を確実に実現するための手段となります。
死後事務委任契約について詳しくはこちらをご覧ください。
負担付死因贈与契約はどうやって契約するのか
負担付死因贈与契約を結ぶ際には、以下の流れを踏むことが一般的です。
① 契約の目的と内容の明確にする
贈与する資産と受贈者に課される負担の内容を具体的に決定します。
② 受贈者と合意をする
受贈者との間で契約内容について合意に達します。
③ 公正証書の作成
公証人の立会いのもと、公正証書を作成します。これにより、契約内容が法的に保護され、実行の確実性が高まります。
④ 登記手続き
不動産を贈与する場合は、必要に応じて登記手続きを行います。
負担付死因贈与契約は、贈与者の死後に効力が発生するため、遺言書とは異なり、受贈者の合意が必要です。
また、贈与者が生前に撤回することが困難であるため、受贈者が負担を履行する動機付けとなります。
なぜ公正証書を利用した方が良いのか
負担付死因贈与契約を公正証書で残すことが推奨される理由は、以下の点にあります
法的に保護してくれる
公正証書は法的な効力を持ち、契約内容が正確に記録され、保護されます。
これにより、贈与者の意向が確実に実行されるようになります。
撤回されるのを防止できる
公正証書によって契約が正式に記録されるため、贈与者が生前に契約を撤回することが困難になります。
これは、受贈者が負担を履行する動機付けとなります。
登記手続きが容易になる
不動産を対象とする死因贈与の場合、公正証書は仮登記及び本登記手続きにおいて必要書類として利用でき、手続きをスムーズに進めることができます。
紛争を予防できる
公正証書による明確な記録は、将来的な紛争を防ぐ助けとなります。相続人間でのトラブルを避けるためにも有効です。
確実に実行される
公正証書は受贈者も合意している証拠となるため、贈与者の意思を確実に実行することができ、遺言書による遺贈よりも実効性が優れています。
以上の理由から、負担付死因贈与契約を公正証書で残すことは、関係者の権利を守り、意思を確実に反映させるために非常に重要です。
ちなみに、負担付死因贈与というものは法的にはありません。
言葉として定着しつつありますが、一般的な贈与に「贈与者の死亡により、その効力が生じる」という条件合意が付いているだけです。
贈与契約書には公正証書を利用するのが最も安全かつ確実と言えるでしょう。
負担付死因贈与契約の注意する事とは
(負担付)死因贈与の手続きにおいて、注意をしなければならないのは、契約内容の実行に疑問が発生したり、相続人間でトラブルが出ないようにしておくことです。
負担付死因贈与契約における注意点は以下の通りです。
契約内容を明確にし、贈与の対象資産をはっきりさせる
負担付死因贈与契約における贈与の対象資産は、不動産や預貯金など、具体的な資産を指します。
契約内容には、贈与の対象となる資産と、受贈者に課される負担の内容を明確に記載する必要があります。
特に、不動産の場合は登記簿や登記事項証明書に従って正確に記載し、預貯金の場合は銀行名や口座の種類・番号・名義人を明示することが重要です。
負担の内容
負担付の場合の注意点としては、贈与者が生前に受贈者に一定の義務付けをすることで、例えば「今後の身の回りの世話を続けて欲しい」「同居して面倒を見てほしい」といった具体的な負担が考えられます。
契約の実行に疑問が生じないよう、また相続人間でトラブルが発生しないよう、契約内容を明確にし、公正証書で書面に残すことが推奨されます。
さらに、死因贈与契約は遺言書と異なり、贈与者の死後も受贈者が合意した内容を放棄することができないため、意思を確実に実現したい場合に有効です2。遺言書による遺贈との違いも理解しておくと良いでしょう。
執行者の指名
死因贈与契約も遺言書と同様に、執行者を指名することが可能です。
相続人との利害対立を避けるためにも、専門家を執行者として指定することが推奨されます。
遺留分の考慮
死因贈与契約も遺贈と同様に、遺留分侵害額請求権の行使を受ける可能性があるため、遺留分に配慮した内容にする必要があります。
負担付死因贈与契約の解除方法
負担付死因贈与契約の解除方法については、契約における負担の履行状況によって異なります。以下が、主なケースと解除方法です。
負担が履行されていない場合
負担がまだ履行されていない場合、贈与者は贈与契約の規定に従って契約を撤回することが可能です。
この場合、贈与者は単独で契約を解除することができ、特に法的な手続きを必要としません。
負担が一部でも履行された場合
負担が全部または一部履行された場合、原則として贈与者は契約を解除することができません。
これは、受贈者が既に何らかの形で負担を果たしているため、契約のバランスを考慮して保護されるべきだからです。
特段の事情がある場合
ただし、「特段の事情」が存在する場合は、遺贈の規定により契約を解除することができる可能性があります。
この「特段の事情」とは、契約の目的が達成不可能になったり、契約の継続が明らかに不公平になったりするような、通常想定されない状況を指します。
解除手続きの方法
解除を行う際には、公正証書による契約であれば、その解除も公正証書で行うことが望ましいです。
これにより、解除が法的に有効であることを証明しやすくなります。
また、不動産などの登記が必要な資産に関しては、解除に伴う登記手続きが必要になる場合があります。
専門家のアドバイス 契約の解除は複雑な法的問題を含むため、実際に解除を検討する際には、法律の専門家に相談することを強くお勧めします。
契約の解除は、多くの場合、複雑な法的判断を伴うため、具体的なケースに応じた専門的なアドバイスが必要となります。
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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