相続欠格とは?相続権の喪失条件や相続人排除との違い
最終更新日:2024/05/23
相続欠格とは?
このページでは相続欠格について、ご説明いたします。
相続欠格とは、民法891条に基づき、相続秩序を保つために設けられた制度です。この制度は、相続人となる資格を失わせるための規定であり、特定の行為を犯した者に対して相続権を剥奪することを意味します。
法定相続人となるはずであった人であっても、一定の不正行為がある場合には、その相続人となる資格を失う場合があります。相続欠格事由は、民法に五つ規定されており、生命侵害に関する行為、遺言への違法な干渉行為の二種に大別されます。
相続欠格となる事由は5つ
相続欠格になる理由は、以下の5つのケースに該当する場合です。
1 故意に被相続人を死亡させた者
相続欠格になる最も一般的な理由は、故意に被相続人を死亡させた者です。刑に処せられた者が相続欠格となります。
この規定は、相続に関する法律を犯すような行為に対する制裁措置として設けられています。
2 被相続人が殺害されたことを知っていながら告発しなかった者
被相続人が殺害されたことを知っていながら、告発せず、または告訴しなかった者も相続欠格となります。
ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではありません。
3 詐欺または強迫によって相続に関する遺言を妨げた者
相続に関する遺言を詐欺または強迫によって妨げた者も相続欠格となります。遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者も同様です。
4 被相続人に相続に関する遺言をさせた者
詐欺または強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者も相続欠格となります。
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、または隠匿した者
相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者も相続欠格となります。
相続欠格になるとどうなる?
上記の欠格事由のいずれかに該当するとすぐに相続資格の喪失の効果は発生し、同時に受遺者となることもできなくなります。
欠格の効果が発生するために、他の相続人などが家庭裁判所や市町村役場での手続きなどは必要ありません。
ただし、相続欠格事由に該当しても、あらゆる相続資格を失うわけではありません。
特定の被相続人と相続欠格者との間で生ずるにすぎず、欠格者であっても他の者の相続人となることはできますし、欠格者の子供は代襲相続人となります。
相続欠格の手続き方法は?
相続欠格は重大な事由に該当するため裁判などの手続きは必要なく、民法891条に抵触する事実があれば相続権が剥奪されます。
ただし、相続欠格を認めない場合は裁判所で争うこともあります。
相続人排除との違いは?
相続欠格と相続人の排除は、相続権を失わせる制度ですが、以下の違いがあります。
相続欠格でお困りという方、お気軽にご相談ください。
被相続人の意思に関係なく適用されます。
相続人の排除 | 相続欠格 | |
---|---|---|
どんな制度か | 相続人が欠格事由に該当すると自動的に相続権を失う制度です。 | 被相続人が家庭裁判所に請求して相続人から相続資格を奪う制度です。 |
事由 | 被相続人に対して虐待や非行がある場合に適用されます。 | 殺人、虐待、詐欺、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿などの重大な違法行為が該当します。 |
手続の方法 | 被相続人が家庭裁判所に請求する必要があります。 | 欠格事由に該当すると自動的に相続権を失う制度です。手続きはありません。 |
効果 | 相続権を失わせる事ができます。推定相続人の廃除は被相続人の意思に基づいて行われます。 | 相続権を失い、遺産を受けることはできません。ただし、代襲相続により子がいる場合、欠格者に代わって相続人となることが可能です。 |
戸籍の記載 | 戸籍に記載あり。 | 相続欠格者は戸籍に記載されませんが、不動産名義変更などで相続欠格者がいることを証明する場合は「相続欠格証明書」を提出することがあります。 |
取り消しは可能か | 取り消しは可能であり、被相続人がいつでも家庭裁判所に請求できます。 | 取り消すことはできません。 |
相続欠格は自動的に適用される一方、相続人廃除は被相続人の意思により行われる点に注意してください。
相続人排除について詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
相続において相続欠格になる事は僅かなケースですが、対象となると相続人の地位を失うことになり、取り消す事が出来ません。
注意すべき点
相続欠格事由に該当する場合、遺言があっても相続財産を受けることはできません。
しかし、相続欠格を受けた者の子がいる場合、代襲相続が可能です。つまり、欠格者に代わって子が相続人となります。
相続欠格は自動的に相続人の地位を喪失するため、特別な手続きや証明は必要ありません。
ただし、相続欠格を認めない場合は裁判所で争うこともあります。
また。相続人排除と違って。相続欠格は戸籍には記載されません。不動産の名義変更などで相続人全員が必要な場合、相続欠格者がいることを証明する「相続欠格証明書」が必要です。
相続欠格は重大な事象であり、遺産分割や相続人の権利に大きな影響を与えます。
相続欠格で、お困りの方は当窓口へお気軽にご相談下さい。
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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