養子と遺産相続 実子と同じ権利を持つ!?

最終更新日:2024/05/25

養子と遺産相続

このページでは、養子と遺産相続についてご説明いたします。

養子縁組とは、親子の血縁のない者同士が、養子縁組することによって、親子関係にない者との間に新たな法律上の親子関係を作り出す制度です。

養子になると、その子は縁組の日より養親の嫡出子としての身分を取得するので養子は実子と同一の相続権を有します

ただし、その者が普通養子か特別養子かによって、同じ養子という立場でも取扱いが一部異なるので注意が必要です。

普通養子とは?

普通養子とは、養子が実親との親族関係を存続したまま、養親との親子関係をつくる縁組のことです。

普通養子縁組も特別養子縁組も、法律上の親子関係を生じさせる点では同じです。ただし、普通養子縁組は、特別養子縁組に比べて手続きが簡易で、条件も緩やかです。

成立条件

普通養子縁組は、養親と子どもの合意さえあれば、成立します。

自分たちで養子縁組届を書いて役所に提出すれば受理され、家庭裁判所などでの手続を通す必要はありません。

普通養子縁組の条件

養親の年齢

養親は20歳以上である必要があります。

養子の年齢

養子になる方は、15歳未満である必要があります。

15歳未満の場合、養子の法定代理人(親権者等)が、養子本人に代わって養子縁組の合意をします。

養親と養子の合意

養親と養子の合意が必要です。

配偶者の同意

養親または養子に配偶者がいる場合、原則として、その配偶者の同意が必要です。

どのような場合によく利用されているか

再婚相手の子どもを養子にする場合
相続税対策で孫を養子にする場合
娘の結婚相手を婿養子にする場合

実親との関係

普通養子縁組では、養子になった後でも、実の親(生みの親)との親子関係に変わりはありません。

子どもからすれば、実の親と養親とが両方存在することになります。

実親との親子関係を完全に断ち切らずに、養親との新たな親子関係を築きます。

戸籍の記載

普通養子縁組の場合、養子は養親の戸籍に入り、養親の氏(名字)になります。

続柄は「養子」または「養女」と記載され、実の親の名前も記載されます。

養親の既存の戸籍に養子が入る

養親の戸籍に養子が入ります。養親が筆頭者でない場合、養親を新しい戸籍で独立させて、そこに養子を入れる形になります。

養子の名字は養親と同じ名字に変わります。

戸籍はそのままで変わらない

養親と養子が同じ戸籍内に存在する場合、戸籍は変わりません。ただ、戸籍の身分事項の欄に「養子縁組」と記載されるだけです。

養子が夫または妻の戸籍に入っている場合も同様です。

養親と養子がともに夫婦である場合

養親と養子がともに夫婦である場合、養親の戸籍に養子が入ることはありません。

養親が新しい戸籍を作り、養子がそこに入ります。

配偶者も自動的にその戸籍に入籍します。

養子夫婦で新しい戸籍を作る

養子が既婚である場合、養子夫婦で新しい戸籍を作ります。

養親と同じ名字の戸籍に入ります。

子どもは自動では入籍されないため、個別に入籍届を出さないと、子どもを同じ戸籍に入れることはできません。

普通養子の相続

産みの親と育ての親、両方から相続できる

普通養子縁組は、養親と実親の親子関係が継続します。そのため実親が亡くなっても養子は実親を相続でき、養子は養親と実親の両方から相続できることになります。養子の法定相続分の割合は実子と同じです。単に子供が一人増えたイメージです。

反対に、養子が先に死亡し、親が法定相続人となる場合には、養親及び実親はともに法定相続人になります。そして、その法定相続分の割合は実親と養親に差は有りません。

普通養子縁組と代襲相続

養子が養親より先に死亡した場合、代襲相続人となるかは、養子の子の出生が養子縁組より前か後か異なります。

養子縁組前に出生した養子の子供は代襲相続人にはなれませんが、養子縁組後に出生した養子の子供は代襲相続人となります。

特別養子縁組とは?

特別養子縁組とは、実親及びその血族と親族関係を終了させて、家庭裁判所の審判により養親の嫡出子としての親子関係をつくる縁組のことです。

成立条件

特別養子縁組は、家庭裁判所の審判が必要です。

家庭裁判所では、特別養子縁組を認める条件を検討し、条件を満たす場合にだけ許可しています。
以下の条件を満たす必要があります

特別養子縁組の条件

配偶者がいること

特別養子縁組の養親になるには、配偶者がいることが条件です。
配偶者と共に養子縁組をすることになります。

養親の年齢

養親となる方は、25歳以上である必要があります。
養親となる夫婦の一方が25歳以上であれば、もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。

養子の年齢

養子になるお子さんの年齢は、養親となる方が家庭裁判所に審判を請求するときに15歳未満である必要があります。
お子さんが15歳に達する前から養親となる方に監護されていた場合には、お子さんが18歳に達する前まで、審判を請求することができます。

実親の同意

特別養子縁組の成立には、養子となるお子さんの父母(実父母)の同意が必要です。

ただし、実父母がその意思を表示できない場合や虐待などの事由がある場合は、実父母の同意が不要となることがあります。

6ヶ月以上の監護期間

特別養子縁組成立のためには、養親となる方が養子となるお子さんを6ヵ月以上監護していることが必要です。

監護期間は特別養子縁組の請求時から起算されます。

実親との関係

特別養子縁組では、実親との親子関係は断絶されています。実親が亡くなっても子は相続人とならず、実親の遺産を相続することはできません。

戸籍の記載

養子の戸籍から実親の名前が除籍される

特別養子縁組では、実親との親子関係が完全に切れ、養子の戸籍から実親の名前が消えます。

新しい戸籍が編製される

養子を筆頭者とする新しい戸籍が作成されます。この新戸籍では、本籍地は実親の本籍地と同じであり、氏(苗字)は養親の氏となります。

養親の戸籍に養子が入る

養親の戸籍に養子が入ります。養親が筆頭者でない場合、養親を新しい戸籍で独立させて、そこに養子を入れる形になります。

続柄の記載

養子の身分事項欄には「養子」と記載されます。
養親の名前も記載され、続柄は「長男」や「長女」などになります。

特別養子の相続

特別養子は嫡出子の身分を取得するので、実子同様の相続権が発生します。このため、戸籍上は養親との関係は「長男」などの実子と同じ記載がされます。

なお、特別養子縁組の場合、基本的に夫婦そろって養子縁組します。

実親とは法律上は他人同然となりますので、お互いにや続権しませんし、扶養義務も発生しません。

まとめ

普通養子縁組と特別養子縁組の違い

  普通養子縁組 特別養子縁組
実親との関係 実親との法律上の親子関係が維持されたまま、養親との間で新たに法的な親子関係を生じさせる方法です。 実親との法的な親子関係を断絶し、養親との間で新たに法的な親子関係を成立させる方法です。
条件 養子縁組届を提出するだけで成立し、手続きが簡易で条件も緩やかです。 家庭裁判所の審判が必要であり、条件が厳しいです。
相続権 実親と養親の両方が扶養義務を負い、相続権を取得します。 養親のみが扶養義務を負い、相続権を取得します。

養子と実子は、相続において同じ権利を持ちます。

特別養子縁組をした場合は、実親との法的な親子関係が完全に消滅するため、実親が亡くなった時の相続権を失います。

養子縁組をした場合でも相続権を持つため、遺産相続においては実子と同じ権利を享受します。

ただし、具体的なケースによって異なるため、専門家に相談されることをお勧めします。

養子と遺産相続についてお困りの方、ぜひお気軽にご相談ください。

参考リンク

総務省 養子縁組について知ろう

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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