死後事務委任契約 生前に決める未来の手続き

最終更新日:2024/03/17

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、個人が亡くなった後に必要となる様々な事務手続きを、生前に第三者に委任する契約のことです。

この契約により、葬儀の手配、遺品整理、未払い料金の清算、サービスの解約など、死後に発生する事務をスムーズに進めることができます。特に、親族がいない、疎遠で頼れない、あるいは負担をかけたくない場合に有効です。

どんな葬儀を行いたいのかといった要望や、散骨などを指定したりする場合には、実際に葬送を行うことになる人々との話し合いや事前の準備をきちんとしておく事が大切です。

また、老後の生活の質を保ち、財産を適切に管理する事は、死後の相続におけるトラブルを防ぐ上で重要です。死後事務委任契約は、相続財産の管理や処分、さらには祭祀の継承に関する紛争を未然に防ぐ効果的な手段とされています。

このような契約は、遺言の意図を正確に反映させ、死後の事務を効率的に進めるための重要なツールです。

どんな人が利用するべきか

死後事務委任契約は、以下のような方々に推奨されます:

  • 親族がいない、または疎遠で頼れない人
  • 高齢の家族に負担をかけたくない人
  • 家族や親族に迷惑をかけたくない人
  • 内縁関係や事実婚の人
  • 家族と埋葬方法などの希望が異なる人

契約内容

死後事務委任契約の契約内容は、葬儀や埋葬に関する手続き、親族・知人への連絡、未払い料金の支払い、サービスの解約など、死後に必要となる事務全般をカバーします。

依頼者の意向に沿った形で事務を進めるため、具体的な依頼内容を契約書に明記します。

契約内容の例

死後事務委任契約では、以下のような事務を依頼することができます:

  • 葬儀や埋葬の手続き
  • 行政手続きの対応
  • 契約やお金に関する手続き
  • 親族など関係者への連絡
  • 遺品およびデジタル遺品、家財道具や生活用品の整理に関する事務
  • 残されるペットの世話

契約内容の注意点

死後事務委任契約を結ぶ際には、以下の点に注意が必要です。

信頼できる代理人を選ぶ

契約を締結する際、受任者を遺言執行者としても選任し、死後事務と遺産分割の遂行を確実にするためには、事前に遺言執行者との十分な意思確認が必要です。

契約内容を明確にする

具体的な事務内容や責任範囲を明確に定めることが重要です。特に、葬儀や埋葬に関する希望事項や費用の支払い方法などについては注意が必要です。契約書の作成段階で法律専門家のアドバイスを受けることで、契約内容の明確化と適法性の確保が図れます。

契約の有効性と法的制約

死後事務委任契約は、生前に発生する手続きは契約できません。

また、相続や身分関係に関する事項は契約できません。


これらの注意点を踏まえ、死後事務委任契約を検討する際には、専門家のアドバイスを仰ぐことをお勧めします。契約内容が適切に設計されているかどうかを確認し、将来的なトラブルを避けるためにも、法的なサポートを活用することが大切です。

遺言や見守り契約との違い

遺言との違い

死後事務委任契約は遺言とは異なり、相続分の指定や遺産分割方法など法的な拘束力を持つ事項については規定しません。遺言ではカバーできない、具体的な事務手続きを委任するための契約です。

遺言で葬儀や法要のやり方を指定する方もいらっしゃいますが、遺言には法的強制力はありません。

そのため、確実に生前の希望を叶えるには死後事務委任契約をしておく必要があります。

死後の事務が確実に行われるようにするために、遺言で祭祀の主宰者を指定したり、遺言で遺言執行者を指定して、執行内容をその遺言執行者との死後事務委任契約で取り決めておく方法も考えられます。

遺言で祭祀の主宰者に、「遺言者葬儀費用に充てるために、○○円を預託してあるので、それを使用して下さい」と指定する事もできます。

※遺言についてはこちらをご覧ください。

見守り契約との違い

見守り契約とは、任意後見契約が生じるまでの間、定期的な訪問によって、ご本人の心身の健康状態を把握して見守るためのものです。任意後見契約を開始する時期を見極めるためにも役立ちます。

任意後見人・成年後見人等は、ご本人が死亡した時点でその職務が終了しますし、見守り契約のみの場合では、死後の事務を行うための財産的裏付けがなく、葬儀費用等の支払いを行う事ができなくなります。

※任意後見についてはこちらをご覧ください。

まとめ

死後事務委任契約は、個人の死後に発生する事務手続きを円滑に進めるための重要な手段です。 自身の意向を反映させ、親族や知人に負担をかけないためにも、適切な計画と契約が推奨されます。 具体的な契約内容や手続きについては、専門家に相談することをお勧めします。また、契約を検討する際には、相続全般に関する観点も踏まえる事が重要です。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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