後見人の失敗しない選び方
最終更新日:2024/03/16
法廷後見人の選び方
法廷後見の場合、任意後見と異なり後見人は家庭裁判所が選任します。
※法廷後見人と任意後見人の違いはこちら
しかし、後見開始審判の申立書には、後見人の候補者を記載する欄があり、ここに候補を記載しておけば考慮してもらえます。
ただし、家庭裁判所の家事調査官が調査して、相続関係等から不相当であるとの判断がされると、候補が記載されていても別途選任されます。
候補が記載されていないときは、家庭裁判所が司法書士などから適任者を探して、選任します。
また、後見開始の審判申立書に書く候補者を誰にするべきかについては、人によって考えが異なります。
過去の例では、子供や兄弟、配偶者等の親族がなることが多いようです。
理想的な法廷後見人とは
後見人を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。
後見人は、判断能力が低下した際に、財産管理や日常生活の決定などをサポートする重要な役割を担います。以下に、後見人を選ぶためのポイントをまとめました。
理想的な法定後見人 一覧
信頼できる
後見人には、法律上の大きな権限が与えられます。そのため、信頼できる人物を選ぶことが最も重要です。家族や親族、または長年の友人など、個人の価値観や意志を理解し、尊重してくれる人が望ましいでしょう。
コミュニケーション能力がある
後見人は、本人が自分の意志を表明できない状況でも、本人の意向を推測し、最善の決定を下す必要があります。そのため、コミュニケーション能力が高く、本人の意向を理解しやすい人が適任です。
責任を持って財産を管理できる
後見人は、本人の財産を適切に管理し、必要に応じて利用する責任があります。財務知識があり、責任感が強く、経済的に安定している人が適しています。
良好な健康状態
後見人は長期間にわたってその役割を果たす可能性があるため、健康であり、本人より若い方が望ましいです。
法的知識がある程度ある
後見人は法的手続きを理解し、適切に対応できる必要があります。法律の専門家でなくても、基本的な法的知識がある人や、必要に応じて専門家の助言を求められる人が適任です。
近くに住んでいている
可能であれば、後見人は本人の居住地に近い場所に住んでいることが望ましいです。これにより、緊急時の対応や日常的なサポートが容易になります。
避けるべき法廷後見人の候補者とは?
自分の利益を優先する人
被後見人の財産を不適切に管理することにつながり、結果として被後見人に損害を与えることになりかねません。また、信頼性が疑われ、後見人としての職務を適切に果たすことができなくなります。
義務や責任を理解していない人
後見人としての義務や責任についての知識が不足している人は、不適切な行動を取るリスクがあります。
不正行為の歴史がある人
過去に財産管理に関して不正を行ったり、信頼を裏切ったりした人は、後見人には適さないとされています。
家族関係のトラブルを抱えている人
家族間で意見の対立やトラブルがある場合、後見人として公平な判断を下すことが難しい可能性があります。
多額の借金を抱えている人
法廷後見人は被後見人の財産を管理する責任があるため、自身の財務状況が不安定では、その職務を適切に果たすことが疑問視されます。
また、自分の借金を返済するために被後見人の資産を不適切に利用する誘惑に駆られる可能性があります。これは、被後見人の利益を守るという後見人の基本的な義務に反します。
本人と同年齢またはそれ以上の高齢者
高齢者も判断能力が低下する可能性があるうえに、本人よりも先に健康問題が発生しやすくなり、後見人としての職務を長期間安定して行うことが困難になる可能性があるためです。
共同後見や法人後見という方法もある
場合によっては、複数の人が共同で後見人を務めることも可能です。
これにより、負担を分散し、より効果的なサポートを提供できます。
最近は、身上監護は親族、財産管理は司法書士が担当するという「共同後見」や、法人自体を後見人にする「法人後見」が増えてきつつあります。
財産管理が中心になる場合は、第三者が客観的な立場で管理した方が望ましい場合も多いのでしょう。
また、相続人が複数存在する場合も、共同後見として、話し合いで後見事務を行うのがよい場合もあります。
法廷後見人の選び方 まとめ
法廷後見人が不適切な管理を行った場合、解任されることや、民事責任、さらには刑事責任を問われることもあります。選ぶ際は、これらの点を考慮し、本人の利益を最優先に考える事が重要です。
また、家庭裁判所が後見人の適任者を選ぶ際には、被後見人の資産状況、経歴、家族関係、判断能力の低下レベルなどを総合的に考慮します。
後見人は、本人の人生において非常に重要な役割を果たすため、慎重に選ぶ必要があります。
適切な後見人を選ぶ事で、本人の尊厳と自立を守り、安心して生活を送ることができるようになります。
当窓口や、下記の専門の窓口でもご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
法定後見人を選ぶ際に相談できる施設一覧
権利擁護相談窓口
法定後見制度に関する相談ができる窓口で、地域から探すことができます。権利擁護支援体制全国ネットの「K-ねっと」を通じて検索することが可能です。
リンクはこちら
各市区町村の中核機関や地域包括支援センター、社会福祉協議会
成年後見制度に関わっている専門職の団体等の地域の相談窓口で、成年後見制度を利用するための手続きや必要な書類、成年後見人について相談ができます
最寄りの公証役場
任意後見制度に関する相談が可能です。公証役場一覧は、日本公証人連合会のウェブサイトで確認できます。
家庭裁判所
法定後見制度の手続きについて相談する事ができます。
最寄りの家庭裁判所の検索はこちら
任意後見の選び方
任意後見の場合は法定後見の場合と異なり、自分で自由に後見人の候補者(任意後見受任者)を選任することができます。
任意後見制度について詳しくはこちら
ただし、以下の人は欠格事由に該当しますので、後見人にはなれません。
任意後見人の欠格となる人 一覧
未成年者
未成年者は法律上、完全な契約能力を有していないため。
家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
一度、職務を不適切に行ったとして解任された経歴を持っている場合、その人の信頼性が損なわれ、再び同様の責任ある役割を果たすことは法律上認められていません。 家庭裁判所がこれらの人々を解任するのは、通常、重大な義務違反や不正行為があった場合であり、そのような過去を持つ人物を再度信頼することは、被後見人の利益を守る上でリスクが伴います。
破産者
破産者とは経済的に破綻しており、債権者に対して支払いができなくなった状態を指します。
このような財務状況の人物に、他人の財産管理を任せることは法律で禁止されています。破産者は、金銭的な問題を抱えているため、被後見人の財産を適切に管理する能力が疑問視されるからです。
ただし、破産手続きを経て免責(破産手続きにおいて、裁判所から借金の返済義務から解放される事)を受けた人は、その後は後見人になることができます。
免責を受けた人は、経済的に再出発する機会を得るため、後見人としての職務を適切に果たすことが期待できるとされています。
ただし、免責を受けたとしても、後見人として選任されるかどうかは、その人の適格性や本人の財産状況、申立にあたっての親族の同意など、裁判所が考慮する様々な事情によって決定されます
行方不明者
任意後見人は、委任者の財産管理や日常生活のサポートを行う重要な役割を担っており、その職務を果たすためには安定した連絡が取れる状態にあることが必須です。
本人に対して訴訟をした者、その配偶者及び直系血族
訴訟を行ったことがある者やその親族は、利益の衝突が生じる可能性があるため、後見人としての中立性や公正性が損なわれる恐れがあります。
そのため、法律で任意後見人としての資格を持つ事ができません。
不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
判断能力が不十分な人の財産管理や日常生活のサポートを行う重要な役割を適切に果たすためには、高い倫理観と責任感が求められます。
任意後見人の選び方 まとめ
身上監護が中心であれば、親族や社会福祉士等の方がきめの細かい後見ができるかも知れませんが、財産管理が中心であれば司法書士の方が適切な管理ができるかもしれません。
注意をしなければならないのは、後見人にも将来何があるか分からないことです。後見人の業務の継続性を考えると信頼できる法人を後見人にする「法人後見」という方法もあります。
現在法人後見をしている機関としては、日本司法書士連合会が設立した(公社)成年後見センター・リーガルサポートがあります。
まとめ
任意後見人は、本人が判断能力を十分に持っているうちに、将来の判断能力の低下に備えて選任されます。選び方のポイントは、信頼性、経済的な安定性、本人との関係性です。公証役場で任意後見契約を作成し、後見監督人の監督を受けます。
一方、法定後見人は、本人の判断能力が既に低下している場合に、家庭裁判所によって選任されます。選び方では、本人の利益を最優先に考えることができるか、財産管理の経験や知識があるかが重要です。家庭裁判所、権利擁護相談窓口、市区町村の中核機関などで相談が可能です。
どちらの後見人も、被後見人の利益を守り、代表するために必要な判断能力、健康状態、時間的余裕を持ち合わせていることが望ましいとされています。
また、不正行為や利益の衝突を避けるための高い倫理観も必要です。適切な後見人の選定は、被後見人の安定した生活と財産保護にとって非常に重要です。
選び方に迷った場合は、専門家に相談することをお勧めします。
この記事を書いた司法書士
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
最新の記事
- 2024年9月4日3ヶ月経過後の相続放棄について
- 2024年9月4日相続放棄をすると生命保険(死亡保険金)は受け取れるのか
- 2024年8月25日相続放棄の相続順位 最後は誰に順番がまわる?
- 2024年1月26日相続に専門特化している事務所です