相続不動産の評価方法と問題点

最終更新日:2024/07/18

相続不動産の評価方法

相続税の負担を考える際に、最も大きな影響を与える財産の一つが不動産です。

不動産の財産価値が高ければ高いほど、相続税の負担も大きくなります。

そのため、不動産の財産価値をどのように評価するかが重要なポイントとなります。

具体的な不動産の相続税評価額は、以下の方法で算出されます。

土地の評価方法

路線価方式

路線価方式は、国税庁が毎年公表する路線価を基にして評価する方法です。

路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を指します。

この路線価に土地の面積を掛け合わせて評価額を算出します。

路線価方式の計算方法

路線価の確認

国税庁の路線価図で、評価対象の土地が面する道路の路線価を確認します。

土地の面積

固定資産税の納税通知書などから土地の面積を確認します。

評価額の算出

路線価に土地の面積を掛け合わせます。

土地の評価額 = 路線価 × 土地の面積 土地の評価額=路線価×土地の面積

倍率方式

路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。

倍率方式は、路線価が設定されていない地域で用いられる方法です。

この場合、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価額を算出します。

倍率方式の計算方法

固定資産税評価額の確認

固定資産税の納税通知書から評価額を確認します。

倍率の確認

国税庁の評価倍率表で該当する倍率を確認します。

評価額の算出

固定資産税評価額に倍率を掛け合わせます。

土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率 土地の評価額=固定資産税評価額×評価倍率

建物の評価方法

建物の評価額は、固定資産税評価額をそのまま使用します。

補正率の適用 土地の形状や利用状況によっては、補正率を適用して評価額を調整することがあります。例えば、角地や奥行が長い土地などは、利用価値が異なるため補正が行われます12。

相続税評価額の影響 不動産の相続税評価額が高いと、相続税の負担も大きくなります。

例えば、評価額が1億円の土地を相続する場合、その評価額に基づいて相続税が計算されます。

評価額が高ければ高いほど、相続税の総額も増加します。

評価額を抑える方法

相続税の負担を軽減するためには、評価額をできるだけ低く抑えることが重要で、以下の方法があります

貸家建付地評価減

賃貸用の建物が建っている土地(貸家建付地)の評価額を減額する制度です。

これにより、相続税の評価額を低く抑えることができます。

小規模宅地等の特例

被相続人の居住用宅地や事業用宅地に対して適用される特例で、一定の面積までの宅地の評価額を大幅に減額することができます。

例えば、居住用宅地の場合、330㎡までの部分について80%減額されます。

例えば、評価額が1億円の土地に対して、小規模宅地等の特例を適用すると、評価額が2,000万円(1億円の20%)に減額されます。

このように、特例を利用することで相続税の負担を大幅に軽減することができます。

※不動産の評価を下げる事に関して、詳しくはこちらのページをご覧ください。

相続不動産の評価における問題点

評価方法の違い

相続税評価額

相続税を計算するための基準となる価格で、通常は実際の取引価格(実勢価格)の約8割程度。

実勢価格

実際の市場での取引価格。相続人の間で評価額の基準が異なると、意見が対立する事があります。

不動産の特性

不動産は流動性が低く、すぐに現金化できないため、相続税の納税期限までに売却が難しい場合があります。

地方の不動産は需要が少なく、売却が困難なことが多い。

相続人間の対立

不動産の評価額が相続人の間で異なると、遺産分割協議が難航する事があります。

特に、相続税評価額を基準にするか実勢価格を基準にするかで意見が分かれることが多いです。

専門家の必要性

正確な評価を行うためには、不動産鑑定士や相続専門の税理士の助けが必要です。

鑑定書の作成には費用がかかるため、簡易査定書で代用することもありますが、これが原因で評価額に差異が生じる事もあります。

意外と知られていないのですが、すべての税理士が不動産評価を行えるわけではありません。

相続税申告に不慣れな税理士もおり、その結果、土地評価が適正でない事があります。

「税理士が10人いれば、相続税評価額は10通りある」と言われるほどです。

そのため、相続人が本来払う必要のない相続税を支払わされ、後に訴訟になったり、他の税理士が税務署から払い過ぎた分を取り戻す請求を起こしたりする事が少なくありません。

当窓口では、相続税に詳しい税理士や相続不動産の評価に長けた不動産鑑定士と連携して業務に取り組んでおります。

相続税が高いと感じた場合、不動産の評価を見直すことで解決できる可能性もありますので、お一人で悩まずにご相談ください。

まとめ

不動産の相続税評価額は、相続税の負担に大きな影響を与えます。

評価額を低く抑えるための方法を理解し、適切に活用することで、相続税の負担を軽減することが可能です。

具体的な評価額や適用できる特例については、専門家に相談することをお勧めします。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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