未成年者がいる場合の遺産分割協議

最終更新日:2024/08/15

未成年者がいる場合の遺産分割協議

このページでは未成年者がいる場合の遺産分割協議の進め方について、ご説明いたします。

相続が発生した際、相続人の中に未成年者がいる場合があります。

未成年者は、財産に関する法律行為を行うことができません。

なぜ未成年者は法律行為を単独で出来ないのか?

未成年者が法律行為を単独で行うことができない理由は、主に判断能力の未熟さにあります。

未成年といっても0歳から成人に近い17歳まで幅広い年齢層なので一概には言えませんが、社会経験や知識が不足しているため、契約や法律行為において不利な立場に立たされる可能性が高いです。

未成年者に不利な契約は後で取り消す事ができる

そのため、民法では未成年者を保護するために、法定代理人(通常は親権者)の同意が必要とされています。

具体的には、未成年者が法定代理人の同意なしに行った法律行為は、後から取り消すことができる「未成年者取消権」が認められています。

これにより、未成年者が不利な契約を結んでしまった場合でも、その契約を無効にすることが可能です。

ただし、未成年者が一方的に利益を得る行為や、法定代理人が特定の目的のために許可した財産の処分など、一部の法律行為については、未成年者が単独で行うことが認められています。

このように、未成年者の保護を目的とした法律の規定により、未成年者が不利益を被らないようにする仕組みが整えられています。

未成年の遺産分割は法廷代理人によって行われる

相続人の中に未成年者がいる場合は、その未成年者自身が遺産分割協議をして、遺産分割協議書に署名押印をしても、遺産分割協議書は当然に無効となります。

未成年者自身が遺産分割協議を行うことができないので、未成年者の親などの親権者が、未成年者の法定代理人として遺産分割協議をしなければなりません

親と子供が共に相続人となってしまった場合

しかし、親と子供が共に相続人となってしまうケースがあります。

親が子供の法定代理人として認められてしまえば、子供が相続するはずの財産を奪い、親だけが都合よく遺産を取得することが可能になってしまいます。

このような場合、親と子供の利益が相反することになるため、親が子供の法定代理人となって遺産分割協議をすることが出来ません

親と子供の利益相反とは?

遺産分割における親と子供の利益相反とは、親権者(通常は親)が未成年の子供の代理人として遺産分割協議に参加する際に、親と子供の利益が対立する状況を指します。

具体的には、親が相続人であり、親の取り分が増えると子供の取り分が減る場合などが該当します。

例えば、親が相続財産の一部を自分のものにしようとする場合、子供の取り分が減る可能性があります。

他にも、親が自分の借金を子供の財産で担保にしようとする場合や、親が子供に相続放棄をさせようとする場合なども利益相反の例です。

そこで、未成年者と親権者の間で利益が相反する場合には、親権者に代わって未成年者の代理人とな特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てをする必要があります。

特別代理人とは

特別代理人とは今回の遺産分割協議をするためだけに、家庭裁判所で特別に選ばれる代理人のことです。

未成年者と利害関係のない人に特別代理人になってもらい、未成年者のかわりに遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書に署名押印を行います。

特別代理人は、未成年者と利害関係がなければ基本的には誰でもなることが出来ます。 未成年者のおじ、おば、祖父、祖母などが選ばれることが多いようです。

特別代理人の選任手続き

申立て

未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てます。管轄の裁判所はこちらで調べる事ができます。

申立人は親権者または利害関係人(他の相続人など)です。

必要書類の提出

申立書、未成年者と親権者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票、財産証明書、遺産分割協議書(案)などを提出します。

申立書の書式はこちらからダウンロードできます。

選任審査

家庭裁判所が審査を行い、特別代理人を選任します。選任には1~3ヶ月程度かかることがあります。

選任手続きの注意点

公平な分割

未成年者の利益を守るため、公平な分割を目指すことが重要です。

専門家の助言を受けることも有効です。

利益相反の確認

特別代理人を選任する理由が明確であることが重要です。親権者や成年後見人が未成年者や被後見人と利益相反の関係にある場合に限られます。

申立てのタイミング

特別代理人の選任には時間がかかるため、早めに手続きを開始することが重要です。

通常、選任までに2〜4ヶ月かかることがあります。

法定相続割合の確保

遺産分割協議書案の内容が未成年者や被後見人の法定相続割合を確保しているか確認します。確保できていない場合は、正当な理由が必要です。

相続税の申告期限

特別代理人の選任手続きが遅れると、相続税の申告期限に間に合わない可能性があります。

相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内です。

特別代理人が選任された後の遺産分割協議書の作成と手続きについて

1 遺産分割協議書の作成

特別代理人が未成年者の代理として署名し、実印を押します。

特別代理人の印鑑証明書も添付します。

2 相続人全員の署名と実印

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押します。これにより、協議の内容に全員が同意したことを証明します。

各相続人の印鑑証明書も添付する必要があります。

3 家庭裁判所への提出

遺産分割協議書が完成したら、家庭裁判所に提出します。

家庭裁判所は、協議内容が未成年者の利益を損なわないか確認します。

4 遺産分割の実行

家庭裁判所の確認が完了すると、遺産分割協議書に基づいて遺産の分割を実行します。

これには、不動産の名義変更や銀行口座の解約・分配などが含まれます。

特別代理人が選任されることで、未成年者の利益が適切に保護されるように手続きが進められます。

 

未成年者がいて遺産分割協議が進まないという方、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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