遺産分割協議の種類と協議の進め方
最終更新日:2024/11/01
目次
もしも遺言書が無ければ相続人同士で話し合って財産を分けます。
複数の相続人がいる場合は、相続分に応じて各相続人に遺産を分ける必要があります。
もしも遺言書があり「不動産は息子に、預金は娘に」というふうに遺産を分割する方法が指定されていれば遺言書に従います。
しかし遺言書が無かったり一部の遺産しか言及されてない場合は具体的な遺産の分け方を相続人全員が話し合って決めます。
この話し合いを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議には4段階の形態がある
①指定分割
遺言に指定された方法に従って遺産を分割する方法です。
遺言書が無い場合は②に進む
②協議分割
相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で遺産を分割します。
協議が成立しなかった場合は③に進む
③調停分割
家庭裁判所の調停員により遺産を分割します。詳しくはこちら
調停が成立したかった場合は④に進む
④審判分割
家庭裁判所の審判で遺産を分割します。
遺産分割に期限はある?
遺産分割に期限はありませんが、相続税のかかるケースでは10ヶ月以内(相続税の申告期限)までに進めましょう。
相続税の案件には分割済みの場合にのみ適用される以下の優遇措置があります。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により取得した財産に対して適用されます。
申告期限までに分割されていない場合は適用されませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することで、3年以内に分割が完了すれば適用されます。
小規模宅地等の特例
特定の宅地等について相続税の課税価格を減額する特例です。これも分割が完了していることが条件です。
協議を行う前にやっておく事とは?
遺産分割協議を行うには以下の条件が前提です。
①相続人を確定させる
遺産分割協議には相続人全員が参加します。
1人でも相続人が掛けた協議は無効となってしまいます。包括受遺者がいる場合はその方も含みます。
もしも相続人に未成年とその親権者がいる場合は両者は利害関係が対立するので、未成年の数と同じ人数の特別代理人の選任が必要です。
親族等から適切な人を選び、未成年者の住所地の家庭裁判所に選任の申し立てを行って下さい。
※未成年の遺産分割協議について詳しくはこちらをご覧ください。
②相続財産の範囲と評価額を確定させる
相続分に従った遺産分けを行うには全ての財産と評価額を決める必要があります。
まず、被相続人の財産をすべてリストアップします。
例えば、不動産、預貯金、株式、債券、動産(車や貴金属など)などです。
必要に応じて、被相続人の財産目録を作成します。
財産の価格は分割協議を行う時点での時価が基準です。
相続税評価額のような評価方法の決まりはなく、財産の種類ごとに評価方法が異なります。各自が客観的なデータを持ち寄るなどして適正な額を決定します。
主な財産の評価方法
不動産の評価
不動産鑑定士にに依頼、鑑定して不動産の市場価値を評価してもらいます。
また、町村が毎年決定する固定資産評価額を基にする事も出来ますが市場価値より低いことが多いです。
不動産の相続税評価額は国税庁が定める路線価などを基に評価します。
金融資産の評価
預貯金は相続開始時点の残高を基に評価します。 株式・債券は相続開始時点の市場価格を基に評価します。
協議の成立には相続人全員の合意が必要
協議には相続人全員が参加する必要がありますが、必ずしも全員が集合する必要はなく遠方の相続人とは電話やメールなどで連絡を取り合って進めても良いでしょう。
ただし協議を成立させるには必ず全員の合意が必要です。そして一度成立した協議は一方的に取り消せません。遺産の分割にはいくつかの方法があるので全員が納得できるまで何度でも話し合いましょう。
遺産の分割方法は4つある
遺産分割では不動産、事業資産といった分割しにくい財産をどうやって公平に分けるかがポイントです。
遺産分割にはいくつかの方法がありますが、主な方法は以下の4つです。
現物分割
個々の財産をそのまま各相続人に分配する方法です。
例えば、自宅は長男に、預金は次男に、株式は長女にというように、個々の財産をそのまま分配します。遺産分割の原則的は方法ですが公平な分割は難しいです。
メリット
分かりやすく財産の現物を残すことができる
デメリット
相続分通りに分配するのは難しく、相続人間の取得格差が大きくなることもあります。
換価分割
財産を売却などして金銭にかえて各相続人に分配する方法です。現物では分割しにくい財産を分配できます。
また、現物をバラバラにすると価値が下がる場合など(不動産など)は、この方法が採られます。
メリット
公平に遺産を分配できる
デメリット
売却の手間と費用がかかり、財産の現物が残らない
売却益に対して所得税と住民税がかかる
代償分割
一部の相続人が相続分を越える財産を得る代わりに他の相続人に対して金銭を支払う方法です。
例えば遺産が1億円の店舗用住宅だけあった場合、長男が店を引き継いで次男は引き継がないとします。
この場合長男が家を取得して次男に半額の5,000万円を支払えば平等に相続できます。
このように事業資産など承継者がまとめて取得すべき財産の分配に便利ですが、債務を負担する相続人に支払能力がある事が条件です。
メリット
公平に遺産を分配できる
事業用資産や農地などを細分化せずに残せる
デメリット
債務を破綻する相続人に支払い能力が必要
債務を負う相続人が支払いをしてくれないリスクがある
代償分割が支払われない場合はどうする?
代償分割で合意したにも関わらず相手が代償金を支払わない場合でも、債務不履行を理由に分割協議を無効にする事はできません。
共有分割
複数の相続人で持分を定めて共有する方法です。
共有使用する別荘などおもに不動産の分割に便利です。ただし手軽さから安易に共有とするのは好ましくありません。
共有者間で意見が合わず、対立が生じる可能性があり、財産の管理や処分が難しくなる事があるからです。
メリット
公平に財産を分配できる
財産の現物を残せる
デメリット
共有不動産を売却する際、全ての共有者の同意が必要です。一部の共有者が反対すると、売却が難しくなります。また、共有者全員が協力して管理する必要がありますが、実際には誰も責任を持たないことが多く、財産の価値が下がるリスクがあります。
次世代への影響も大きな問題で、共有分割された財産は次世代に相続されるとさらに細分化され、相続問題が複雑化してしまいます。
まとめ
遺産分割協議のポイント
遺産分割協議の前に相続人と相続財産を確定させましょう
協議の成立には相続人全員の出席と合意が必要
遺産の分割は現物を分けるだけでなく換価分割や代償分割なども検討しましょう
共有分割は後々の事も考えて慎重にしましょう
遺産の分割は法廷または遺言書など指定の相続分をもとに行うのが原則ですが相続人全員の合意があれば相続分と異なる分割ができます。
これは債務についても同様です。債務は相続人が相続分に応じて負担すべきもので法的には分割の対象になりませ
しかし実務上はだれがどう債務を負担するのかきちんと決めておく必要があります。もっともこれは相続人の間での取り決めに過ぎず債権者に対抗できません。
参考リンク
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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