遺産分割の調停と審判の流れとポイント
最終更新日:2024/08/16
遺産分割の調停と審判
遺産を分割する場合は、相続人全員による遺産分割協議によって、解決するのが原則となっています。
相続人の間で遺産分割協議がまとまらない場合や、協議に応じようとしない相続人がいる場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用して、解決を目指す事になります。
遺産分割調停とは?
遺産分割調停は、相続人間で遺産の分割について話し合いがつかない場合に、家庭裁判所が中立的な立場で調停を行い、合意を目指す手続きです。
家庭裁判所の調停委員が、相続人同士の意見や主張を聞きながら、亡くなった人への貢献度、職業や年令などを総合的に判断して公平な解決策を提案します。
そして相続人全員が納得できるよう、話し合いを進めます。
調停にはどれくらいの期間がかかるの?
遺産分割調停にかかる時間は、ケースによって大きく異なりますが、一般的には半年から1年程度かかることが多いです。
調停は通常、1か月に1回のペースで行われ、1回の調停は約2時間程度です。
ただし、以下の要因によって期間が変わることがあります
相続人の数
相続人が多いと意見の調整が難しくなり、時間がかかることがあります。
遺産の内容
遺産が複雑で評価が難しい場合、調停が長引く傾向にあります。
感情的な対立
相続人同士の感情的な対立が激しい場合、合意に至るまでに時間がかかることがあります。
早期解決を目指すためには、事前にしっかりと準備を行い、冷静に話し合いを進めることが重要です。
遺産分割調停で解決する確率
調停申立ての流れ
1. 書類の準備
遺産分割調停を申し立てるには、以下の書類が必要です。
申立書
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
相続人全員の戸籍謄本
遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しなど)
申立人の住民票または戸籍附票
2. 申立ての手続き
申立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
管轄の裁判所はこちらから調べます。
申立費用は、被相続人1人につき収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手が必要です。
3. 調停の進行
調停では、調停委員会が相続人全員の意見を聴取し、解決策を提案します。
遺産分割調停の話し合いは、家庭裁判所で以下のように進行します
調停委員会の構成
調停は、裁判官1人と家事調停委員2人(通常は男女ペア)で構成される調停委員会が進行します。
個別の意見聴取
調停は、当事者が直接顔を合わせることなく進行します。
各当事者は別々の待合室で待機し、順番に調停室に呼ばれて調停委員に意見を伝えます。
段階的な進行
調停は以下の順序で進行します。
相続人の範囲の確定
誰が相続人であるかを確認します。
遺産の範囲の確定
遺産に含まれる財産を特定します。
遺産の評価
各財産の評価額を確定します。
特別受益・寄与分の確定
特別受益や寄与分がある場合、それを考慮します。
遺産の分割方法の確定
最終的な遺産分割方法を決定します。
調停委員の役割
調停委員は、当事者から事情を聴取し、必要に応じて資料を提出させたり、遺産について鑑定を行ったりします。
各当事者の希望を聴取し、解決案を提示したり、必要な助言を行いながら合意を目指します。
調停期日
調停は通常、1か月に1回程度の頻度で行われ、1回の調停は約2時間程度です。
話し合いがまとまらない場合は、次回期日が設定されます。
調停は、当事者同士の直接対話を避け、冷静な話し合いを促進するための手続きです。これにより、感情的な対立を避け、円滑な解決を目指すことができます。
調停は非公開で行われ、第三者に内容が漏れることはありません。
調停が成立すれば、調停調書が作成され、法的効力を持ちます。
注意点
事前準備をしっかり行う
相続財産のリストを作成し、必要な書類(預貯金の残高証明書、不動産の登記簿謄本など)を揃えておきましょう。
事実関係を時系列に沿って整理し、特別受益や寄与分などの主張に関連する情報をまとめておくと良いです。
感情的にならない
調停は冷静な話し合いの場です。感情的な主張ばかりでは調停委員の共感を得られず、調停が不成立になる可能性があります。
調停委員の共感を得る
調停委員に対して説得力のある主張を行い、共感を得ることが重要です。これにより、調停委員が相手方を説得してくれる可能性が高まります。
他の相続人の意見を尊重する
自分の主張ばかりを押し通さず、他の相続人の意見にも耳を傾け、譲歩できる部分があれば譲歩することが大切です。
調停期日に必ず出席する
調停期日に無断で欠席すると、他の相続人に迷惑をかけるだけでなく、自分の主張を伝える機会を失うことになります。出席できない場合は事前に裁判所に連絡しましょう。
遺産分割調停が不成立の場合
調停が不成立の場合、自動的に審判手続きに移行します。この際、必要に応じて相続人や遺産の詳細を調査し、相続人の主張が正当であるかどうかを確認することも行われます。
家事審判官(裁判官)が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、審判をします。
遺産分割審判の流れ
調停が不成立になると、家庭裁判所が遺産分割審判を開始します。
審判では、調停のような話し合いではなく、裁判官が遺産分割方法を決定します。
審判期日の指定
審判期日が指定され、当事者はその日に出廷します。審判では、当事者が書面や資料を提出し、自分の主張を行います。
審判の進行
審判は通常、複数回にわたって行われます。裁判官は提出された証拠や主張を基に審理を進め、最終的な判断を下します。
審判の決定
すべての審理が終了すると、裁判官が遺産分割方法を決定し、その内容が審判書として郵送されます。
不服申立て
審判の結果に納得できない場合は、審判告知日から2週間以内に不服申立て(即時抗告)を行うことができます。
遺産分割審判は、調停とは異なり、裁判官が強制的に遺産分割方法を決定するため、当事者が納得しなくてもその決定に従わなければなりません。家庭裁判所の審判には強制力があり、合意に至らない場合でもこれに従う義務があるのです。
審判を有利に進めるためにも、弁護士のサポートを受けることを推奨します。
参考リンク
この記事を書いた司法書士
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
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