認知症の方がいる場合の遺産分割協議

最終更新日:2024/08/15

認知症の方がいる場合の遺産分割協議

このページでは、認知症の方がいる場合の遺産分割の進め方についてご説明いたします。

被相続人が死亡した時の状況によっては、相続人の中に認知症の方がいることがあります。

認知症の人を遺産分割から除外できない

まず、相続手続きを行うために、相続人全員が遺産分割に同意していることが前提です。相続人の中の一人が認知症の方であっても相続人としての権利は有しているので、無視することはできません。

認知症の相続人を除外した遺産分割協議は無効となり認められません。

認知症の方の遺産分割には成年後見制度が有効

また、遺産分割協議も財産の移転や処分を伴う法律行為です。

認知症の方は、判断能力を欠いていますので、法律行為である有効な遺産分割協議が出来ません。

このような場合、成年後見制度を利用し、認知症で判断能力を欠いている相続人に代わって遺産分割協議に参加する後見人を、家庭裁判所で選任する必要があります。

家庭裁判所で選任された後見人が認知症の方を代理して、それ以外の相続人全員との間で遺産分割協議を行うことになります。

参考サイト:厚生労働省 成年後見制度とは(手続きの流れ、費用)

成年後見制度とは

成年後見制度とは、判断能力が不十分のために、財産侵害を受けたり、人間としての尊厳が損なわれたりすることがないように、法律面や生活面を保護・支援する制度です。

成年後見制度には大きく分けて2種類あります。

法定後見制度

判断能力が低下した後に家庭裁判所が成年後見人を選任します。後見、保佐、補助の3つの類型があります。

任意後見制度

判断能力が低下する前に、本人が自ら後見人を選び、任意後見契約を結んでおく制度です。

※任意後見制度について詳しくはこちらをご覧ください。

法廷成年後見制度の手続

1. 申立人と申立先の確認

申立人は、本人または本人の四親等以内の親族(配偶者、子、孫、両親、兄弟姉妹、従兄弟、甥、姪など)が一般的です。

申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。管轄の裁判所はこちらから調べます。

2. 診断書の取得

家庭裁判所に医者の診断書や鑑定書を添付して後見人選任の申し立てを行います。

家庭裁判所は、その診断書や鑑定書から認知症の程度に応じて成年後見人、保佐人、補助人を選任します。

後見人が行うことのできる代理の範囲は、成年後見人、保佐人、補助人でそれぞれ変わってきます。

3. 必要書類の収集

以下の書類を収集します。

    •診断書

  • •登記されていないことの証明書(法務局から取得)
  • •戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書(市区町村役場から取得)
  • •不動産の登記事項証明書(法務局から取得)
  • •預貯金・有価証券の証明書(金融機関・証券会社から取得)

4. 申立書類の作成

裁判所のウェブサイトから申立書のひな形をダウンロードし、必要事項を記入します。

申立書には、申立人の情報、本人の情報、成年後見人候補者の情報などを記載します。

5. 面接日の予約

家庭裁判所に申立書類を提出する前に、面接日の予約を行います。面接では、家庭裁判所の担当者が申立人や成年後見人候補者と面談し、申立内容を確認します。

6. 家庭裁判所への申立て

申立書類と必要書類を家庭裁判所に提出します。

提出方法は、持参または郵送です。

7. 審理開始

家庭裁判所が申立内容を審理します。必要に応じて、追加の書類提出や証人の出廷が求められることがあります。

8. 審判の確定

審理が終了すると、家庭裁判所が成年後見人を選任し、審判書が発行されます。

審判が確定すると、成年後見人が正式に選任され、本人の財産管理や法律行為の代理を行います。

費用

申立手数料(収入印紙)は800円、登記手数料(収入印紙)は2,600円、その他連絡用の郵便切手や鑑定料が必要です。

手続きにはどれくらいの時間がかかるのか

法定成年後見制度の手続き期間は、通常3〜6ヶ月程度かかります。

具体的な期間は以下の要因によって異なります

家庭裁判所の審理

申立て後、家庭裁判所が親族への照会や本人調査(面接)、医師による鑑定を行います。

これには通常1.5〜3ヶ月かかります。

審判の確定

後見人選任の審判が下りた後、審判が確定するまでに約2週間かかります。

後見登記事項証明書の取得

審判が確定した後、法務局で「後見登記事項証明書」を取得するまでにさらに時間がかかります。

以上の手続きを経て、申立てから後見開始までの期間は通常3〜6ヶ月です。

ただし、認知症の程度や親族の状況によっては、期間が短縮されることもあります。

まとめ

このように、認知症の方が相続人にいる場合、相続手続を進めるにあたり、まず成年後見制度を利用して家庭裁判所で後見人等を選任し、選任された後見人が本人に代わって他の相続人全員と遺産分割協議を行います。

認知症の方がいる遺産分割は、家族全員にとって大変な試練となりますが、本人の意思を尊重しつつ、法的に適切な手続きを進めることが重要です。

成年後見制度を利用することで、認知症の方の利益を守りながら、公平で円滑な遺産分割を実現できるので、専門家のサポートを受けながら、家族全員が納得できる形で進めていくことが大切です。

認知症の方がいて遺産分割が進まずに困っているという方、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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