遺産分割協議のQ&A よくある質問

最終更新日:2024/08/18

目次

遺産分割のQ&A

夫が亡くなりました。相続人は妻である私と息子ですが、息子はまだ12歳の未成年です。母親である私が子供の代理人として遺産分割協議を行えばよいのでしょうか?

お子様が18歳未満の未成年の場合、遺産分割協議に関していくつかの注意点があります。

未成年者は法律上、単独で遺産分割協議に参加することができません。

そのため、通常は親権者である母親が法定代理人として未成年者の代わりに協議に参加します。

しかし、親権者も相続人である場合、利益相反の問題が生じるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要があります。

特別代理人は、未成年者の利益を守るために選任される代理人であり、親権者とは異なる第三者が務めます。

特別代理人の選任手続きは家庭裁判所で行われ、通常は信頼できる親族や弁護士が選ばれます。

※ 家庭裁判所による特別代理人を選任せずに行った遺産分割審判手続きを無効とした判例(東京高決 昭和58年3月23日)があります。

特別代理人を選任してもらう際には、申立書に候補者記入欄がありますので、相続人にとって利害関係のない者(叔父・叔母、弁護士など)を候補者として記入しておくと良いでしょう。

※未成年の遺産分割協議について詳しくはこちらもご覧ください。

夫が事故で亡くなりましたが、現在、私は夫の子を身ごもっています。胎児は相続人になりえるのでしょうか?また、もし仮に胎児にも相続権があるなら遺産分割はどのようにしたらよいのでしょうか?

日本の民法では、胎児は相続に関しては「既に生まれたもの」とみなされます。(民法第886条第1項)

したがって、胎児も相続人としての資格を持ちます。

ただし、胎児が生きた状態で出生することが条件です。

胎児が相続人となる場合、遺産分割協議は胎児が生まれるまで待つのが一般的です。

もし仮に、胎児が生まれてくることを前提に、先に遺産分割協議を行ってしまうと、実は1人ではなく双子(三つ子)だった、あるいは流産してしまった等の問題が発生した場合、後に各共同相続人の相続分が変わってきてしまうため、面倒なことになってきます。

そのため、通常は胎児が生まれた後、未成年者としての相続手続きが進められます。

特別代理人の選任

胎児が生まれた後、未成年者であるお子様の法定代理人として母親が遺産分割協議に参加します。

母親も相続人である場合は利益相反の問題が生じます。このため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申立てる必要があります。

遺産分割協議を進行する

特別代理人が選任された後、遺産分割協議を行い、胎児(生まれたお子様)の相続分を確定します。

相続登記

通常の相続手続きと同様に相続登記を行います。

胎児が生まれる前に相続登記を行うことも可能ですが、出生後に再度登記を変更する必要があるため、やはり出生後に行う方が手間が少なくなります。

※胎児がいる場合の遺産分割協議について詳しくはこちらもご覧下さい。

行方の分からない相続人がいるため、遺産分割協議を行うことができません。どうすればいいのでしょうか?

行方不明の相続人がいる場合、遺産分割協議を進めるためには2つの方法があります。

①不在者財産管理人の選任

家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てることができます。

不在者財産管理人が選任されると、その人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加できます。

②失踪宣告

行方不明者が7年以上生死不明の場合、家庭裁判所に「失踪宣告」を申し立てることができます。

船の沈没等の事故がきっかけで行方不明の場合はさらに短く、1年で失踪宣告を申し立てられます。

失踪宣告が認められると、その人は法律上死亡したものとみなされ、遺産分割協議を進める事ができます。

父の遺産の分割協議を終えたあとに、父の子と名乗る人物が現れました。戸籍を調べてみると、確かに父が認知した子でした。分割協議は一からやり直さなければなりませんか?

相続人が一人でも欠けた状態で行われた遺産分割協議は「無効」となります。そのため、遺産分割協議は再度やり直す必要があります。

また、被相続人(この場合は父)の死亡後に、認知の訴えや遺言によって新たに認知され、相続人となるケースも存在します。

このような場合、既に遺産分割協議が終了している場合でも、新たに認知された相続人は、自分の相続分に相当する金額を他の相続人に請求する権利があります。

相続人に未成年者がいます。どのように遺産分割協議をすればよろしいでしょうか?

未成年者は行為能力がありませんので、未成年者自らが遺産分割協議する事はできません。

そして、親と子が相続人である場合には、親は未成年者を代理することはできません(民法第826条)。

つまり、親が、その子とともに遺産分割の協議に参加する場合には、民法第826条(利益相反行為)の規定により特別代理人の選任を要します。

また、同じ者の親権に服する未成年者が2人以上いる場合には、それぞれ特別代理人の選任を必要とします。子と他の子との利益が相反するからです。

特別代理人は子の住所地の家庭裁判所に選任を申し立てます。

申立に必要な書類

  • ・申立書1通
  • ・申立人(親権者)、子の戸籍謄本各1通
  • ・特別代理人候補者の住民票の写し又は戸籍附票
  • ・利益相反行為に関する書面(遺産分割協議書の案)

申立に必要な費用

  • ・子1人につき収入印紙800円
  • ・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

※事案によっては、このほかの資料の提出が必要な場合もあります。

※未成年の遺産分割協議について詳しくはこちらもご覧ください。

実印を持っていません。遺産分割協議書は認印でもいいですか?

遺産分割協議書に押す印鑑については、基本的には実印が求められます。

実印とは、市町村で印鑑登録がされている印鑑のことです。実印を使用することで、相続人全員の意思が確認され、法的な効力が強化されます。

もし実印を持っていない場合は、市町村役場で印鑑登録を行い、実印を作成することをお勧めします。

実印登録にはいくつかの基準があります。

登録できる実印の条件

氏名や通称を表していること

印鑑には、住民票に記載されている氏名や通称が含まれている必要があります。

外国人の場合、カタカナ表記も可能です。

職業や資格などの事項が含まれていないこと

印鑑には、氏名や通称以外の情報(職業や資格など)が含まれていないことが求められます。

変形しにくい材質であること

ゴム印など、変形しやすい材質の印鑑は登録できません。

一般的には木材、金属、石材などが使用されます。

適切なサイズであること

印影の大きさが一辺8mm以上25mm以内の正方形に収まるものが必要です。

印影が鮮明であること

印影がはっきりと読み取れることが重要です。長年使用して摩耗した印鑑や、印影が不鮮明なものは避けるべきです。

印影がはっきりと読み取れないものや、欠けている印鑑は登録できません。

また、既に他の人が登録している印鑑や、装飾が多すぎる印鑑も登録できない場合があります。

実印を作成する際は、以上の基準を満たすように注意してください。

もし不安がある場合は、印鑑店や市区町村の役所で確認することをお勧めします。

海外に住んでいる相続人がいて、実印がありません。どうしたらよいでしょうか?

海外在住の相続人は、現地の日本大使館や領事館で「署名証明書」を発行してもらう事で相続手続きができます。

署名証明書とは?

署名証明書(サイン証明書)は、日本に住民登録がない海外在住の日本人が、日本国内での手続きにおいて印鑑証明書の代わりに使用する書類です。

申請者の署名(および拇印)が確かに領事の面前で行われたことを証明するものです。

署名証明書の取得方法

在外公館に出向く

署名証明書は、現地の日本大使館や領事館(在外公館)で発行されます。申請者本人が直接出向く必要があります。

必要書類を準備する

日本国籍を証明する書類(有効な日本国旅券など) 署名すべき書類(例えば、遺産分割協議書など)を持参します。署名は領事の面前で行う必要があるため、事前に署名しないように注意してください。

手数料の支払い

手数料は1通につき約1,700円相当で、現地通貨で支払います。

署名証明書の種類

署名証明書には2種類の形式があります

 形式1(綴り合わせタイプ)

在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割り印を行うもの。

形式2(単独タイプ)

申請者の署名を単独で証明するもの。

どちらの形式が必要かは、提出先の要件に従って選びます。

例えば、不動産登記には形式1が求められることが多いです。

なお、国によってはその国の公証人の公証で足りる場合がありますが、まずは大使館等にお問合せ下さい。

その他に、住民票の代わりに「在留証明書」を取得することも必要です。こちらも大使館や領事館で発行してもらえます。 あとは必要な書類を郵送でやり取りし、電話やメールで手続きを進めます。

遺産分割協議書は相続人の人数分必要ですか?

遺産分割協議書は、相続人の人数分作成するのが一般的です。

例えば、相続人が5人いる場合、5通の遺産分割協議書を作成し、それぞれが1通ずつ保管します

各相続人が原本を保管しておくことで、後々のトラブルを防が事ができます。また、遺産分割協議書の原本が複数あれば銀行等の手続きを効率的良く行う事ができます。

ただし、必ずしも人数分作成しなければならないという決まりはありません。

遺産の金額が少額であったり、相続人同士で信頼関係がある場合には、1通だけ作成し、代表相続人が保管する方法もあります。

どちらの方法を選ぶかは、相続人同士の関係や遺産の内容によって決めると良いでしょう。

不動産と借金は長男が相続すると言う遺産分割協議書は作れますか?

はい、不動産と借金を長男が相続するという内容の遺産分割協議書を作成することは可能です。

不動産に関しては、相続人全員が合意していれば特定の相続人に相続させることは問題ありません。

ただし、借金については、債権者の同意が必要です。

遺産分割協議書に「借金は長男が全て相続する」と記載しても、債権者は他の相続人に対して法定相続分に応じた返済を求める権利があります。

そのため、債権者からの同意を得ることが重要です。

同意が得られない場合、他の相続人が返済を求められる可能性があります。

なお、長男以外が債権者に返済した場合は、その返済した金額を長男に請求する事ができます。

兄弟3人で父の遺産を相続する事となりましたが長男である私が土地と自宅を受け継ぎ、銀行預金3000万円を二男、三男で半分ずつ分ける事で合意をしておりますがその場合遺産分割協議書を特に作成する必要はありませんでしょうか?

遺産分割協議書の作成は法的に必須ではありませんが、作成することを強くお勧めします。

遺産分割協議書は、相続人全員が遺産の分割について合意したことを証明する重要な書類です。

これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。

特に、以下のような場合には遺産分割協議書が必要です。

不動産の名義変更をしなければならない

土地や自宅の名義変更手続きには遺産分割協議書が必要です。

銀行預金の分割をしたい

銀行口座の解約や名義変更の際にも、遺産分割協議書があると手続きがスムーズに進みます。

相続税の申告が必要

相続税の申告時に、遺産分割協議書が必要となる場合があります。

遺産分割協議書を作成することで、相続人全員が合意した内容を明確に記録し、後の紛争を防ぐ事ができます。司法書士に相談して、正確な書類を作成する事をお勧めします。

父が亡くなり、遺言書がでてきましたが兄弟で話会った結果、遺言書にかかれた内容と違った遺産分割をする事に全員で合意したのですが問題はないでしょうか?

相続人全員が合意している場合、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことは可能です。

ただし、以下の条件があります。

相続人全員の合意

相続人全員が遺言書の内容を理解し、それとは異なる遺産分割に同意していることが必要です。

遺言執行者の同意

遺言執行者が指定されている場合、その同意も必要です。

受遺者の同意

遺言書で相続人以外の第三者に遺贈がされている場合、その受遺者の同意も必要です。

以上の条件を満たしていれば、遺言書と異なる遺産分割を行う事ができます。

また、遺産分割協議書を作成し、全員の署名を得ることで、後々のトラブルを防ぐ事ができます。

姉と二人で亡くなった父の遺産(土地、現金)を、遺産分割協議書を作成して相続したのですが、しばらくして、別の銀行口座に現金(800万円)がある事が判明いたしました。分割協議はやり直しとなるでしょうか?

遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合、原則として、既に行った遺産分割協議をやり直す必要はありません。

新たに見つかった遺産についてのみ、再度遺産分割協議を行えば足ります。

現金預金については、法律上法定相続分に従って分割されます。

遺産分割協議によりこれと異なる定めにすることも可能です。

また、実務上、銀行からお金を引き出す際には、銀行から遺産分割協議書の作成を求められる事が多いです。

ただし、相続人全員が遺産分割協議を最初からやり直すことに同意している場合は、やり直しが可能です。

また、新たに見つかった遺産の価値が高く、既存の遺産分割協議に大きな影響を与える場合も、再度協議を行うことが適切な場合があります。

なお、遺産が不明の場合は、遺産分割協議書に『協議後存在が判明した相続財産は○○が相続する』などという文言を入れ作成する事もできます。

母親と弟2人で父の遺産分割協議をおこないましたが、後になって父の遺言書が見つかりました。分割協議を行った内容と遺言書に書かれていた内容が若干違うのですが母と弟も既に分割協議を行った内容で問題ないと言っているのですがどうしたら良いでしょうか?

遺産分割協議を行った後に遺言書が見つかった場合でも、遺言は最大限に尊重されるものであり、また法定相続分に優先しますので、協議した内容と異なる遺言が出てきた場合は遺産分割協議が無効になります。

しかし相続人や受遺者が遺言の内容を確認の上、やり直しをしない事に同意すれば、遺産分割協議をやり直す必要はありません。

そのためにはいくつかの条件があります。

遺言書の内容を確認

遺言書に遺産分割を禁止する内容が含まれていないか確認します。

遺言書にそのような記載がある場合、遺言書の内容に従う必要があります。

相続人全員の合意

遺言書の内容と異なる遺産分割を行うためには、相続人全員の合意が必要です。

お母様と弟さんたちが既に合意しているのであれば、この条件は満たされています。

遺言執行者の同意

遺言執行者が指定されている場合のみ、その同意も必要です。

受遺者の同意

遺言書に相続人以外の受遺者がいる場合のみ、その同意も必要です。

以上の条件が満たされている場合、遺言書と異なる内容で遺産分割を行う事ができます。

父が亡くなり兄弟で遺産分割協議書を作成し相続を行ったのですが、数か月後に父が認知した愛人の子が現れたのですが?

認知されていない愛人の子は相続人とはなりませんが、認知されている場合は相続人となります。

その場合の相続分は、実子と同等のものです。

この場合は遺産分割が終了していても無効となりますので、改めて全員での遺産分割協議をやり直すか、それが不可能であれば家庭裁判所で調停または審判を受ける必要があります。

遺言書がない場合、遺産分割はどうなりますか?

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意が成立した内容を遺産分割協議書にまとめます。

合意が得られない場合は、家庭裁判所での調停や審判によって分割方法が決定されます。

参考リンク: 日本司法書士連合会 遺言書を残さずに亡くなった父、争いのない遺産分割がしたい

遺産分割協議がまとまらない場合、どうすればよいですか?

遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる事ができます。

調停でも解決しない場合は、審判によって最終的な決定が下されます。

遺産分割の際に注意すべき点は何ですか?

遺産分割の際には、節税対策だけに偏らず、公平な分割を心がけることが重要です。

また、法的手続きを躊躇せずに進めることも大切です。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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