相続放棄と遺産分割協議上の放棄

最終更新日:2024/07/08

相続放棄と遺産分割協議上の放棄

ここでは、相続放棄と遺産分割協議上の放棄の違いについて、ご説明いたします。

ご相談に来られる方の中に、「遺産分割協議を相続人の間で行ったから、私は相続放棄していますよ」という方がいらっしゃいます。

裁判所で手続きを行わないと相続放棄した事にはならない

しかし、よくよくお話を聞くと、「預金や不動産も一切受け取らない代わりに、借金も背負わない」という話を相続人間でまとめたというだけでした。遺産分割協議で「預金も不動産も受け取らないと決めました=相続放棄」と思われるかもしれませんが、厳密に言うとこれは相続放棄をしたことにはなりません。

相続放棄は、家庭裁判所で申述をし、裁判官に相続放棄を認められないと法的効力はありません。

自筆で「相続放棄をします」と書いたり、「相続人間で相続放棄の約束」をしても、それでは相続放棄をしたことにはなりません。

遺産分割協議上の放棄では借金の返済義務はなくならない

遺産分割協議で「財産を一銭も受け取らない」と決めたことは、相続放棄でも同じ結果になりますが、実は、性格が全く異なります。

では何が変わってくるのかと言いますと、この状態で、「相続放棄が成立した」と思っていたとしても、亡くなった方の借金を返済しなければならないことになってしまう恐れがあるということです。

遺産分割協議とは、“どの財産を誰がどれだけ貰うか、借金はどうするか”を相続人の間で取り決めるだけのものですから、相続人以外の他人に主張することができません。

つまり、亡くなったひとにお金を貸していた銀行などは、遺産分割協議の内容など関係なく、相続人の誰に対しても、「亡くなった方の借金は相続人に払ってもらいます」と弁済を求める事ができます。

金融機関は遺産分割の結果がどうであれ借金の返済を迫ってくる

銀行などの金融機関は貸し倒れのリスクを極端に嫌いますので、亡くなった人の借金は相続人全員に弁済請求をしてきます。

もちろん、相続人になっている以上、借金返済の義務が発生していますから、「遺産分割協議をしたから私は亡くなったひとの借金は払いません」と主張することができなくなります。

このように、遺産分割協議での「何も貰わない代わりに借金も背負わないこと」と家庭裁判所で行う「相続放棄」の手続きは、意味合いが変わってきます。

大事なので繰り返しますが、相続放棄は“家庭裁判所での手続き以外では相続放棄とならない”ことをよく覚えておいてください。

「私は別に財産はいらない」という方や、「跡を継ぐ人にすべて財産を渡せたらそれでいい」と思われるのでしたら、遺産分割協議をするよりも、カンタンに済ますことのできる相続放棄をされたほうが、後々面倒なことにも巻き込まれることもないので安心です。

まとめ 相続放棄と遺産分割上の放棄の違い

大きな違いとして、相続放棄は人としての地位を完全に失うため、財産も負債も一切関与しなくなります。

一方、遺産分割協議上の放棄では相続人としての地位は失わず、負債の支払い義務が残ります。

  相続放棄 遺産分割上の放棄
手続き 家庭裁判所に相続放棄の申述を行います。 共同相続人の間で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。
負債の支払い義務 最初から相続人ではなかったものとみなされます。これにより、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しません。 身内の間では有効ですが、債権者に対しては主張できません。つまり、借金などの負債は免除されず、支払う義務があります

もし、「こんなときはどうなるの?」など、「手続きがわからない」など、不安な方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。迅速に対応させていただくことをお約束します。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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