相続放棄と利益相反 未成年者を不利益から守る

最終更新日:2024/07/03

相続放棄と利益相反

このページでは、相続放棄と利益相反についてご説明いたします。

相続放棄をするときに問題となるのが、「利益相反」です。

利益相反とは?

相続放棄の利益相反とは、一方の当事者が行う相続放棄によって他方の当事者にとって不利益になる可能性がある状況です。

相続手続きにおいては、相続人間で利益が対立する場合に問題となります。

具体的に誰が不利益(利益相反)になるのか

誰の利益が相反するかと言うと、未成年者である子とその父母です。

例えば、母親が未成年者の子供の代理として相続放棄を行う場合、母親に利益をもたらし、未成年者に不利益を与える可能性があるため、利益相反とみなされます。

親だけ遺産相続して子供は相続放棄という事はできない

未成年者の相続放棄については、親権者がかわりに行う事とされています。

相続人が、母と子供だった場合、母親が相続放棄をしているのであれば、子供の相続放棄を母親が行う事はできます。

しかし、相続人の母親は遺産を相続するのに、その子供については相続放棄するという場合は、子供の相続放棄を母親が行う事はできません。

なぜかと言うと親と子供の利益が相反することになるためです。仮にこのような場合でも母親が子供の相続放棄をかわりに行うことが出来るとすると、夫の財産を多く相続したいがため子供が相続するはずの財産を奪い、母親が都合よく遺産を取得することが可能となってしまうからです。

また、亡くなった方の財産と借金を見ても借金の方が多かったので、子のために良かれと思い相続放棄をかわりに行おうとしても、家庭裁判所は形式面で判断するために、利益相反の問題が問われることになります。

どのように未成年者を相反から守るのか?特別代理人の選任

相続放棄を行いたいが未成年者の利益相反が問題となる場合、特別代理人を選任することで、未成年者の利益を守る措置が取られます。

特別代理人とは?

親にかわって未成年者の相続放棄を進める人を「特別代理人」といい、相続放棄を進めることについて裁判所の許可をもらいます。

誰が特別代理人になるのか

特別代理人の候補者については、未成年者と利害関係がなければ基本的には誰でも良く、特別な資格は必要ありません。

未成年者との関係や利害関係の有無などを考慮して申立をする側が選びます。

一般的には未成年者の親族で利益相反しない人が選ばれることが多いです。特にどのような人が選ばれているのかと言うと、未成年者のおじおばなどの親族が選ばれる事が多いようです。

特別代理人は、未成年者の利益を保護するために選ばれ、親権者と未成年者の間で利益が相反する行為について代理権を行使します。

参考サイト:裁判所 特別代理人選任(親権者とその子の利益相反の場合)

特別代理人選任の手続き方法

 相続放棄における特別代理人の選任手続きは、以下の手順で行います。

特別代理人選任申立の必要書類・費用の準備

必要な書類一覧

  •  特別代理人選任申立書(雛形はこちら※裁判所公式webページより抜粋)
  •  未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  •  親権者(または未成年後見人)の戸籍謄本
  •  特別代理人候補者の住民票
  •  利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)
  •  申立費用として未成年者一人につき800円分の収入印紙
  •  書類郵送のための郵便切手

家庭裁判所への申立て

未成年者の住所地の家庭裁判所に上記の書類を提出し、特別代理人の選任を申し立てます。

特別代理人が選任された後は、審判書を確認して代理行為を実行します。

手続きについては、司法書士に依頼することも可能です。

利益相反が問題となるのは遺産分割協議など他の相続手続きにおいても同様

相続放棄だけでなく、他の遺産分割協議においても未成年者の利益相反の問題は発生します。

未成年者が相続人となる場合、親権者が未成年者の代理として遺産分割協議を行うことはできます。

しかし親権者と未成年者の利益が相反する場合、相続放棄と同様に特別代理人の選任が必要です。

例えば、親と未成年の子が共同で相続人になると、親が子の代理として遺産分割協議を行うと、親の取り分が増えれば子の取り分が減ることになり、利益相反が発生します。

このような場合、親権者は家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならず、特別代理人が未成年者の代理として遺産分割協議を行います。

このように、未成年者の利益を守るためには、遺産分割協議においても利益相反を避けるための適切な手続きが求められるのです。

もし具体的なケースで不安や疑問があれば、専門家に相談されることをお勧めします。

まとめ

相続放棄や他の相続手続きにおいて、利益相反が生じる場合は慎重な対応が求められます。

特別代理人の選任対処法を適切に活用することで、公平な相続手続きを進めることが可能です。

未成年者の相続放棄手続きも当事務所で引き受けております。相続放棄と利益相反でお困りの方、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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