事業承継の切り札!種類株式を活用して経営権を円滑にバトンタッチ
最終更新日:2025/12/01
目次
1.種類株式の活用
中小企業のオーナー経営者にとって、頭を悩ませるのが「自社株の引き継ぎ」です。
「後継者に経営権を集中させたい」「相続で株が分散して経営が混乱するのは避けたい」……そんな悩みを解決する有効な手段が、会社法で認められた「種類株式」の活用です。
本記事では、種類株式の仕組みと、事業承継における具体的な活用メリット、導入のポイントをわかりやすく解説します。
2.種類株式って何?
通常、株式会社が発行する株式は「普通株式」と呼ばれ、1株につき1つの議決権や配当請求権を持っています。 これに対し、権利の内容に特別な条件を付けたり、逆に制限を加えたりした株式のことを「種類株式」と呼びます。
「配当は多いが議決権はない」「特定の事項に拒否権を持つ」など、権利内容にメリハリをつけることで、経営者のニーズに合わせた柔軟な資本政策が可能になります。
3.定款整備・内容確認
経営者が亡くなった場合、経営者(会社)=所有者(株主)ではなくなることがあります。
また、株主に相続が発生した場合、経営者が全く知らない株主が登場するということも考えられます。
こういったときに、定款を整備しておけば、ある程度トラブルを予防することが可能なのです。
定款は分かりやすく言うと、会社と株主との「契約書」みたいなものです。
定款の整備の重要性
「定款」をきちんと整備しておかないと、事業を継ぐ後継者の方が思わぬところで失敗をする可能性があります。
経営者=所有者のうちに、定款の整備をしておきましょう。
相続人に対して株式会社の株式を売り渡すように請求できる規定や、特定の株主からだけ株式会社が自己株式を取得し、他の株主には自分も売主に加えるよう請求できないとする定款変更をするケースがあります。
4. 事業承継でよくある悩みと解決策
種類株式を活用することで、以下のような事業承継の課題を解決できます。
ケース①:後継者以外にも相続人がいて、株が分散しそう
【課題】 自社株を相続する際、後継者である長男だけでなく、次男や長女にも遺留分として株を渡さざるを得ない場合があります。しかし、経営に関与しない親族が議決権を持つと、重要な経営判断の足かせになりかねません。
【解決策:議決権制限株式】 後継者が持つ株は「普通株式(議決権あり)」のままにし、他の相続人が持つ株を「議決権制限株式(議決権なし)」に転換します。これにより、財産としての価値(配当など)は親族に分配しつつ、会社の経営権(議決権)だけは後継者に集中させることが可能です。
ケース②:後継者に譲りたいが、まだ任せきるには不安がある
【課題】 そろそろ息子に社長を譲りたいが、経験不足で暴走しないか心配。
完全に引退するまでは、重要な決定に関与できるようにしておきたい。
【解決策:拒否権条項付種類株式(黄金株)】 経営者(親)が「拒否権条項付種類株式」を1株でも持っておけば、株主総会での合併や解散、役員選任などの重要事項について、その株主(親)の賛成がないと可決できないようにできます。
これを「黄金株」とも呼び、後継者を見守るための“お守り”として機能します。
ケース③:相続で会社にとって好ましくない人物に株が渡るのを防ぎたい
【課題】 株主が亡くなった際、会社と全く関係のない人物や、経営方針と合わない人物が相続によって株主になってしまうリスクがあります。
【解決策:売渡請求・取得条項】 定款において、「相続が発生した際、会社がその相続人に対して株式を売り渡すよう請求できる(売渡請求)」旨を定めておくことで、分散しそうな株式を会社が買い戻すことが可能になります。
5. 導入には「定款の整備」が不可欠
種類株式を導入するためには、会社の憲法である「定款(ていかん)」の変更が必要です。
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発行可能株式総数の変更:種類株式ごとに何株発行できるかを定める必要があります。
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内容の設計:どの種類の株を、誰に、どのような条件で発行するかを綿密に設計します。
定款は会社と株主の「契約書」のようなものです。経営者=株主である元気なうちに整備しておかなければ、いざ相続が発生してからでは手遅れになることもあります。
6. 種類株式の「9つの権利」一覧
会社法では、以下の9つの権利について内容の異なる株式を発行することが認められています。これらを組み合わせることで、オーダーメイドの承継対策が可能です。
種類株式おける9つの権利
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剰余金の配当:配当を優先的に受け取れる、あるいは少なくする。
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残余財産の分配:会社解散時の財産分配を優先/劣後させる。
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議決権制限株式:株主総会での議決権を制限する(または無くす)。
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譲渡制限株式:株式を譲渡する際に会社の承認を必要とする。
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取得請求権付株式:株主が会社に対して「株を買い取ってくれ」と請求できる。
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取得条項付株式:一定の事由が生じた際に、会社が強制的に株を買い取れる。
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全部取得条項付種類株式:株主総会の決議により、会社が株式の全部を取得できる(少数株主のスクイーズアウト等で利用)。
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拒否権条項付種類株式:重要事項の決議に対し、拒否権(Veto権)を持つ。
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役員選任権付種類株式:種類株主総会において、取締役や監査役を選任できる。
7.種類株式発行のメリット
これらの種類株式を発行することによって、例えば議決権制限株式により相続人の中でも後継者のみに議決権を集中させられます。
また、後継者である子供へ事業承継をさせたいと考えながら、まだ経営権の全てをその子供に譲ることに不安な場合には、拒否権条項付種類株式を保持することによって、経営が誤った方向に進みそうなときにストップをかけることもできます。
種類株式を発行する時は定款変更も同時に
種類株式を発行する場合には必ず、各種類株式ごとの発行可能株式総数も一緒に定款で定めてく必要があります。
種類株式の発行の定款変更決議のときにあわせて定款変更をしてください。
8.まとめ
種類株式は、経営権の維持や円滑な承継を実現するための強力なツールです。
しかし、その設計は複雑で登記手続きも伴います。
「自分の会社にはどの種類株式が合っているのか?」「定款をどう変えればいいのか?」とお考えの方は、相続や会社法務に精通した司法書士にご相談ください。
この記事を書いた専門家
- 司法書士事務所センス 代表
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【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。
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