上手な贈与の利用方法
最終更新日:2024/03/06
目次
上手な贈与の利用方法を解説
生前贈与は、相続税の節税や相続人同士のトラブルを避けるために有効な手段です。
贈与税の特例や非課税枠を上手に利用し専門家のアドバイスを受けることが重要なので、ここでは上手に生前贈与を利用する方法を解説いたします。
生前贈与とは
生前贈与とは、財産を自分が生きている内に他の人へ分け与える事です。生前贈与を行う事によって自分の財産を自由に管理する権利を行使できます。
生前贈与を行う目的
生前贈与は主に相続税の負担を軽減する目的で行われる事が多いです。
個人の意思に基づき財産を効果的に分配する事で、将来の税金の負担を減らす事ができます。
相続と生前贈与どちらが得なの?
相続を贈与はそれぞれ異なる条件と税金が適用されるため、どちらが得かは個々の状況によります。
相続全体の9割以上は非課税枠で収まる
一般的に相続は個人の財産を法定相続人が受け継ぐ事で基礎控除額が大きくなり、多くの場合は非課税枠内で完結します。
相続税の基礎控除額は3,000万円+法定相続人の数×600万円)です。
2022(令和4)年の国税庁の調査によると相続税が課税された割合は相続全体の9.6%でした。つまり、実際に10人のうち約1人が相続税の課税対象という事になります。
生前贈与は年間110万円以内なら非課税
贈与税は暦年課税で、1年間の基礎控除額が110万円です。
つまり年間で110万円以下の贈与については非課税なうえに申告も不要ですので、一番シンプルな生前贈与の方法だといえます。
相続時精算課税という方法
相続時精算課税は60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与に適応される制度です。
通常は2,500万円を一括で贈与すると1,000万円以上の贈与税(税率45%)かかってしまいます。しかし続時精算課税を使うとトータルで2,500万円までは非課税となり、それを超えた分は20%の税率が適用されます。
贈与を受けた人は贈与税の申告を納税が必要ですが、相続時にはすでに納めた贈与税が像族税から控除されます。
この制度の選択は一度限りで、一度選択すると取り消しは出来ません。
相続時精算課税について詳しくはこちらをご覧ください。
相続時精算課税を使った方が得な場合のケース
生前贈与を受けた時点での土地や株の価値が相続発生時に値上がりしていれば得をしますが、土地や株の価値が下がれば損をする事もあります。
2024年以降は相続時精算課税に110万円の控除が新設
2023年度に大幅な税制改正があり、今までは累計2,500万円だった相続時精算課税の枠が2024年度からは累計2,610万円に増えました。
累計2500万円の特別控除とは別に年間110万円以内なら非課税かつ申告も必要ありません。
また、贈与財産の加算対象期間が3年から7年に延長され、延長された4年間に贈与で取得した財産の価額については総額100万円まで加算対象外となりました。
この新しい制度は2024年1月1日以降から適応されています。
相続と生前贈与のどちらが得かは多くの要因に関わる
最終的にどちらが得かは贈与される財産の種類、金額、贈与者と受贈者との関係及び贈与のタイミングなど多くの要因に依存するため専門家に相談する事を強くお勧めします。
生前贈与の注意点
生前贈与の際の注意点として、次の4点を確認する必要があります。
-
1. 贈与税と相続税の節税効果
- 贈与税の基礎控除額と相続税の基礎控除額を理解し、節税の最適なポイントを把握する事が大切です。
-
2. 遺産分割の問題
- 親族間のトラブルを避けるため、贈与の意図を明確にし、遺産分割に影響が出ないよう配慮しましょう。
-
3. 贈与契約書の作成
- 贈与の内容を正式な契約書に記載し、公証人役場で確定日付を取得しておく必要があります。
-
4. 相続開始前の贈与
- 贈与開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、その点を考慮しましょう。
生前贈与を活用した節税対策 贈与税の配偶者控除
生前贈与を活用した節税対策には、110万円の基礎控除を最大限利用することのほかに、贈与税の配偶者控除を利用する方法があります。
贈与税の配偶者控除で最大2,110万円までが非課税に
贈与税の配偶者控除を利用することで、2,000万円まで贈与財産の価額から控除が可能になります。
これに基礎控除の110万円を加えると合計2,110万円までの贈与が非課税となります。
贈与税の配偶者控除を行える条件とは
1)婚姻期間20年以上の夫婦が対象
2)居住用不動産または、居住用不動産を購入する資金の贈与であること
ただし、この特例の適応を受けるためには贈与税の申告をする必要があります。
また、同一の配偶者からは1度しか受ける事ができない点に注意が必要です。
生前贈与が税制上効果を生むケースはごく少数
相続税は3,000万円+(600万円×法定相続人数)や、配偶者税額軽減などの措置が取られているために、かなり多額の遺産総額の見込みがないと発生しませんので、生前贈与などが税制上効果を生むケースはごく少数といえるかもしれません。
特に、相続税のかからない基礎控除や、配偶者税額軽減の他にも小規模宅地の特例などの優遇措置がある職業においては生前贈与が相続税対策に役立つかどうかは定かではありません。
資産状況を把握した上で専門家にご相談を
相続税対策として生前贈与を活用する場合、まずは被相続人の資産状況を正確に把握する事が重要です。
生前贈与を行ったとしても結局は税金がかからない状況でした!ということになっては意味がありません。
もし不明な点があれば専門家に相談する事を強くおすすめいたします。もちろん、当窓口でも経験豊富な専門家をご紹介させて頂きますので、まずはお気軽にご相談下さい。
この記事を書いた司法書士
-
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。
最新の記事
- 2024年9月4日3ヶ月経過後の相続放棄について
- 2024年9月4日相続放棄をすると生命保険(死亡保険金)は受け取れるのか
- 2024年8月25日相続放棄の相続順位 最後は誰に順番がまわる?
- 2024年1月26日相続に専門特化している事務所です