相続権を失う事もある!相続人の廃除とは

最終更新日:2024/05/13

相続人の廃除とは

このページでは、相続人の廃除についてご説明いたします。

特定の人が相続権を失う

相続人の廃除とは、財産を相続させたくない相続人がいる場合、相続財産を遺す者の気持ちの問題として特定の相続人の相続権を剥奪する制度です。

相続人の廃除の対象となるのは遺留分を有する推定相続人です。兄弟姉妹には遺留分はありませんので相続人の廃除の対象外となります。

兄弟姉妹に遺産を相続させたくなければ、他の者に全財産を贈与・遺贈するか、兄弟姉妹に遺産を相続さないという遺言書を作成しておけばよいからです。

相続人廃除の対象になる事由とは

(1)相続人が被相続人を虐待した場合

被相続人に対する暴力や耐え難い精神的苦痛を与える行為

(2)相続人が被相続人に対して、重大な侮辱をした場合

被相続人の名誉や感情を著しく害する行為。

(3)相続人にその他の著しい非行があった場合

虐待や重大な侮辱には該当しないものの、推定相続人の遺留分を否定することが正当といえる程度の非行がある場合も相続人排除の対象になります。

例えば、犯罪、服役、遺棄、被相続人の財産の浪費・無断処分、不貞行為、素行不良、長期の音信不通、行方不明などが含まれます。

相続放棄との違い

相続放棄との違いは以下の通りです。

  相続放棄 相続人の排除
適用する主な理由 財産を相続してしまうと借金などの負債をおってしまう為、他の相続人と関わりたくない為 虐待、重大な侮辱、著しい非行などの理由で、相続人として不適格と判断された場合に適用されます。
誰が申立てるか 相続人 被相続人
申立てる時期や方法
  1. 相続開始後、相続人自らの意思で家庭裁判所に申し立てる手続きです。
生前に家庭裁判所に申し立てるか、遺言によって行われます。
申立てた後はどうなるか

相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われ、相続財産だけでなく、相続債務からも免れます。

相続放棄をした人に子がいた場合、その子は代襲相続人として遺産を受け取ることはできません。

排除された相続人は、相続権を失いますが、その子孫は代襲相続の対象となることがあります。

相続人の排除は、相続人としての資格を失うことに焦点を当てており、相続放棄は相続人自身が相続を放棄することに焦点を当てています。

相続人の排除は、他の相続人や被相続人を保護するための措置であり、相続放棄は相続人自身が相続財産や債務を受け入れたくない場合に選択する手続きです。

相続放棄について詳しくはこちらをご覧ください。

手続きの方法

廃除の手続きは、被相続人が生きている内に家庭裁判所での審判、調停による方法(生前廃除)と遺言による方法(遺言廃除)の二つが認められています。

生前廃除

被相続人が生存中に自分自身で家庭裁判所へ請求する方法です。
被相続人が推定相続人の廃除を家庭裁判所に申し立てます。
申立書には「廃除の理由」を記載し、虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があった事実を示します。
必要書類と手数料を提出して審判確定を受け、10日以内に役所へ廃除の届出をします。

遺言廃除

被相続人の遺言によって相続人廃除を行う方法です。
遺言書で相続人廃除の意思を明記します。
被相続人の亡くなった後、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てを行います。

相続人は他の相続人を排除できない

どちらの方法も本人の意思に基づいて相続人の廃除がなされることに注意してください。相続人が他の相続人を廃除することはできません。

どこで相続人排除の申立てができるのか

事由がある場合、申立人(被相続人)住所地の管轄の家庭裁判所に相続人排除の申立てを行います。

相続人排除は、申立人(被相続人)の意思に基づいて行われる制度であり、生前に家庭裁判所への申し立てや遺言書による記載を通じて、相続人の資格を剥奪することができます。

ただし、相続人排除が認められるためには、事由を証明する必要があります。

必要書類

生前の場合

①申立人(被相続人)の戸籍謄本(全部事項証明書)

②廃除を求める推定相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)

③収入印紙(推定相続人1名につき800円)

④郵便切手(500円×4、80円×10、20円×4、10円×10 )

遺言による場合

①遺言者の死亡が記載された戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)

②廃除を求める推定相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)

③遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し

④※家庭裁判所の審判により選任された遺言執行者が申し立てる場合は、遺言執行者選任の審判書謄本

⑤収入印紙(推定相続人1名につき800円)

⑥郵便切手(500円×4、80円×10、20円×4、10円×10 )

※もし申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、その戸籍等は申立後に追加提出すること もできます。

相続人廃除によって得られる効果とは

相続人廃除の効果は、相続人の廃除を請求した被相続人に対する関係でのみ相続権を剥奪されるのみで、他の者との関係では相続権を絶対的に奪うものではありません。

また、廃除された者に子供がいれば、廃除された者の子供が相続分を代襲相続します。また廃除された者に遺贈をすることは可能です。

そして、戸籍の身分事項欄には推定相続人から廃除された旨が記載されます。

相続人廃除を取消す事はできる?

被相続人は、いつでも、相続人の廃除の手続きによって廃除した相続人について、廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。遺言でも廃除の取消を請求することができます。

相続人の廃除でお困りという方、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた司法書士

司法書士 鈴木 喜勝司法書士事務所センス 代表司法書士
【保有資格】: 司法書士、行政書士
【専門分野】: 相続全般、遺言、生前対策、不動産売買
【経歴】: 2010年度行政書士試験合格、2012年度司法書士試験合格。2012年より相続業務をメインとする事務所と不動産売買をメインとする事務所の2事務所に勤務し実務経験を積み、2014年に独立開業。独立後は自身の得意とする相続業務をメインとし、相続のスペシャリストとして相談累計件数は1500件を超える。2024年司法書士事務所センス開業10周年、現在に至る。

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